prologue
連載始めまして。
少しでも楽しんで読んでいただければ、うれしいです。
R15表記は念のためのものです。
何度も言った台詞をまた繰り返す。
進歩がないのは台詞じゃなくて私自身。
『今回はできなかっただけだって。』
今回はじゃんくて今回もが正しい表現。
次はね。
本当にそう思ってる?
『そうやって後何回自分に甘くなれば気が済むの?』
甘いんじゃないよ。
『彼は私の相手じゃなかっただけだって。』
いつまでも夢見る夢子じゃいられないことくらいわかってる。
『だったら早くあんたの相手見つけてきて、その変なプライドと後生大事に持ってるもの捨ててきなさいよ。』
私が持ってるプライドってそんなに高いものなの?
『プライドだけじゃ女は幸せになれないのよ。』
わかってる。
じゃあプライドを捨てれば私は幸せになれるの?
これが一年前の台詞。
そしてこれが現在の台詞。
「またできなかったの?」
「そんなに簡単に言わないでよ。」
「簡単よ。」
芽衣子が言うように本当に簡単にできたら苦労しない。
いや、本当は簡単なのかもしれない。
芽衣子や他の人にとっても。
ただ私には簡単なことじゃないだけ。
もし本当に簡単だったらこんなことで悩まないし、その前にせっかく手に入れた幸せを逃すことはなかったんだから。
「これで何回目?」
大学で出会った私と芽衣子は学科が一緒だったことで知り合い、付き合いも六年が過ぎていた。
だから芽衣子は私のことはほとんど知っていると言ってもいいくらい知っていた。
そんな芽衣子は私の彼氏のことも知っているくせにわざと聞いてくる。
やっぱり芽衣子は意地悪だ。
これは何度も思ったことだけど、佐山芽衣子のSはサドのSでできているんだ。
大学生のときに一度言って怒られたことがあり、それ以降もう口に出しては言わなくなったけど。
「三回目…かな。」
最後に『かな』とついたのはどこか認めたくない自分の精一杯の抵抗。
一番好きな人の前では裸になれない私。
そのせいでいまだに本当の意味では誰とも結ばれたとはいえない状況。
『怖くてできない。』
それは始めてのセックスに対してなのか。
それとも、大人女子を気取って、女子アナ風の身包みを剥がれることなのか。
心を丸裸にできない私は、女子アナ風の戦闘服で覆われた体も裸にはなれいでいた。
「一番好きな男の前でムリなら二番目に好きな男にすればいいじゃない。」
芽衣子のその台詞から三ヵ月後の今日、私は一つの決心を胸にパソコンに向かっていた。
次話から本格始動します。
次話もお楽しみに★