鋭刀腐敗②
その時、とある場所で幾つかの存在が『同胞』の復活を祝福していた。
どこかで一つ、男でも女でもない変態な存在は耳を澄ませていた。
「……やあ、やっぱ関わっていくのは君か。折角『憤怒』の彼が君の五年を封印してあげたって言うのに。お節介なとこは変わってないしー。ししっ」
変態は謳い上げながら、軽やかに戦場から遠ざかっていく。
「凍っていた運命の歯車が動き出す、か。これもあの畜生どもの予定調和ってことかな? ……ふふっ、でも懐かしいね。この内臓を直接握り締めてくるような殺気。銀の娘ちゃんには大役が回ってきたものだし。ま、畜生どもの求める、新世界の導主とやらに、なってくれや『万能録』ちゃん?」
そして、捨て去られた世界が覆った。
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「――――!」
見渡せる限りの〈廃都〉が震撼していた。
激しく揺れる地面の上に立っていられる者はいない。手と膝を着きながら誰かが 反射的に、地震かっ? と叫ぶ。だが証拠や根拠は無かったが、そこにいる誰もがこれが地震なんかであるとは露にも思っていなかった。
何故ならその揺れが、一人の鬼形児がいる方向から伝わって来ていたからだ。
その方向を中心に、波打つ波紋が同心円状に走ってくる。激震は強引に街を同調させ、中身をグチャグチャに撹拌するような乱暴な揺れを生み出していく。
震えの中心に、皆が視線を向ける。暴走した鬼が立っているはずのそこに。
そこに広がっていたのは、一つの地獄絵図。
無限に増殖していく黒い血の海と、その中央で躍り狂っている黒い鬼。
左の背中から鋼の片翼を生やした、堕天使の姿であった。




