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「ていうかマキさん万能すぎない?」


 妹も俺と同じ感想をもったらしい。マキの万能差は俺の物まねの比じゃないと思う。


「一応これでも魔王やってたからな。魔法とか術に関しては魔界で俺より優れてた奴はほとんどいないな。攻撃に関して言うならかなりいたが」


 そういえば城襲撃してきた魔物が、先代魔王は術に長けていたから転生できたとか言っていたような気がする。


「じゃあ空飛んだりとか瞬間移動とかもできるの!?」


「できるが、やるとこの体がもたないな。魔で体を包むにしても人間界じゃ魔の密度が低すぎる。エミちゃんが倒したあいつも魔界だったらもっと強かったと思う」


 弱体化してたのか。マキも魔が無ければ戦えないし、二人がかりで圧倒してたのは運が良かったと思っていいのかもしれないな。


「だからこっちでも全開で活動出来るように魔界化しようとしてたんだろう」


「なるほどー、でもそれならマキさんも魔界化したほうが自由に動けるんじゃないの?」


確かにマキは今俺の体という縛り状態にある。魔があれば分離することも出来るかもしれないし、そっちのほうが良かったりするんじゃないだろうか?


「ははは、魔が世界に満ちればそりゃ俺も動きやすくはなる。だけどそれは俺の主義には合わないな。体も借り物、その体の持ち主に家族までいるんだ。俺にはそれを犠牲にしてまでやりたいことはないよ」


「マキさん……」


「そういうことだから安心していい。全面的に俺は味方だよ。ほら、見張りは俺たちで事足りるからもっかい寝てきな」


「えーもっと話してたいー」


「はいはい」


マキは話を打ち切るように妹を洞窟のなかに返した。すぐ回復すると言っても体の疲れは完全にはとれてないだろうし、俺としてもちゃんと休んでもらいたかったところだった。


妹が大人しく戻っていく所からもやはり完全には回復していないんだろう。何があるかわからないからしっかり休んで明日に備えていてほしい。


そしてさっきの話で少し気になった事があるので聞いてみることにした。


(なぁマキ、本当に俺の体でも魔があれば瞬間移動できるのか?)


体が持たないのは魔が足りないから、じゃあストラの血や寄生樹で大量に取り込んだら出来るのか。


「出来なくもない、が正しいがおすすめは出来ない。瞬間移動は肉体と精神に負担がかかるからな。ただし、超高速移動くらいならたぶん大丈夫」


(ファルネがやってたあれみたいな?)


呪い使いの時に見せたファルネの突進技、あれはかなりの速さだった。


「そうだな、あれに近い。よく人間が使う技だから俺も覚えたが使ったことはほとんどない。ただし問題は……」


と言うと同時に視界が変わった。いや、移動している? 高速移動したのか?


「という具合に術者自体の能力をあげないと使ってもどこに行くかわからない点だな」


(……つまり俺の身体強化が出来ないと高速移動出来ないと)


「そういうことだな」


今の一瞬で一応体に何かしらの魔が流れたがよくわからなかった。体を魔で包んだように感じたけどこれも魔法とかじゃないのか……。


「そう、肉体技が半分以上だ。つまり俺は出来るがお前は出来ない。そして俺たちだと魔の消費もでかいから実用性もないな。凄い消費だったぞ今の」


(……残念過ぎるだろ俺の体)


「まぁそう言うな。人間的にレベルも上がらないしこれが限界だろ」


レベルが上がらない弊害があまりにもでかい。


「だが、レベルが上がってなくても魔が貯められる量は明らかに増えてる」


(え?)


「今の高速移動だが、少し前までは扱えなかった。全身を魔で覆って移動の衝撃を消して更に無理矢理移動するんだが、前までは耐えられる気がしなかった」


マキは確かめるようにもう一度体の周りに魔を巡らせていく。


「だからその、なんだ。魔を体に貯めるステータスは確実に上がってる。落ち込むな」


(励ましてくれてるのか?)


「そんなとこだ。お前は強くなったしまだまだ強くなる。魔物使いの技能も増えたことだしこれからは仲間も増えて行くだろうさ」



ーーーーーーーーーー


そんなことを話していたらだんだんと空が明るくなってきた。そろそろみんなを起こして良いかもしれない。


「おはようございますにゃ」


と思ったらファルネが起きてきた。相変わらずの可愛らしさだが、寝起きなのも相まってより可愛く見える。


「ああおはよう」


「トモキさん……いやマキさんですかにゃ? 見張りありがとうございますにゃ」


ペコリと頭を下げてくる。ファルネに気にするなと応えているとその後ろから残りの二人も姿を見せてくる。


「マキさんおはよう」


「ご主人おはよう」


「ああ、二人ともおはよう」


全員意識ははっきりしているようだし、疲れもそれほど残っているようには見えない。


「ストラ、呪いの影響は消えたか?」


「あー、なんやろ。ほとんど大丈夫なんやけどこうなんかしこり? みたいのが残ってもやもやしよる」


「森の加護があるのに抜けないのか」


「色んな呪い混じって治らんくなったんかもなぁ。こっちじゃ森の中とはいえ魔の濃度も低いし治りも遅いんちゃうかな。まあたいしたことないって」


ふらふらしている様子もないし本当に大したことは無さそうに見える。なにもないといいが……。


「無茶するなよ? お前が何かやらかした現状がこれだからな?

気を付けろよ?」


「フリかな? ご主人」


ストラがいらない気を回そうとする。


「もし残ってたら敵を誘き出すのに調度良いかなと思って……」


「そんなフリ嫌ですにゃ」


そうこうしているうちに日の出の時間になりかなり明るくなってきた。


お読みくださってる方々、大変ありがとうございます。

これからも少しずつですが、ちょくちょく更新していきます。よろしくお願いします。

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