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「これからどうするかだが、この町の近くの水源を調べよう」


 お酒を追加で注文し、料理もきたので食べながら話すことにする。水に魔が混入しているのならばこの近辺の水を片っ端から調べるしかないのだろうか。ちなみに体の主導権はマキにまかせたままだ。


「水が綺麗じゃない原因が、魔が含まれているのとドラゴンや魔物の襲撃のせいだとしたら、町の人たちにも少し話を聞いた方が良いかもしれないな。主に町長だが」


 この町の町長は、旅人が来ただけで顔を見に来るような心配性だ。情報なら一番手っ取り早く手に入るだろう。


「そういえば町長さん怪しかったね。ゴブリン程度で町から出たほうが良いって言ってたもんね」


「ゴブリン程度なら、か。町が襲われていたら、普通の旅人なら面倒毎は避けたり悪評を流したりするもんさ。あんまり見られたくなかったんだろう。ドラゴンに襲われたって話もあまり聞かれたくなかったのかもな」


 この町に派遣された騎士もあんなんだし、町の評判を悪くしたくなかっただけだったのかな。ドラゴンに襲われる町ってだけでもかなり人は減るだろうし、それに加えてその辺の魔物も入ってくるなら……訪れたくはないな。


「そんなもんかー。自分より強い奴に会いに行く! みたいな精神の人がいっぱいいたらいいのにね」


「闘技場みたいなもんだなそうなると。まあそれは良いとして食べたらいくか、具合はどうだ?」


「ご飯たべたらだいぶよくなったよっ。あとはデザートかな」


 軽いものを食べるだけの予定だったが、妹は調子がだいぶ戻って来たらしく結局普通よりも多めにご飯を食べていた。


 遅めの昼食を終えると、とりあえず町長に会いに行こうとなり、その場所まではファルネが案内してくれることになった。


 酒場が夜の仕込みをするために一時的に閉店する時間だったらしく、マスターがファルネを貸してくれた。


「トモキさんだいぶお酒飲んでいましたが大丈夫ですにゃ?」


「ああ大丈夫。あれはただの水みたいなもんだし飲みやすいからな。ほら、別に呂律がおかしくもないだろ?」


「すごいですにゃ……昨日あんまり飲んでなかったから弱いと思っていましたにゃ」


「昨日は連れてきてもらってたし、色々あったからな。控えめにしてたんだ」


 マキは本当に水のようにお酒を飲んでいた。俺の体なのに平然と飲めていた辺りもしかして体の機能は共有していないのだろうか。もしくは俺が飲んでても平気なんだろうか。


 それにずっと体を貸しっぱなしというのもなんだか変な感じがする。


(なあマキ、さっきファルネにも見破られたし町長と話す時は俺が変わっておいた方がよくないか?)


「それもそうか。んじゃ返すぜ」


 マキから体を返してもらった途端、尋常じゃない眩暈に襲われた。


「うぐっ」


「ト、トモキさん!? 大丈夫ですにゃ!?」


 思わず膝をついて口元を押さえる。視界が全く定まらない、並行感覚が完全になくなり頭がガンガンする。これは……。


(あー、やっぱきついか)


 声を出すと全部吐き出しそうになるのを何とかこらえつつマキに聞く。ファルネと妹が支えてくれるが触られている感覚がほとんどない。


(あの酒に含まれるアルコールは普通の酒と変わらん。俺は体の中の物は好きにいじれるから大丈夫だったが通常だとこうなるか)


 体の中いじれるってマキお前どんだけ人間離れしてんだよ。いや人間じゃないけども。


 視界が定まらないどころか何重にもぶれて見えてきていた。


(上手く魔を体に充満させたつもりだったがアルコールも一緒に回ってるな。すまんな、体のコントロールはまだまだみたいだ)


 そんなことは良いから早く変わってくれ全部戻しそうだ。


(おーけーわかった)


 すっと体が軽くなったと思ったら気持ち悪さは完全になくなっていた。どうやらマキと入れ替われたらしい。


 酔う、というよりは完全に悪酔い状態になっていたのを少し体験できたが、二度となりたくない状態だった。


「お兄ちゃん大丈夫?」


「トモキさん、今人を呼んできますにゃ!」


「いや、もう大丈夫だ。ありがとう」


 いきなり倒れたかと思うとケロっとして立ち上がる俺にファルネはすごく心配そうにしていたが、本当に大丈夫そうな俺に少し安心したようだ。


「びっくりさせないで欲しいにゃ……本当に大丈夫ですにゃ?」


「心配してくれてありがとな」


 そう言いつつマキはファルネの耳をぐにぐにする。


「そ、そこは触らないで……欲しいにゃ……」


 ファルネはだらんと力が抜けたように弱弱しい反応になる。どうやら耳が相当弱いらしい。少しだけ抵抗しようとしているが完全になすがままみたいな状態になりつつある。


 さらにもう一方の耳も触ろうと手を伸ばすと妹に止められた。


「お兄ちゃん? それ以上すると、わかってるね?」


 俺じゃねぇ!! と声を大にして叫びたかったが俺にはどうすることもできなかった。


 マキが着々とファルネを攻略しているような気がしないでもないが、妹の視線が鋭さを増してきたので迂闊にいじるのをやめる事にしたようだ。


 ファルネは恥ずかしかったのか口数が少なくなってしまった。


「ここが、町長さんの家ですにゃ」


 それでもしっかりと案内をしてくれる辺りかなりいい子だと思う。



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