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勇者

 勇者の言葉に心臓が早鐘を打つ。


「魔界から来ているモンスターっていうのはね、僕たちのいる人間界のモンスターとは比較にならないほど強い。それでもレベル20以上あれば戦えたりする者もいるだろう」


 真っすぐ俺の目を見ながら話を続ける。


「でもね、残っていたモンスターっていうのはレベル50とかそこらじゃ絶対に勝てない、そんな奴だったはずなんだ。このあたりそんな強い人はいないはずだ。スタード村の教師達が束になってようやく、そんなモンスターだ」


 レベル50……もうすぐ妹戦えるくらいの強さだったのか。いや、防御力が極端に低い妹だと一撃食らった時点で同じ結果になるか。そしてマキはそんな魔物を一発で消し炭に出来るほどの強さって事か。


「調査ではこのあたりにいるっていうのだけがわかっていた、だからたぶん探していた奴に間違いない」


「他の場所という、可能性は?」


 このあたりにいたからと言って、もしかしたら他にも魔物がいてこの場所以外にもいたかもしれない。


「もちろんその可能性もある。けど可能性は限りなく低いと思っていい。この場所には魔力を使った痕跡が四つある。一つはそこの闇魔法使いの女性」


 勇者はアンナさんのほうを見て言う。確かに闇魔法を使ったけどグルゴには効かなかったしそんなにわかるものなのだろうか。勇者の魔力感知のレベルの高さに驚く。


「そして二つがモンスターのもの。一つはここで使われていて、もう一つはその階段の下で使われていたようだ。いなくなったモンスターは二匹組という情報もあったからね。複数で動くモンスターは珍しくないが、二匹のみで動くというは珍しい。だからここで間違いないと思うわけさ」


 理屈は通っているし調査で来たっていうのも理解できた。けどあんな人格破綻してるパーティが慈善事業してるというのが中々に信じ難い事実である。


「ぼーっとしてるけど、大丈夫かい?」


「勇者さん達のメンバー全員人格破綻してるのにそういう事もしてるんだなーって思ってました」


「失礼だな!?」


 率直に意見を述べただけなのに突っ込まれた。勇者には自覚がないのかもしれない。


「どうして僕たちの人格が破綻してると思ったの?」


「いや、どうしてって……言葉の節々から滲み出てましたが……」


「常識はちゃんとあるよ!?」


 いやないよ! と盛大に突っ込みたかったが本当に自覚が無いようなのでこれ以上の突っ込みは控える事とする。もしかしたら他のメンバーは自覚あるのかもしれないが勇者には天然の称号を付けておこうと思う。


「ごほん、それで最後の一つの魔力の結果なんだけど、これがいまいちはっきりしない」


「はっきりしない?」


「そう、だから君を疑ったんだけど、それらしい魔力を君からも妹さんからも探知できない。隠してるのかと思って話してみたんだけど特に変な所もない。確かにもう一つの魔力の反応はここにある。でも、こんな強大すぎる魔力を完全に隠しきるなんて不可能だ」


 ……どういう事だろうか。俺の中にいるからマキの魔力に反応しないのか?


(いいや違う、どうやらグルゴぶっ飛ばした時に魔力を全部使って助かったようだな。今はあの闇魔法使いの姉から吸い取った微妙な魔力しか存在しないから感知されていないようだ。ま、それでも俺が表にでたらばれるかもしれないがな)


 疑われるだけで済まなかった可能性があったわけか……。でもこれはばれていたらどうなっていたんだろうか。そもそもマキは害を与えるような存在ではないと言えば大丈夫なような気もする。


(だめだな、古今東西勇者の目的といえば一つ、魔王の討伐。俺は先代勇者の倒し損ねた魔王だからなおさら消しに来るだろう。人格破綻しているというならお前ごと消されるんじゃないか?)


 ……ありうる。勇者は人に優しいとか強いとかそういう評判はあるけど魔物と対峙した時の勇者は殺すことしか考えてないようだった。元魔王の魂を追っている鎧に協力していたのも魔王と決着をつけるためだったのかもしれない。


「僕は疑わしきは罰しない事にしてるんだ。だから現状として君が怪しく見えていても僕としては何もしないという事にしよう。それに町の人たちを救うほうが今は優先だ。盗賊がこっちにも来ているらしいしね」


 どうやらこれ以上の追求は無いようだった。妹もどういう展開になるのかハラハラしていたようでずっと服をつかまれていた。今は話が終わったので安心して階段下の様子を見に行っている。


 現状勇者の戦闘力が未知数というのがあまりにも怖いので戦闘にならなかったのは助かった。マキがガス欠状態で襲われでもしたら確実にしぬ。いやそもそも魔力がないから戦闘にならなかったわけでそれはそれでいいのか。


 ん? というかこれは勇者の戦闘能力を見るチャンスなんじゃないだろうか。こっそり見るのも気が引けるので一応聞いてみる。


「勇者さんってレベルいくつなんですか?」


「さぁ? 100超えてからは数えてないな」


「100!? ちょっと確認しても良いですか?」


「……確認? 君の職業はたしか、表示されてないとメガネが言っていた気がするが、どういう事だい?」


 まずい、墓穴を掘ったかもしれない。


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