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夜中

「でもこの倦怠感、そんなに長続きしないのな」


 ストラから逃げるときに妹はもっと疲弊していたはず。単純に妹の消費量がめちゃくちゃ多かったとか限界超えていたとかだろうか。


(そうだな、ほぼ限界近くまで使ったんだろう。もともと魔を使う時は体に纏って消費を抑える職業だし撃つというのがまずおかしい)


 拳闘家というのはほぼ飛び道具なんて使わない、というのが一般的らしい。使ったとしても物質的な投擲が主で、飛び道具技持ってたりそれを操ったりと妹はかなり特殊な部類ということだろう。


「普通は無意識にストッパーがかかるらしいよ。それを意識的に外していくのが上級魔法だったり極大魔法とか詠唱の長さとか師匠が言ってた」


「お前学校より師匠から教えてもらってる知識の方が多いんじゃないか?」


 学校ではストッパーの話とかは授業ではしない。魔法は自分のMP以上に使うと倦怠感に襲われます程度でそれ以上は専門の人たちに聞かないとわからないことが多かった。


「うん、だって師匠だし」


 まじこいつの師匠謎。一体こいつをどうしたいんだ。


「そうだ、フライパンチ使えたなら他の技も出来るの? 例えばちょっと危険な技とか……」


「……」


出来たとしてもやりたくないというのが本音だが、どうだろうか?


(完全に物真似を使えるなら出来るかもしれないが、無理だろうな。そもそもあれは肉体技で魔を使ってないと思う)


まじかよ。空中蹴ったり相手爆発とかしてるのに魔を使ってないってなんだよ。


「ねぇねぇどうかな? お兄ちゃんおんぶしながらでも出来るよ!」


「使いたくないしいいよ……。それに魔を使ってる技じゃないと物まね出来ない」


「そっかぁ、私とお兄ちゃんで危険な愛のコンビネーション出来ると思ったのになぁ」


妹はつまらなさそうだったが、俺としては安心した。発想と本当に肉体技だったのには安心出来ないが。


「あ、じゃあストラのは? あの空中で止まる火の玉とか使えたら便利じゃない?」


「確かに便利そうだな、あれはどうなんだろうか」


(たぶん出来るだろうな。ただ、あの量を操作するのはまず無理だろうが)


マキが言うには、あの量の操作をするにはかなりの精神力を使うらしく、ストラがやっていたような浮かべまくってから操作して止める、という動作は通常の域から外れる程の繊細さを要求されるらしい。


(ああ見えてもドラゴンだからな、地味に凄いんだぜ)


マキが若干誇らしげでなんだか微笑ましい。


「じゃあその操作自体も真似したらどうなるんだ?」


体内での魔の流れが分かれば真似できる、ということなら出来るんじゃなかろうか。


(それなら出来るかも……だがやってみないとわからんな)


それもそうか、血をもらったときも呪い無効とかになったしもしかしたら色々と変わった条件でもあるのかもしれないな。


「むー、またお兄ちゃんとマキさんだけで会話してる! 私一緒に会話したいのにー!」


妹が駄々をこねてるがどうしようもないので頭をぽんぽんと叩いてやる。


「うー、なんとかしたいなぁ……」


そうだなぁ、俺もマキと妹を直接話させてみたい気もするな。嫌なコンビだが楽しそうではある。


「まあ今日はお疲れ様だ。エミがいなかったら全滅だっただろうから助かったよ。ありがとな」


 今日は色々あったがよく三人で凌げたと思う。呪い使いの魔物もそうだしストラの火の玉の対抗もほとんど妹とファルネの功績だ。俺自身は特に何もしていない。


「私こそありがとうだよお兄ちゃん。最後嬉しかったよ」


 なんだかんだで危険なとこは俺はほとんど妹に任せっきりだ。今日みたいなことがまた起きるだろうし、攻撃手段が出来た以上妹をちゃんと守っていけるようになりたい。


 でもこの木刀、持ち歩くの忘れそうだからどうにかしてほしい。


(ああそういえば目立つし邪魔だな。さっき魔を吸収したし形変えておくか。体使うぞ)


 え、そんなこと出来んの? と言おうとして体の主導権を持っていかれる。


「ん、どうしたの?」


 俺とマキの切り替わりに妹が声をかけてくる。


「この木刀が邪魔だから形を変えようかなって」


 邪魔って……。いや待てよ。そもそもこの木刀ってマキ専用って言ってたのになんでストラが預かってたんだ? マキは魔界にいてストラは人間界にいたというのに。


「それは当然邪魔だったからだが? 武器なんていらんし木刀持ってる魔王とかかっこ悪いし」


 なんというか……まあ人間相手に戦ってたら確かにいらないし魔王が木刀持ってるのもめちゃくちゃかっこ悪いな。


「だがこれからはそうも言ってられないし、それならせめて持ち運びだけはしやすいようにしとかないとな」


 そういうとマキは何やらまた唱え始める。木刀の暴走を抑える時とは違ってゆっくりと丁寧にって感じの印象をうける。結構繊細な作業なんだろう。


 そして間もなく呪文の詠唱が終わり木刀が形を変える。どころか空気に消えるように。


(……えーと? 消えたけど)


「消えたな」


「マキさん木刀どこ行ったの?」


 横で見ていた妹も不思議そうに尋ねる。


「簡単に言うと俺の周りに存在するように隠蔽した。ボックスと同じ原理だな。人間のとこでは職業が認められたと同時に強制発動する恩恵みたいなもんだが、ドラゴンがお宝隠す方法もやり方が近いからそれを使った」


 ……なんだかんだでマキも物まね能力使えるんじゃないだろうかと思う。



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