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「アンナさん、大丈夫ですか」


 妹とアンナさんを抱え、壁にもたれかけさせる。二人とも意識がまだ戻らないようで微動だにしない。寝ているというよりも気絶しているといった様子だ。


 催眠魔法、とマキは言っていたが本当に大丈夫なのだろうか。そもそも俺の体を使っていた以上信用していいのかも疑問に思ってきた。冷静になると気になってきてしまった。


 二人が起きるまでの間、休憩がてら色々聞いてみるか。


「なあマキ、お前は何が目的なんだ」


(それ聞いちゃう? それはおいおい話すとしてだ。まずやらなきゃいけない事がある)


「やらなきゃいけない事?」


 マキは何やら気難しそうな空気を出して話し始めた。


(俺は元々魔王だったはずだ。性格もこんな風に誰かのためだとか家族がどうとかもなかった。ただ自分が楽しければ良い、それだけを考えていたはずなんだ。勇者達にやられてからの記憶が曖昧でな、その記憶と力を取り戻したい)


「記憶と力を取り戻して、どうするんだ?」


(それはわからんが、やらなきゃいけないと何かが訴えている。大丈夫だ、さっき言った好きなものと嫌いなものに偽りはない。お前の中に長くいたせいかそのあたりが変わってしまったみたいだ)


 元魔王が味方になった、そういう事だろうか。もし俺の体を乗っ取ってもう一度世界征服をしようというのなら、グルゴを倒す必要もなかったし俺に体を返す理由もないし信じていいのだろうか。


(たぶんなんだが、俺はお前という人間に封印され共に育った影響でお前と同化しつつあるんだと思う。魂の融合とでもいうのか、お前の守りたいものも俺の守りたいものと変わりはしない)


 仲間と家族、か。マキにも家族がいたんだろうか。仲間……グルゴは仲間じゃなかったのか?


「なあマキ、仲間を守るって言ってたけどグルゴは仲間じゃなかったのか?」


(今の俺にはあいつは敵だ。元仲間だったがお前の妹たちに手を出すようなら容赦はしない。お前の感情は俺の感情でもあるんだからな。さっきみたいに強い感情じゃない限り俺に影響がでるなんて事は少ないがな)


 守りたいという感情と殺したいという感情がマキにも伝わったのか。あんなに危機感を覚えたのも初めてだったし復活したのはその辺の影響もあるかもしれないな。


「ところでだが、お前お前って言ってるけど俺の名前知らないのか?」

(知ってるが? 俺の言葉が聞こえるのはお前だけなんだからお前で充分だろう?)


「まあ、そうだが」


 一方的に名前を呼ぶ関係というのもなんだか寂しい感じがする。

 でもなんというか、レベル1の俺でも最強の力を手に入れたと考えるとなんだか報われたような気がしないでもない。半ばインチキなような気もするが、そのせいでレベル1だったのだから問題ないと割り切ることにする。


 まだわからないことも多いしマキに至っては何が目的なのかもわからない。そのうち話してくれるみたいだが悪い事ではないと信じることにしよう。


「そういえばマキは俺の体を使っていたが、あれはいつでもできるのか?」


(できない。あれは体のなかに一定以上の魔があったからできた芸当だ。魔物を食べて封印が弱まったせいだろうな。だんだんと俺の意識が覚醒はしていた。グルゴの魔を吸収した時点で完全に目が覚めた。お前の怒りが俺にも伝わって思わず動いたら動かせたといったところだな)


「じゃあ今は何もできないのか?」


(やろうと思えばできるかもしれないが、やる意味もないしな。魔が足りないからやっても魔法打つとかは無理だ。だから基本はこんな感じで話しかけるくらいしかできんよ)


 つまりどうしても戦闘する時には魔物を食いまくって魔をためないといけないって事か……。食事がはかどりそうだなぁ。


「なあマキ、お前勇者と戦ったんだよな? どうだったんだ?」


(どうだったってのは強かったかどうかって事か? それなら負けたんだから強かったなぁ)


「それもそうだが、勇者のPTとか性格とか、どう思ったかなって」


(変な事聞くやつだな、それがどうした)


「……ちょっと気になってな」


 魔王の魂は封印された、物まねしの力によって。俺の中には魔王と物まねしの魂があるという話だった。つまりそれは、物まねしの魂があるなら消したいというのが目的だったりするんじゃないだろうか。


(俺はただ、向かってきた奴がいたから戦った。ただそれだけだ)


 マキの答えは簡単だったが、それが本心なのかは俺にはわからない。目的をちゃんと知るまでは現在の勇者PTやあの鎧に会わせるのはあんまり好ましくなさそうだ。


(そうだ、一ついいことを教えてやろう)


 マキが俺に話しかけてきた。


(お前の体を使ったときに面白い事がわかった。そのうち気づくとは思うが面倒になると事だから教えておこう)


「なんだよもったいぶるなよ」


 魔王だったからか人の体を使ったからか、俺の何かに気づいたらしい。


(お前、物真似できるな?)


「はい?」


(お前の体を使ったとき、相手の行動が読み取れた。どういう条件かはわからないがその力を使えば各上相手でも引き分ける事ができるぞ)


 勝つことはできないんだ……。じゃなく物真似……。物まねしの力が俺の中にちゃんとあるという事か。


(その力はあまり有名な力じゃないはずだ。人間の中でもかなり稀な。どこで手に入れたんだ? お前は普通の人間だろう? 俺の魂が混ざっちゃいるがな)


 少し迷ったが、俺の事を連れ去ろうとした魔物から聞いた話をマキに話すことにした。物まねしの魂を消すことが目的だとしても、魔王が味方になってくれるのなら無くても困ることはないだろう。

 それに、これを話せばマキの目的とやらがちゃんとわかるかもしれない。



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