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魔法の使用

(魔法を、使う?)


 魔法を使うなんてことは考えたことが無かった。いや、使えたらいいなとは思ったことがあるが魔法に関しては才能がないと中々出来ない。魔法使いという職業に適正があったとしても能力的に足りなかったりMP自体を持たないなんてこともある。


 そして当然俺はレベルが上がらないのでそういうものの存在をすっかり諦めていたわけだが、まさか覚えられるというのか。


「まずは体を渡すから、さっきの感覚を思い出してやってみろ」


 そういうとマキは体の主導権を俺に渡して来た。思い出してやってみろと言われても無意識でやっていたものを意識しろというのは中々に難しい話である。


「なんだろう、見ることは出来ないが、なんというか近くの物はわかるみたいな変な感じ」


 だがなんとなく魔の流れが読めそうな感じがする。


(……うむ、やはり俺が精神体でいるときに魔法を使おうとしても何もできないな。そっちに意識を集中しても影響もなさそうだ。そうだな、木刀の魔の流れは感じるか?)


「……なんだか少し見えるな。もしかして触っているものだけ見えるっていう限定的な状況になってる?」


(そのようだな。だけどそれは俺の能力ってよりもストラの能力だな。ドラゴンは種族的に魔法使えるし魔の流れを見ることもできるだろう)


「って事はもしかして、魔法使うには実際に使えるようにならなきゃいけないのか……? いやでも無意識で使えたって事は使えるか?」


 マキが力を使っている時は無意識で体がそれを使っていた。精神体だがそれを肉体で感じとれれば……ってマキは精神体だと何もできないんだったな。


(そうだな、魔法を使う時体の中に魔が巡る。その動きが見れればその魔法を使う事は可能かもしれないな)


 マキが言うには、魔法を使う時は必ず体の中で魔をその魔法として練らなければならないらしい。その人の中で使う魔法のイメージをそのまま外に押し出すという感じらしい。


 それを真似すればその人の動きとして魔法が使える、という事らしい。


「つまり今一人じゃ練習出来ないって事か」


(そうみたいだな。お前の物まねとしての能力は条件付きっぽい。俺の魔法がそのまま使えれば色々と便利だったんだがしょうがないな)


 前に能力を教えると言ってたがこの状態だと教えるも何もないな。というか一気に強くなりはしたけど魔法も覚えたらいくらなんでも強すぎるな。もう見れば使えるかもしれないけど。


「はいどーん!」


「うおっ!?」


 後ろからいきなり飛び掛かられた。こんなことをするのは一人だけだがぐっすり寝てなかったか、そんなに時間たってないぞ。


「お兄ちゃん……こんな暗い所で二人きりだとイケない気分になるよね……?」


「なりませんが」


「なってよ!! 一緒に色んな垣根を飛び越えていこう!?」


「いきませんが」


「冷たい! じゃあ飛び越えなくていいからイケない事しよっ」


「しませんが!」


 何故か知らないが妹は起きてきたようだ。それにしても俺とマキが入れ替わったのほんとよくわかるな、お兄ちゃんの妹とかいう謎職業のせいか?


「エミ、寝てていいぞ? 見張りは一人で足りるからしっかり休んでおけ」


「私の力を持ってすれば、お兄ちゃんと一緒に居るだけで一か月は寝なくていい」


「嘘をつくな嘘を」


 さっきまで疲れて寝入っていたとは思えないほど元気になっている。


「修行の一環でね、安全な時は眠りは深く一瞬で回復する技と、危険な時は十秒くらいの浅い眠りを数時間ごとに繰り返してずっと行動し続けられるっていう技をマスターしてるの」


 嘘だったけどさらにやばかったわ。化け物か何かかこいつ。どんな修行でどんな場面を想定してるんだ。


(ほんとに人間かどうか疑うレベルの話だな。お前よりも魔物に近い存在な気がしてきた)


 マキも軽く引くってのも凄いわ。


「それで今はお兄ちゃんが守ってくれてるからぐっすり眠れたよ」


「そうか」


 回復したならそれはそれでいい。倒れて死にかけているよりはずっといいからな。


「それでマキさんと何話してたの? 私と蜜月的なお話もしよ?」


「魔法の話だな……ってもしかしてエミの魔法見たら使えるか……?」


(かもしれないな。試してみたらどうだ?)


 精神体じゃないと魔の流れを見ることは出来ないが、触れている対象の魔を感じ取ることはできるようになったみたいだし良い機会だ。


「何々? なんか面白いことするの?」


「この状態で魔法を使ってみてくれないか」


 背中に張り付きっぱなしの妹を引きはがし、肩に手を置かせてもらう。そうすると確かに微かだが魔の流れを感じることができる。


「そんなちょっとだけじゃ、満足できないよぉ……」


「はよやれや」


「お兄ちゃんはせっかちさんなんだからもう。それじゃいくよ! はぁぁ……フライパンチ!!」


 相変わらずダサいネーミングだが、魔力の塊のような拳は真っすぐ飛んでいき木に叩きつけられる。そしてそのまま拳はめり込み文字通り木を叩き折った。


「……」


 なんか威力上がってませんか。一つにまとまったままだとこんな威力なんだろうか。


「やだ……中折れしちゃったね……」


 下ネタがひどいから突っ込まないが、魔の流れはしっかり感じた。


「ごめんね、もっと私が元気にしてあげられたら良かったんだけど……」


「俺は元気だし中折れもしてないしというかそろそろ自重して!?」


 我慢できませんでした。


「お兄ちゃんが私を受け入れてくれたら自重しよう」


「なんで上から目線!? そしてそれは嘘だろ!!」


「当然! お兄ちゃんに受け入れて貰ったらもう全力全開全身合体だよ!」


「もうやだなんとかして!!」


 おれは頭を抱えてその場にしゃがみこむ。


(茶番はいいから結果はどうだ?)


「ああ、確かに魔の流れは感じたが……だめだな。使えそうもない」


 茶番は終わりにして今の感覚を思い出す。魔の流れ、そして実際の魔法、その両方をみてどんなものかは感覚でわかったが、これは真似する以前の問題である。


 自分の中の魔が操れない!


(それは……うん、どんまい)


「物体の感知は無意識で出来るのにこの差はなんだよ……」


 期待していただけにちょっと残念だった。



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