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目的

(じゃあ魔界に行かないか)


「魔界?」


(そうだ、お前の目的がなくなっているのなら俺の目的に付き合ってくれよ。記憶の方はどうしたらいいかわからんが、力の取り戻し方ならわかる。現魔王を食う事だ)


「それはちょっとハードだな……」


(というかたぶん、俺が復活した以上あっちも同じことを考えているだろう。俺が復活する前は穏便に済まそうとしていたみたいだが、グルゴが殺されたのなら襲ってくる頻度が上がってもおかしくはない。じゃあどうするか、やられる前にやっちまおうって作戦さ)


 俺が魔界に行き、今の魔王を倒し魂を吸収する。新しい目標にするには些か大きすぎる目標な気がする。それに勇者PTの誘いを断っておいて別で魔王を倒しに行くのはちょっと怖い気もする。勇者PTとブッキングしたらそれこそ最悪だろう。


(じゃああれだ、物まねのスキルを消し去ってレベルが上がるか試すとかどうだ? 魂を追うなんてのはほとんど呪いみたいなもんだ。スキルレベルの高い呪術師ならやれるかもしれない)


「それは、俺が完全に魔物になるってことなんじゃないのか?」


(うんそうだよ)


「できるか!?」


 ただでさえ人間から離れつつあるのに完全に魔物になれって鬼かこいつ、いや魔王だけど。


(仕方ないな、魔王退治は最終目的にすることにしてとりあえず勇者倒せるくらいになろうか)


「はい?」


(何をするにしてもお前は襲われることは決定している。それなら強くなるしかない。俺に頼って戦ってもいいが、魔力切れた時にお前が何もできないんじゃ意味ないからな)


「襲われる襲われるって言ってるけど、話せばわかってくれるんじゃないか?」


 実際に俺の事を攫おうとしていた奴は話せばわかる奴だった。何だかんだで勇者たちよりも話が通じそうだったし。


(お前、分かってんのか? 俺が表に出れば強い魔物なら察知できるはずだ。魔界の魔王も必ず俺が復活したことを分かっているはずだ。あっちはこっちの事情を詳しくは知らないから強くなる前に取り込むつもりだろう。あっちもお前を食えば完全に復活するはずだ)


「俺が、食われる?」


(当たり前だろう? 魔物は魔物を食って魔をためるんだぞ? 俺みたいな元魔王の魂ならかなり強力な力になるはずだ。だから今の魔王よりも強くなろうって連中にも襲われることになる)


「……」


 考えてなかったけど、そうか。最初に連れていかれそうになった時もし魔界まで行ってたら俺食われてたのか。メガネは殺されるかもなんて言っていたが、俺が魔物を食ってステータスが上がるなら逆もまた然り、そら食われるわな。礼儀正しかったとしても所詮は魔物だったってことか。ただ魔王の魂があったから丁寧に扱ってくれていただけで。


 なら逆にこっちから行って勝つっていうのもかっこよくていいかもしれないな。殺そうとしたなら殺される覚悟を持たなければならないということを教えてやろうじゃないか。


「わかったよマキ、魔界に行こうか」


(お、いいね。負の感情が高まってるのがわかる。だが足りないな、どっちにしろお前は強くならなきゃならない。最低でも襲ってくる魔物を倒せるくらいにはな)


「ああ、負けたくないからな」


(その意気だ。ところでお前ステータスってわかるか)


「……全部7だ」


(は? んなわけないだろ、グルゴの攻撃耐えてたんだから300とかあってもおかしくないぞ)


 どんだけ強かったんだよグルゴ。低レベルで行くと確実に全滅してるレベルとかそういう次元じゃないぞ。中盤以降のボスクラスじゃないのかそれ。


(……お前もしかして魔物鑑定スキルないのか)


「魔物鑑定スキル?」


(いやそもそも人間が持っているようなスキルじゃないのか……? だとするとステータスを見られるようにするのが先決か。となるとあそこかぁ……)


 マキが嫌そうな声をだしているが一体どこなのだろうか。


(まずはそうだな、物まね師の力を強くしよう。初代勇者が辿った道を辿れば良いんだろうが完全に使えるとは思えない。先に違うところに行こう)


 物まね師は初代勇者の力を真似し、魔王を倒す力を手に入れた。それなら俺もその力を手に入れられるはずだが物まねのスキルはわからないしな……。マキの言う事を聞いて動いたほうがよさそうだ。俺にとって害があるわけじゃないし。


「どこに向かうんだ? 魔界まで行く予定なんだ、ここまで来たらどこまででも行ってやるぜ」


(エルフの森だ)


 エルフって言えばあのエルフか。目的地だったのに行く意味のなくなったあのエルフのところか、って。


「エルフの森の場所知ってるの!?」


(知ってるも何も、今のエルフが住んでる所作ったの俺だぞ)


「まじかよ!」


 なんで魔王がエルフの森の場所知ってる所か作ったことになってんだよ。この世界は謎に満ち溢れている気がしてならない。


「お兄ちゃん、交代の時間だよってどうしたの?」


 もうそんな時間か。交代で妹がやってくるが、こいつを魔界に連れていくのも少しかわいそうな気がしてくる。完全に俺というかマキのために行動するわけだから無理をさせる必要もない。


「なあエミ、少し真面目な話なんだがいいか」


「うん? 結婚の話ならいつでも準備できてるよ? 婚姻届けすら持ってる」


 真面目な話だって言ってるだろうが!! と突っ込みたい気持ちをぐっとこらえる。ここで突っ込んだら負けだ。


「この冒険の目的が少し変わった。ちょっと遠いところまで、というか魔界まで行こうと思う。俺としてはお前に無理はさせたくないから家に戻ってくれても」


 そう言ったところで拳が飛んできた。え? 飛んできた? いきなりの事だったがぎりぎりかわすと飛んできた拳は壁まで行きバゴォという音と共に亀裂を走らせた。


「殺す気か!?」


「半分そのくらいの気持ちでやってみた」


「どや顔やめろ!?」


「お兄ちゃん私ね、お兄ちゃんと一緒に冒険するのが夢だったの」


 妹は俺の村の中なら相当強かったしPTの誘いもかなりあった。それなのにいつまでも家にいたのは俺とPT組みたいから、とそんな事を聞いていた気がする。俺がいつまでもレベルがあがらないから馬鹿にされた事もあるだろう。たまに血まみれで帰って来た時は大体そのせいだったと思う。


「二人で色んな所行って、いっぱい楽しいことして、いっぱい思い出作って、いっぱいお話しして。楽しみにしてたんだよ?」


 二人で、が協調されていたが仲間は必須だと思うんだがどうだろう。でも寂しい思いをさせていたのも事実だろう。強くなっていく妹に眩しさを覚えて普通に話してたつもりでも、妹は距離を感じていたのかもしれない。


「お兄ちゃんがイクまでずっと我慢してたんだよ。それなのに私を置いて一人でイクだなんて……」


「なんか発音に悪意を感じるんだが気のせいか?」


「お兄ちゃんが行くなら私も付いていくよ。例え魔界だろうと天界だろうと、だから、私を置いていったら許さないんだから」


「……言いたい事はあるが、ありがとう。これからもよろしく頼む」


「はーい!」


 妹の頭を撫でてやると満面の笑みを返してくれるのだった。


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