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撃破

 一瞬の出来事に呆然としたが、我に返った時体の主導権がこっちに来ていることに今更ながらに気づいた。


(割と本気で助かった。ストラ様様だったな)


「お兄ちゃん!! ありがとう!!」


 妹が抱きついてくるが、そんなことよりも。


「何だ今のは……?」


 マキが動けなかったはずの呪いの中普通に動けたことも驚きだが、木刀が丸ごと魔物を吸収したのに驚いた。


(呪い耐性をストラから吸収できたと思っていたがやはり出来ていたようだな。それが物まね技能の一種なのかどうかはわからないが)


「そういえば……ステータスが上がった時に呪い無効化とか出てたな」


(無効化だと……? いやお前それストラの能力上回ってるんだが?)


 ストラは呪い耐性を持っているから呪いの効果が薄く何度もかけ直しをされていた。だが俺が手に入れた力は無効化……完全に上位互換だ。一体どうして。


「というかそもそも俺が無効化できるのにマキが無効化出来ないのはなんでだ?」


 体を共有しているはずなのに、俺ができてマキが出来ないのはなんでなのか。


(それは簡単だな。俺は魔法が使えるがお前は魔法が使えない。個人の能力というものは体に依存しているものもあるが、魂に依存しているものもある。それが魔法だったり耐性だったり、職業だったりという事さ)


 そんなものなのだろうか。だが実際にそうなのだからそれで納得しておこう。


 妹に抱きつかれながら木刀と手のひらを見つめる。うっすらとだが体に魔の力が充満しているのを感じるし見る事ができる。そしてこの木刀には禍々しいほどの魔が充満している。


「なあマキ。もしかしてさっきの奴の魔、この木刀に溜められてない?」


(そうみたいだな。俺が使ってた頃そんな使い方したことないが、元の寄生樹の特性からしたらそっちが正しいのかもしれないな)


 元の寄生樹か。もしこれを回収していなかったら町の人たちがこんな風に襲われていたのだろうか。


 魔を含んだものを襲う寄生樹、人間に魔をためさせてこの木を育て魔の密度の濃い場所にでもしようとしていたのだろうか。


(実際にやろうと思えばできるな。あの結界で寄生樹を封印しておけばそのうち寄生樹が暴走して、結界を壊しながら養分となる魔を辺りにまき散らす。その時同時に根を張るから、ここら一帯は魔の森になる。そうすると魔物も強くなるしかなり危なかっただろうな)


「となると人間界魔界化計画っていう感じか……? 一体何のために」


(さあわからん。瘴気が欲しいなら魔界に帰ればいいだけだ。たぶんあいつもこの前、グルゴとかと一緒に来た連中の一人だろうが、魔界化すれば人間界で生きやすくなるのは間違いないだろうな。今までこんなことする奴はいなかったから魔界で何かあったのか……?)


 マキは一人で考えるようで反応が薄くなった。


 魔界で何かあった、か。マキにとっては故郷みたいなもんだし、心配しているのだろうか。


「……お兄ちゃん、抱きついたままでいられるの嬉しいけど、反応無いとそれはそれで照れる」


 抱きつかれたままマキと会話していたが、スルーに耐えられなくなった妹が愚痴ってくる。抱きつかれたまま放置するのも変な話だが構い始めると無限に絡んでくるので放置していた。


「……お前も難しいやつだな」


 とは言え口走ったような気がするセリフが微妙に照れ臭かったので、そう言われるとこっちも多少照れる。が、調子に乗られても困るので態度には出さないようにする。


「エミに手を出すな」


「おいやめろ」


 動けずともしっかり聞いていたようで、抱きついたまま耳元でささやいてくる。


「嬉しかったし、助けてくれてありがとうお兄ちゃん。大好きだよ」


「……戻るか」


 仕方ないのでちょっと強めに妹を引きはがし構ってやる。ついでに無事で良かったと頭を撫でてやると嬉しそうにしていた。




「というわけで倒して来たが呪いは解除されたのか?」


 洞穴に戻りストラに聞いてみる。呪いがもしもまだ残っているのなら完全にお手上げだ。倒した後、周りを警戒しながら魔を探知してみたがそれらしい反応はまるでなかった。


「解けてるで。後遺症らしきものは残っとるけど全然大したことない。ありがとなぁご主人」


「いや俺はご主人じゃないんだが……」


「かったるいしご主人が認めとる人間やしどっちでもよおない?」


 ストラの忠誠心に疑問を感じるところだが、この鳥にわざわざ呼び方を強制させる必要もないだろう。


「トモキさん、無事で本当に良かった。それでその木刀? なんかまた臭いが濃くなってるんですが……」


「なんか枝分かれして魔物食べた」


「えぇ……?」


 ファルネの反応も当然だろう。こんな明らかに加工されている木が枝分かれしてなんて言われてもピンと来るほうがおかしい。


「危ない使い方したなぁご主人」


 どうやらこっちはピンと来たようでやはりこいつはおかしい。ではなく。


 マキが言うようにそういう使い方も出来るのか。マキが使っていた時はこんなことにならなかったそうだから、もしかして何かまずい使い方だったのだろうか。


「その枝分かれって状態ってあれやろ? 元の木触った時みたいに絡めとられるみたいな食われる感じの」


「そうそう。刺した瞬間急に成長して飲み込んだんだ。飲み込み終わったらすぐこの形に戻ったけど」


「それな、暴走状態やねん。ご主人食われてもおかしくなかったで。まあこっちのご主人は魔がほとんどないから、木が反応するのは大抵相手側やろうけどな」


 ちょっとどころじゃなくかなり危ない使い方だったらしい。

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