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山ならし

「んじゃ森の植物も活性化してきたし、やる事やるか」


 マキはそういうと木刀を召還する。というか適当に手を伸ばして引っ張り出すみたいな感じだったが本当にすごいな。


「ん? ご主人なにするん?」


「この森の中の魔を吸えるだけ吸う。寄生樹から滲み出したものだしいけるだろ」


「は!? この森どんだけ広いと思ってんねん! ご主人でも無理やろ! どうにかするって言うてたけどそんな事できるわけないやろ!?」


 ストラが叫んでるが俺もそう思う。かなりの無茶だと思うが一体どうやろうというのか。


「まあ見てろって。だがその前にストラ、俺の肩に手を置いておけ。良いというまでずっと置いておけよ」


「ご主人が……ええで、気が済むまで手伝ってやるわ」


 しぶしぶといった感じでストラが肩に手を置くとマキは木刀を地面に突き刺した。


「これを、こうする……!」


(うっ……)


 マキの魔法の影響か、森全体の魔の流れが頭の中に入って来る。見えるというよりも感じると言ったほうが近い感覚で、単的に言ってめちゃくちゃ気持ち悪い。


「耐えろよ……」


 そしてすごい勢いで木刀に魔が凝縮されていくのがわかる。というかなんか爆発しそうじゃないか?


「そうだな、爆発するだろうなこのままじゃ」


 マキは平然と言ってのけるがそれやばくないか。


「そのためのストラさ。ストラも耐えろよ」


「よっしゃよくわからんけどどんとこい!」


 ストラが言うと同時に木刀の中の魔がマキの体を巡りストラに流れ出す。


「はあああああ!? ご主人やっばいこれきっつい」


「どんとこいって言っただろ」


「でもこれやばいってあかんあかんあかんって」


「おーけー、もっとやれってことだな」


「さっすがご主人わかってるぅ! ってフリちゃうわっ!?」


 余裕だなこいつら。俺に気持ち悪さが伝わって来てる以上、マキもかなりきついはずだが平気な顔をしている。


 弱音を吐かないって事はまだなんとかなるうち……と思っていいだろうか。


「マキさん、大丈夫なの……?」


 妹とファルネが心配そうにしている。傍目から見てもやばそうに見えるんだろう。


「俺の予想では、ストラがぎりぎり耐えられるかどうかってくらいのはず」


「相談もなしにうちの限界を作戦に組み込むなんて流石ご主人……って耐えられなかったらどうすんねん!」


 ストラもノリノリである。実は余裕なんじゃないかと思うくらいのやり取りだが、手が震えてきているから限界が近いのかもしれない。


「いやいや最悪ドラゴン化すればなんとかなるだろ」


「ならんて!? 体のサイズだけ大きくなって魔の放出が大きくなるだけ……ってそうか!」


 そういうとストラは肩に置いてある手と逆のほうで火の玉をうみだした。


「これでご主人から流れてくる魔がどんなに多くても全部火の玉に移せば解決やな」


 ストラの言う通り、手の震えは止まりどや顔で余裕の表情を作っている。


「ストラがそれでいいならいいが……それ大丈夫か?」


「は? どういう意味……ってうおおお」


「わー! ストラ燃えてる燃えてる!」


「危ないですにゃ!!」


 流れ込む魔の速度が尋常じゃなかったらしく、火の玉のサイズはそのままでも色は青白くなりバチバチと火花をまき散らしながらものすごい勢いで火種を森の中に散らしていく。


「人型の時は制御あんまり得意じゃないとか言ってたからその方法は言わなかったんだが……やっぱまだだめか」


 達観した表情で魔を吸い続けるマキだが、それ先に言おうよまじで。


「あかんあかんあかん」


 ストラはストラでずっとあわあわしてるし。妹は燃えた木をなぎ倒して燃え移らないようにしているが焼け石に水状態だ。


「とりあえずストラさん、火! 火消して!」


「おお、せやな! ってあかん火力高すぎてもう手に負えなくなってる! どんだけ魔の濃度濃いねん! ほなこれでどうや!」


「ばかストラそれはまず……」


 ストラは地面に向かって火の玉を投げた。


 バシュウウウウ、と激しい音を立てながら地面を溶かして火の玉は地面に吸い込まれていった。


「おいおいストラこの場所……森の水脈通ってるだろ」


「あ……」


「おかげで魔はほとんど吸い切ったが……みんなこの場所から離れろ!!」


 言うと同時に地面がぐらぐらと揺れだした。


「みんなこっちですにゃ!!」


「みんなすまーん!」


「え!? マキさん!?」


 一早く危険を察知したファルネがまだ無事の大きい木の近くにみんなを誘導する。ストラは謝りながら逃げ出し、火を消していた妹は反応が少し遅れたがなんとかついて行く。


 全員が木に登っている中、マキはその場に残り何やら呪文を呟いている。


(おいやばいぞもう時間がない。何かするなら急げ!)


 マキは応えるように頷き、地面に手を置く。


「多少は抑えられるといいが……フリーズ!」


 体の中を一気に魔が巡るのがわかるが、あまりにも複雑な流れ方をしている。


「マキさん! はやく!」


「今行く!」


 そしてマキが木に登った所で、あけた穴からものすごい勢いで水が噴き出した。



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