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撤退2

ランデブー中に真面目なお話

「呪いの剣で倒されたのはわかった。じゃあなんで転生してるんだ? 本当はやられたふりでしたーっていうのか?」


 魔王は倒されたとも言っていた。呪われた剣の力により倒されたというのに何故転生できるのだろうか。勇者が魔王を実は倒してなかった、そんなことはないか。


『いいえ、勇者の力により魔王様は確かに倒されました。しかし倒される直前にいや斬られた直後か直前かはわかりませんが魔王様は魂を体から逃がしたのです。先代の魔王様は術に長けておいででした。危険がせまったときの対処なども行っていたようです』


 体から魂を逃がす……? 意識を違う所に移動させた……?


「体から逃がしたら、普通は死ぬんじゃないのか」


『普通は死にます。しかし魔王様は闇の精霊と深くつながっていました。そのおかげで闇の精霊に魂を乗せて、寄生させて逃がしたらしいのです』


「待てよ、そんなことしたら勇者にばれるんじゃないのか」


 魔王が死んだら魔界にある闇の精霊が弱体化するほどの密度の魔力が霧散する。

 しかし霧散しなかったらどうなるのか、勇者にばれるような気がする。


『そうです、すべての魂を逃がしたらばれます。しかし勇者の剣によりもとより魂は半分ほどになり尽きかけていたようです。そしてそれをさらに半分にし、なんとか勇者から逃げることができたようです』


 つまり力が半分の状態からさらに半分の状態にして逃げたというわけか。そして長い戦いをして同じくらい疲弊した勇者ならそのくらいになった魔力は感知できないってことか。


『そして魔王様はその状態のまま過去に飛びました。自分の力をより強くするためにできるだけ前に。といっても二十年も戻れなかったみたいですが』


「過去に戻る……?」


『人間だってよくわからない乗り物とかで過去に行ったりするでしょう? それと同じです。過去に魂を飛ばすなんて芸当をやってのけたのは先代の魔王様くらいでしょうが』


「んなわけあるかよ……」


 過去にいった人間の話なんて聞いたことがない。大魔道師とか賢者とかなら何十人もいれば街ひとつワープさせるのはできるだろうが、過去に行くなんて無理だと思う。


『しかし弱っていたためか、半分にした魂がひとつにならず、魔界と人間界に落ちてしまいました。魔界ではすぐ適切な素体があったようですが、人間界には近くに魔物はおらずそのまま人に取り付かなければ死んでしまう。そういう状況だったのでしょう、人の体に潜むことにしたらしいのです』


「おいそれってつまり」


『人間の中に魔王の力を受け継いだ者がいる、ということです』


 何だって……。それじゃあ人間界も平和じゃないんじゃないのか。急に人が魔物になって人を襲い始めるなんて事があったりしてもおかしくないんじゃないのか。


『しかし人間界に落ちた魔王様の魂は復活しませんでした。闇の精霊が極端に少なかったからだと思いますが封印状態になっていました』


 確かに人間で闇魔法を使うのはかなり稀だと聞く。理由は精霊の少なさ、そして闇の力によって魔法を使うものは邪悪とされ、普通の人からは受け入れがたい物があり敬遠されている。


『おかげで魔王様といえど復活してから3年もの間、在り処が確認できませんでした』


 魔法は使えば使うだけその場にその種類の精霊が多くなる。炊事場には水と火の精霊が多いし、畑には土の精霊が多いというふうに。


 そう考えると元から少なく使う人もほとんどいない人間界じゃ精霊の力を吸収できなかったのもうなずける。


『ですが、魂は人間界にあります。覚醒していなかろうがなんだろうがあるものはあるのです。魂が弱っているとはいえ、魔王さまは本気で探しました。そしてついに見つけたのです』


「そいつはよかったな」


『それがあなたです』


「は?」


 間抜けな声を出してしまう。魔王の魂がなんだって?


『魔王様曰く、人間は我々をレベルで判断する。魔王の魂ならきっとレベル1のままだろう。成人したくらいのレベル1の人間を探せ、との事でした。私たち魔物にはレベルというものの概念がなく、人間の強さの指標を数字で表すというのはいささか驚かされました』


 思わず息を呑む。魔物にはレベルがない。たしかにモンスターのレベルを相手に聞いたこともないし、強さを基準にレベルを決めていたという話も授業で習った。森で会った魔物も教師がレベルを言っていたが、あれは人間基準なのだろう。


『場所に関しては魔王様がこの付近にあることを察知しました。私たちはそこで人が集まる城に潜み、魂を持つ人間を探すことにしました。私たちが来た影響でこのあたりの魔物が多少活性化してしまいましたが、瑣末な問題です』


 つまりレベル1の俺は人間ではなく、魔王の魂を持った、魔物……。


『魔王様の魂であれば手ごわいと思い集団でやってきましたが、よもや人間のレベル1相当とは思いませんでした。おかげで楽でしたが』


 なんなんだよ、レベルアップしたいってずっと思ってたのに魔物だからレベルがあがらないだと。そんなことってあるかよ。


『さてあなたを連れ去った理由がわかっていただけたところで予定変更です。追っ手がきました』


「連れて行かせるわけにはいかない!」


 背後から眩しい光を纏いながら飛んでくる人が見えた。

 魔物に追いついてくるというかなりのスピードである。


「くらえっ! ホーリークラッシュ!!」


 妹の技とは違い、ちゃんと光の粒子を纏う剣の攻撃だ。というよりも光の剣を作り出している。

 そしてそのままモンスターに切りつけた。



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