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帰宅

「うわぁ……」


 誰の呟きか、みんなその場を見つめていた。


「結構やっちゃった感でてますにゃぁ……」


 足元には結構大き目な池というか湖が出来ていた。水の街が近いだけあって水源は潤沢である……と冷静に考えてる場合だろうか。


「ご主人これ地味に広がってるなぁ……」


「そうだな、とりあえず応急処置で水の勢いを多少抑えたが……あんまり意味なかったな」


 マキが唱えていた魔法で水の勢い抑えてこれって、もし何もしなかったらかなりやばい状態だったんじゃなかろうか。土砂崩れとか。


「でも綺麗だね」


「せやなぁ……」


 妹がのほほんと言ってのけるが確かに見た目に関してはかなり綺麗だろうと思う。俺たちがその湖の真ん中にいなければもっと素直に景色を楽しめただろうというのは間違いないが。


「まあやっちまったもんは仕方ないから帰るか。この分ならこれ以上湖もやばい事にはならないだろうし」


「山も見た感じすっきりしたしなぁ」


 もちろん魔の濃度が正常くらいになったというのと燃えた所が完全に消化されたという意味が含まれる。ある意味丁度良かったかもしれない。


 そもそも火の玉出さなければ燃えもしなかったしこんなことにもならなかっただろうが。


「お、マキさんあれ使うの?」


「あれってなんですにゃ?」


 そういえば宿屋にポストリーブ置いてきてるんだったな。どうやって降りるのかと思ってたけどそれ使えば必要ないか。


「これを使うと街に一瞬で戻れるんだ。魔法アイテムの一つだな。当然ストラは置いてくが」


「え!? 一緒にいけんの!?」


 マキの言葉にストラは驚いたように返事をする。


「いやお前ここどうにかしないとまずいんじゃないのか?」


「それもそうか、いってらっしゃーい」


「ドラゴンさんはノリが軽すぎですにゃ……」


 ファルネの言う通りだと思う。もうこのドラゴンに関しては伝説の生物として見ることはできそうにない。


「それに結界壊したしなぁ。行こうかと思ったけど行きづらいなぁという気持ちも少し……」


 命令されてやったとはいえ、年に数回でも行ってる町を壊したのは罪悪感が生まれたんだろう。


「そういうわけだから俺たちは戻る。んじゃエミちゃんとファルネは肩に手を置いてくれ」


 二人が肩に手を置いたのを確認して、マキはポストリーブを起動させる。


------------


 一瞬の浮遊感のあと宿屋の風景に切り替わった。一瞬落ちたのかと思ったから地味にびっくりした。


「すごいですにゃ……」


「おー、こんな風に移動できるなんて便利だねー」


「と言ってもそうそう使える物でもないんだけどな。一か所しか固定出来ないし距離も離れすぎると意味が無かったりするからな。上級魔法処理されたものなら出来るとか聞いたけど見たことはないな」


 一つの町で色んな所のポストリーブを仕入れておけばそれで商売出来るんじゃないかと思ったけどそんな事はないのか。町から町に移動するには今まで通り馬車か歩きがメインになるか。


「じゃあ町長の所にいくか。水の調子も見ておきたいしな」


「はーい」


 宿屋から外に出ると、なにやら人だかりが出来ていた。


「マキさん、なんだろあれ」


「さあなんだろうな」


「酒場の方角ですね。あれだけ人が集まってれば町長もいるかもしれませんにゃ」


 気になった俺たちは酒場の方に向かって歩いていく。どうやらほとんどの町の人たちが集まっているようだ。


「何かあったんですか?」


 丁度昨日ゴブリンに家を襲われていたロウシーさんがいたので聞いてみる。


「ああこんにちは。どうやら酒場のマスターが珍しい人を呼んだみたいで。みなさん見学に来てるんですよ」


 たかが珍しい人程度でこの人だかり? 勇者が町に来たとしてもここまでの集まりはお目にかかれないだろう。


「アイドル、とかですか?」


「いえいえ、アイドルではないですよ。それにマスターがアイドルと知り合いってなんか嫌じゃないですか?」


「「「確かに」」」


 三人でハモってしまった。


「それじゃあ誰が来てるんです?」


「どうやら幻の職業の審判が来てるそうなんです」


「審判!? 本当!?」


 なにやら妹が目を輝かせている。マキも少し驚いたようだ。なんだろう、凄い人なんだろうか。


「審判って言ったら、戦闘にも日常的にも何にも使えず通常の決闘で済む戦いに色々と条件を無理やり組み込んで公正さを出すためだけのあの!?」


「そうです。それゆえに適正ある人も誰もいなくて、でも色んな人が知っているネタ中のネタ職業のあの審判です」


 うん、なんだろう。何のための職業なんだそれは。

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