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森のプロローグ
小さな精霊たちが囲む。
小さな小さな手をつなぎ、輪になって回り踊る。その無垢な瞳は笑っていた。
やがて小さな精霊たちはわらわらと、中心の大樹へ駆け寄ってそれを覆った。たちまち髪いっぱいに花が咲く。色とりどりの小さな花が、ぽこぽこと。
精霊たちはにこにこと大樹に微笑みかけ、慰めるようにその肌を撫でる。
小さな花は生まれ続けたが、先に咲いた花から次々と萎れて枯れていく。にこにこと花を咲かせ続けたが、やがて力を使い果たした精霊の姿が散っていく。
一つ、また一つと花が散る。
ついに最後の精霊が散ると、もう花は咲かなくなった。
大樹は、ぽつんと一人立っている。
彼女のことを、人間が“嘆きの君”と呼び始めた。
今日も嘆きの君はどこかで泣いている。
20130403