表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/89

決意2

最近雨がおおいですね

「お兄ちゃん、さっきの人たちなんだったの?」


「俺にはさっぱり理解できないが、あそこにいたら寝てる二人が起きた時確実に面倒だということは理解できる」


 床に寝ている鎧と侍を放置してお城に向かう。あの二人を介抱する気も起きないし義理もない。そもそも勇者達が放置したものを俺たちがどうのこうのしようとしても意味はない。あの対応からして慣れているんだろう。


「というか私全然喋れなくて寂しかった、お兄ちゃん抱きしめて!」


「お前はぶれないな……。撫でてやるからそれでいいだろ」


 よしよしと頭をなでてやる、嬉しそうに笑う妹の姿に心が暖かくなる。


「……お兄ちゃんの、もっと欲しいな」


「グーでいいか?」


「お兄ちゃんのいじわるー」


 世間一般ではどっちが意地悪になるのだろうか是非とも教えていただきたいところである。こいつはもっと欲を抑えて無邪気に甘えてくればこっちも対応変わるんだけどなと思わなくもない。


 城門では警備兵がいたが、教師達から連絡がいっていたのかすんなり中に通される。 


「おお、ウラノ兄妹! 無事だったか! お前らだけ見つからなくて心配してたんだ。良かった……」


 話しながらお城に入ると、タカギ教師とサカイ教師がいた。囮になってくれたサカイはやたらとぼろぼろだが無事なようだ。大魔法をぶっ放したタカギはかなり元気なように見える。久々に暴れてすっきりしたのだろうか。


「実は先生と別れたあと、魔物と出くわしまして。現代の勇者パーティを名乗る人たちに助けてもらっていました」


 色々と端折って説明をする。詳しく説明してつっこまれるのも面倒くさい。というか信じてもらえるかどうかも怪しい。


「そうか、勇者パーティ……。あいつらいるところには必ず問題が起きるからもしかしたらと思っていたが、いたのか……」


「そんなことを言ってはいけませんな、彼らはあれでも優秀な冒険者。事実お城に入ろうとしたモンスター共を抑えてくれておりましたからな」


 俺たちの会話に大臣然とした人が割り込んできた。いや姿からして確実に大臣なのだろうが。勇者パーティについて知っているということは有名なのだろうか。


「その、勇者パーティって有名なんですか?」


「何日か前に数人の男女が現れまして、いきなりレベル1の者も呼ぶようにと言われました。流石にそれは決まり上問題がありますと兵士が進言したところ怪しげな薬で昏睡状態にさせられました。我々は勇者パーティだ、従わない者はこの兵士の様になるが、逆らわなければ安全は保障しよう。近いうちにモンスターに襲われる危機がある、と。先に勇者パーティに襲われてしまいましたがな」

 

 大臣あんたも充分に言ってくれてると思うよ。やつらは支持を集めるよりも独裁を築き上げたいだけなんじゃないだろうか。


「勇者達の噂はここにも来ていたので、疑いませんでした。傍若無人だが強いという噂が。実際に城だけでなく民も守っていただいたのでこちらとしてはありがたい話でした。ところでその勇者達はどこに行ったんですか?」


 勇者達と一緒にいたと言ったのでいないことを不思議がられているのだろう。大臣が聞いてきたが正直こっちも彼らがどこに行ったのかは知らない。いや二人はたぶんまだ転がっているだろうが。


「そうですか、彼らのことですから心配はないでしょうな。それではせっかくですからウラノ殿、だったかな。職業鑑定をうけてもらいますか」


「いや、どうしようかなと思いまして」


「なんだウラノ、せっかくここまで来たのに受けないのか」 


 受けたくない理由はある。職業が不明の状態だと教師達からはなんて言われるかはわからない。珍しいサンプルとして徹底的に調べられるというのもごめんだし。

 かといってここまで来て受けないというのも不自然な気もする。科学者に見てもらったと言ってもそれなら職業を言わないといけないしなんとも難しい。


「まあ私が見るのでいいんですがね」


 大臣がなにやら呟いたと同時にログがみえる。


≪大臣が職業鑑定を行っています。承諾しますか? YES/NO≫


 科学者の時にはでなかったログだ。大臣が行うのと科学者が行うのとでは何か違うのだろうか。今はそれを考えてる場合じゃない。ここまできたら断るのはもう難しいだろう。どうにでもなれという気持ちをこめてYESを選んだ。


「……ふむ、これは珍しいですな」


 そうだろうな、科学者も同じように珍しいと言っていたから大臣でもそうだろう。今まで何人見たかは知らないが、無しなんていないだろうな。


「職業鑑定士です。これはこれは彼がいれば先生方の町は職業鑑定に困りませんな」


 ……どういうことだ? たしかに俺の職業はなかった。俺自身も確認したし間違いなかった。職業鑑定士になれる条件というのはいまいちわからないが、どういうことなのだろう。

 でもなれたというなら確認してみるまでだ。大臣を見てみる事にする。


ネーム:モーラル レベル:15

職業:大臣 いくつかの職の一部を条件付きで使える


 鑑定士になると職業の能力もわかるのか。この感じだと大臣の能力は相手に確認を取るという条件付で使えるのだろう。つまり本物の鑑定士なら不必要な肯定を挟んでいるということになる。


 人の職業を覗けるというのは実はかなり便利だったりする。もしも盗賊や犯罪者などの指名手配犯を見つけた時にすぐにわかる。ギャンブルでカマをかける事だってできなくもない。ただし、鑑定士になれるのは勇者についでかなり確立が低い。無理やりなっても能力が使えるようになるには相当な時間がかかってしまうため、適正外の人はまずやらない。


 俺がその能力を持っているのは何故なのだろうか。


「そうか、ウラノ良かったな。レベル1だとしてももう何か言われることはないぞ」


 たしかにレア職業というのはそれだけで羨ましがられる。一生を左右するという点でレアドロップの比ではないほどに役に立つ。手に入った経緯はわからないが素直に喜んでおくことにしよう。


「そうですね、ありがとうございます」


「お兄ちゃんやったね!!」


 妹が抱きついてくる。人前だとこんなに素直に普通にじゃれてくるのにな……。


 大臣に礼を言いつつ他の生徒とも合流し町に戻る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ