プロローグ4
森の中の戦闘
「やああああ!!」
戦える者と言ったがこの中で戦える者などいない。全員がレベルが多少上がって職業を取りに行くところだったのだから。唯一人を除いて。
「ギィィィ!」
妹は職業についているため、ステータスも軒並み高くなっている。レベルが同程度のモンスターなら問題なく戦える。
「はぁぁ……! グラビディナックル!!」
拳闘家の拳攻撃に魔法を重ねて敵を殴る技。単体攻撃しかできないが、その分威力はかなり高い。
魔法自体を重ねるのは難しく、適正以外の魔法を重ねるのは高等技術らしい。
妹は力をブーストさせるだけの魔法をグラビディと呼んでいる。別に重力を操ってるわけでもなんでもなく、かっこいいからだそうだ。
「私の! お兄ちゃんに! 近づくなぁ!!」
大量に襲ってくるモンスターを的確に処分していく。妹の強さを改めて再確認させられた。
「地に宿る精霊達……我が思いに応えたまえ……!!」
教師は地面の一部を崩壊させその上にいるモンスター達を生き埋めにする。広範囲かつ絶大な威力とえげつなさに教師怖いなとおもった。
教師は魔法を主軸に戦っているが近接戦闘もなかなかの物だった。打ちもらしたモンスターは的確に叩いて消滅させていく。ただし、数が多い。
「くそ! なんでこんなにモンスターが……!」
森に入ってから十五分は経っている。それなのにまだ森の半分も進めてはいない。一体何が起こっているというのか。
「きゃあ!」
「!!」
妹が吹き飛ばされてくる。
妹をキャッチしながら吹き飛んできた方向を見てみると、明らかにやばそうなのがいた。
「おいエミ! 大丈夫か!?」
「お兄ちゃんしか視界に入らないくらいには大丈夫……。うっ」
軽口も元気がない。とりあえず回復薬を飲ませつつ教師の戦いを見るがこれは。
もしかしなくてもかなりやばいんじゃ。
生徒は俺とシマダを含めても五人。一人はもうやられてしまっている……。戦闘できそうなのはもう……。妹ももうしばらく動けないだろう。
「おいお前ら、今から言うことをよく聞け。いいか、今から目くらましの呪文と広範囲魔法を使う。その間にお前らは城まで走れ。敵が出てきても極力戦うな。レベル20近いやつまでいやがる」
「そんな、先生!」
「いいからいけ! 先生は後から必ずいく。絶対だ!いくぞ!」
直後教師から光が放たれる。人間にはカメラのフラッシュ程度の光だがモンスターには一定時間混乱が入る呪文だ。
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……」
教師の口から聞き取れないほどの速度で詠唱が聞こえる。呪文は精神集中のために唱える。それが長ければ長いほど精霊に働きかけ威力が高いとされている。
ただし、呪文を間違えたり考えたりして集中が途切れる可能性もあるので、長いだけで威力が上がるというわけでもない。
それなのに教師の詠唱は延々と続いている。
その間に俺たちは森を抜けようとひた走る。俺は妹を背負いながらなため一番後ろになる。
半分恐慌状態に陥っている生徒たちは必死になって走っているためどんどん距離が開いていく。
「くそ、俺の脚おっせえな……!!」
「ん……お兄ちゃん、私も、走るよ……」
「馬鹿野郎! まともに動けないくせに何言ってんだよ! いいから背負われてろ!」
「……」
どうやら相当にやられているらしい、妹は意識を失ってしまった。妹だけでもどうにかして助けてやりたい。
瞬間、爆発音みたいなものが後ろから聞こえてくる。教師が放った強力呪文だと思うが、やりすぎなのではと思うくらいの音で爆風がこっちまで届く。
「おっと……」
なんとか体勢を立て直したが、目の前には。
『人間のくせにあれほどの威力の魔法を使う者がいるとは……ほかにも収穫がありそうだな……ん?』
魔物がいた。でかい。狐のような顔と三メートル近い身長。異常に長く鋼鉄のような色をした腕。全体的に細いが圧倒的なまでの存在感。死ぬ。逃げろと言われたがこれはどう見ても……。
『ほう……こっちの人間は弱そうだな。弱い人間はいらない。殺すか』
「弱い弱いってお前もそう思うのか」
『これは驚いた、言葉が伝わるのか。まぁ関係ないがな……!!』
咄嗟に妹を突き飛ばし距離をとる、そして思いっきり殴り飛ばされる。装備していた皮装備は一瞬で吹き飛び、直接体まで響くような痛みを覚える。
「お、お兄ちゃん……」
突き飛ばされた衝撃か、妹は目を覚ましこっちを見て涙ぐんでいる。そんな顔するなよ。
ふらふらと妹は立ち上がりこっちに来ようとする。
「……逃げろ、お前でも倒せないのは見てわかる。助けを呼んできてくれ」
「やだよお兄ちゃん、死んじゃうよ!!」
「うるせぇ! さっさといけ!! 二人とも死ぬぞ!!」
怒鳴ると妹はうつむき、絶対戻ってくるからと足を引きずりながら森の中に消えていった。
これでいいんだ、俺がここで死んでも妹が生きていればそれで……。
『別れの挨拶はもういいのか?』
「ずいぶん紳士的なんだな……」
『私と話せる人間なんてなかなかいないもんでね。少しだけ情けをかけてみた』
「そうかい……」
『それにしても私の一撃で死なないなんて思ったよりも強いなお前。まあそのあと何もできないんじゃ結局変わらないが』
「そうかい……ぐぁ!!」
なぜかもう一発殴られ木に叩きつけられる。目の前が暗くなり意識が飛びそうになる。
いや、もう飛んでいるのかもしれない。二発も殴られて生きているのは奇跡に近い。
『まだ死なないのか、ほんとに人か? じゃ、今度は確実にやらせてもらおうか。じゃあな』
これ見よがしにゆっくりと腕を振り上げて、確実に殺そうとしてくる。
さっきみたいにさっさと吹き飛ばすなり何なりしてくれればもしかしたら生き残れたのかも知れないのにな。
『!!』
気配だけで飛びのいたのがわかる。何が起きたのだろうか。意識が朦朧として音も聞こえなくなってきた。
「君……大丈夫か。だめそうだな。ここで君を死なせるのは惜しい。少し待っててくれ」
そこで俺の意識は途絶えた。