プロローグ1
一度は誰しも一番になりたいと本気で思う。
たとえばそれはなんでもいい、歌でも踊りでも物理的な強さでもなんでも。
俺も一度、いや何度もそういうことを考えていた。強くなりたい。誰よりも強く。
「ようお前まだレベル1なのか?」
「うん」
「だっせ! 六年も学校に通ってレベル1のやつなんて今まで一人もいなかったって先生も言ってたぜ? お前もう学校やめたほうがいいんじゃねえの!?」
そんな暴言をはいて行ってしまった。俺だって上げられるならレベルをあげたい。上げられないから学校からも出られない。
俺の町は昔勇者とか戦士とかとにかく多くの冒険者達を生み出していたらしい。
そこから何十年か経って魔王が一度倒されてから、この町ではあまり冒険者は育たなくなった。
魔王を倒した勇者は二つ隣の城下町、といっても歩いて三時間くらいかかるところ出身だった。
このあたりの町は勇者に希望すればなれる、神託とかそういうのもとくにはない。
ただ覚えるスキルとステータスだけは職業に依存する。
自分の性格や体にあった職業を選ばないとステータスは伸びないしスキルを覚えるのも遅くなる。
なので普通はお城等にいる職業鑑定士と呼ばれる人に適正職業を見てもらってそれになる。
決めてもらう前の職業は実質ただの村人でしかない。
勇者適正のない人が勇者になった場合、どの数値もほぼあがらず上がるまでに何年もかかったりする。適正職業じゃないものに就くと非常に苦労し、勇者はその最たるものらしい。
魔王を倒した勇者は勇者適正が高く、元のステータスも異常に高かったらしい。
勇者になり旅に出て、魔王を倒して帰ってきたときのステータスは今まで誰も見たことのない数値まで上がっていた。
生まれた直後は基本だれでも村人になっている。
村人は全職業の中でももっとも弱い。この世界にあるステータスでほぼどれも最弱に位置する。
HP(体力)
MP(スキルなどを使うときに消費する)
力(攻撃力決める)
賢さ(魔法系の攻撃力を決める)
命中(攻撃のあたりやすさを決める)
回避(攻撃のかわしやすさを決める)
丈夫さ(防御力を決める)
運 (いろんな事象に干渉することがある)
基本的にはステータスはこれで決められる。細かいステータスもあるようだが学校で習うのはこのくらいだ。マックス数値は今のところ確認されていないが、四桁まで行くことはかなり稀らしい。
基本は特訓とか戦闘とかで数値があがりレベルもあがる。数値の確認方法は職業鑑定士や神殿で確認できる。
生まれ持ったステータスが反映されているから向き不向きを鑑定士が確認して職業を決める、やりたかった職業をそのままやるもよし、適正がないものにするのも自由。
だが最初に自分のステータスが物をいうのは間違いない。
茨の道を進んで死んだ冒険者も数多くいる。俺はそうなりたくない。
なりたくはないが……
「六年も通ってレベル1ってのは……」
学校では特訓が行われ、そこでレベルが上がったものは職業決定や魔物討伐にいけるようになる。
流石にレベル1で外にほっぽりだすのは危険だということらしい。
レベル補正というのもあり、相手との差があまりにかけ離れていると攻撃があたらなかったり、数値的には勝っててもダメージが通らなかったりすることがある。
「特訓たりないのかな……」
六年間サボっていたわけじゃ決してない。特訓もまじめに取り組んでいたし対人の成績ならかなり良い方だともおもう。でもレベルがあがらない。
今では新しく学校に入ってくる人たちに戦い方を教える側になるくらいにやっている。
先生たちからは、レベルの上がらないのはかわいそうだけど仕事手伝ってくれる便利な子、程度の扱いを受けている。
レベルが上がれば教師にもなれるがいかんせんレベル1では生徒になめられるためなれない。
いや教師になりたいわけじゃないけどね・・・・・・。




