暴露
ストラのセリフを一部変更しました。
トリップしている妹をドン引きした目で見ているファルネとストラ。何だかんだでここまでひどいとは思っていなかったんだろう。マキの入れ知恵のせいかもしれない。どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!!
「あー、なんか目冷めたわ。そんでうちを食べるってのはなんなん? ご主人ならともかくあんた人間やろ? ただ、口に入れた途端に肉の旨みが溶けだして濃厚な肉の味わいを感じながらも柔らかな歯ごたえ、そして弾力がありながらも筋ばった所など皆無。固形物でありながら水の如くすんなり飲み込める、ついでに言うと味付けも何もせずにこの状態。素の状態でこれや。腕の良い料理人が調理してみい。この世の物とは思えない幸福感に満たされる。そんなもんやで?」
「めちゃくちゃ美味そうだな!?」
まるで食レポ大好きっ子か!? と突っ込み待ちなんじゃないかと思われるほど細かく味を伝えようとしてくる。これは魔を取り込むとか以前に食べてみたくなるわ!
ストラの食レポはともかく、そういえば魔物食べてステータス上がるとか妹にもファルネにも話してなかったような気がする。この際なのでまとめて話すことにする。
魔物の肉を食べる事で体に魔がたまってマキが覚醒した事。
完全にマキにならなかったのは物まねしの魂が半分押さえているんじゃないかという事。
ドラゴンの肉を食べればかなり回復するだろうという事。
そうすればさっきの逃げた奴を追えるだろうという事。
かいつまんで話したが、三人ともなんとなくわかってくれたようだ。反論された所で実際にこうなっているんだから反論のしようもないというのが本音なのだろうが。
「やっぱあんた魔物なんちゃう? そんな話聞いた事ないで」
「マキも言っていたが正直どっちなんだろうな。まあどっちでも俺は俺で居られるから別に気にしないが」
「軽いなあんた!?」
ノリノリで突っ込み入れるドラゴンも大概軽いと思います。伝説の生き物という厳かな雰囲気は完全に無くなっていた。
「トモキさん……人間離れしてる雰囲気あると思ったらそういう」
ファルネもファルネで納得しているようだ。人間離れしている雰囲気ってどういう事だよと思わなくもなかったが、それはマキの雰囲気の事なんじゃないだろうか。
「私はお兄ちゃんがお兄ちゃんだからどんな事になったって味方だよ!」
妹は常に頼もしい。だが突き抜けるのはやめてくれ。
「そんじゃうちは腕の一本くらいでええんか? それとももっといるか?」
「いや全然。ほんのちょっとでいいみたいだし、何なら血でも大丈夫そう。というかさらっと腕一本とか言うのやめてくれ」
放置していると魔が抜けるとか、新鮮であればあるほど美味しいとか色々あるかもしれないが、少し思った事がある。
もしかして生で食ったほうが効果高いんじゃね?
というものだ。
何故こんな発想になったのかは、グルゴの戦いの時に、魔をためる実験に晒されていた人間の肉を口に押し込まれた時。あの時の体の熱さは異常だった。マキが目覚めた影響だったのかもしれないが、その直後に食べたグルゴの肉も相当に体が熱くなった。
これらを考えると、新鮮である肉はその者の魔が充満していてそれが影響を及ぼしている。そして体から離れたから魔が拡散してどんどん味が薄くなっていく。
それなら別に肉である必要もないし、すぐもらえるなら血でも良いんじゃないか、という結論である。
「ほんまか!? 普通魔物が相手の力奪う時って心臓とか体の大半食わないとできんのやで? それが血だけで済むとか考えられんわ」
「いや俺魔物じゃないしそんな常識通用しないし」
常識通じないのは妹ちゃんだけちゃうんかったんやな……。という呟きが聞こえた気がしたが無視することにした。
確かに言われて見れば、相手の肉ちょこっと食べただけで力が貰えるなら魔物はもっと強い魔物が大量に沸いてもおかしくない。奇襲して相手の一部を奪って逃げて食べて強くなるとか反則もいいところだ。
俺がその可能性あるんだが。
「ほーんなるほどな。じゃあ遠慮なくいってええで」
そう言って腕を差し出してくる。あれ、話聞いてた?
「せやかて自分で切ってもすぐ治ってまうし、そんなら噛み切って貰ったほうが早いやろ」
「せ、せやな」
思い切りが良すぎるなこのドラゴン。いやまあ確かにその通りなのだが。
「あ、これもしかしてマキに変わった方が良いのか?」
魔を吸収するならマキがやった方が良いんじゃないかと思い聞いてみるが。
(お前がやった方が良い。俺じゃその現象が確実に起きるかわからん。一定の魔は吸収できるだろうが、どうやら俺が吸収するより効果が高いみたいだ)
マキが言うにはラメルの水を飲んだ時もマキが自分で飲んでた時よりも俺が飲んでた時の方が吸収率が高かったという話だった。
そういえばマキはかなり飲んでいたのにも関わらず、使った魔法は索敵くらいでほとんどなくなっていた。俺の時は街中を散策してる時に常時使っていたのにかなり持ったような気がする。がぶ飲みしてたのはただ純粋に美味しかったかららしい。
それなら俺がやろう……って言ってもすごい抵抗あるなこれ。
差し出された腕を見ると、ドラゴンと言われても中々信じられない程綺麗な肌をしている。触ってみても人間の腕とまるで変わらない。戦闘状態になったら魔力障壁みたいのを張るのかもしれないが、それもないため普通の女性だ。
その女性の肌に歯を立てる。
……なんだかいけない事をしている気分になって来た。
ファルネは若干興奮気味にこっちを見ているような気がするし、ストラはちょっと緊張しているような気がする。妹は……。
(早くしないとお前がエミちゃんに食われるぞ)
腕に歯を立て、少し強めに噛む。口の中に濃厚な血の味が広がり喉を通ったその瞬間。
<< ステータスが大幅に上昇した >>
<< 全耐性を獲得した >>
<< 魔物使いの技能を獲得した >>
<< 威嚇の技能を獲得した >>
<< 呪い無効化を獲得した >>
<< 自己治癒能力を獲得した >>
<< 物まねの能力を獲得した >>
<< 魔物ランクが上昇した >>
大量のテロップを見ながら俺の意識は暗転した。
複数のステータス上昇を大幅上昇でまとめました。激しく見づらかった……すいません。




