みよとたかし編
章になってはいますが一話一話は短編になっています。
「閉校まであと一週間かぁ……」
○○中学校は閉校を目前に控えたある日。二人の人間が違う場所で同じ事を呟く。一人は女の子、一人は男の子で二人は幼なじみ。お互い友達以上恋人未満だが、二人ともなんとなく相手のことが好き。告白はしてないけど。でもそのままで良いと思ってた。どうせこれからも一緒だと思ってた。でもある日突然その「当たり前」が変えられてしまった。
通っていた中学校が二年で閉校になってしまうのだ。
それを聞いたのは閉校になる二ヶ月も前の話。そして前々から噂されていた事実。
でも二人が衝撃を受けたのはその事ではなかった。なんでもこの学校の生徒は町と隣町の間にあるためここの生徒は二つに分かれてしまうらしい。そして女の子、みよ。通称みーちゃんと、男の子、たかし。通称たーくんは二人別々の学校に行くことになる。
今までなんとなく一緒だろうと思っていたモノが崩れた瞬間何も考えられなくなった。それから一ヶ月二人は考えた。このまま何もせずに学校が離れるとどうなるのか。
お互い来年は受験生。何より勉強を優先させるべき。ということは会う回数が少なくなるのは当然。お互いの距離は「行こうと思えば行ける距離」だからそれなりに遠い。時間をかけてまで行く必要がなければ行かないだろう。ただの幼なじみだから。一年まともに会わなかったら次の年も会う機会が減っていくんじゃないだろうか。違う高校ならなおさら。どんどん会う機会が減っていく……?
そんなのいやだ!
二人は考えた末にそう思い「告白をしよう」と思い立つ。それが閉校まで後一ヶ月の時。
それから何度か告白しようとするのだが時間がなかなか合わず、恥ずかしさと今更そんな事言わなくても……という思い、いろんな想いが合わさり告白出来ずについに閉校一週間前まで来てしまったのだ。
みーちゃんはクラスで元気でムードメーカー的存在。一方たーくんも明るく運動神経も良い。ただ人見知りの所が玉にキズ。でもいい奴。2年の副委員長もやっている。二人とも恥ずかしがり屋なトコあって、だからお互いに告白が出来てない。
「明日こそ、明日こそは告白するぞ!」
二人は固く決意するのであった。
次の日ー
「みんな驚くと思うが」
先生が急にそんなことを言う。今更驚く事なんて無いよ。と思っている生徒に先生は告げる。
「この学校に転校生が来た」
生徒の考えを遙かに超える言葉だった。みーちゃんとたーくん的に言えば告白の事を忘れてしまうくらい衝撃だった。
「何でこの時期に?」「まさか閉校って知らないとか?」「格好いいのかな?」「男じゃないかもしんないじゃん」「どの学年だろーな」「変な子ね」「先生早くー」生徒達が一斉にざわめく。
「静かにしなさい。では宮島 良樹君入りなさい」静まりかえった教室に扉を開く音が響く。
入ってきたのはひょろっとして顔も良いし何か何でも出来そうな人だった。
「おはようございます。これから宜しくお願いします。△中から転校してきました宮島良樹です。」
無愛想なしゃべり方だったが悪い奴ではなさそう。というのがみーちゃんの感想。
仲良くなれるか緊張してきた。悪い人じゃなさそうだけど話しかけないでも済むならその方がありがたいかも。というのがたーくんの感想。
この頃にはクラス全員転校生の注目がいっていて他のことは考えていなかった。みーちゃんとたーくんも例外ではない。
休み時間。転校生のヨシキっていったか?そいつの隣の席になった香が積極的の話しかけていた。その中の話題に気になるものがあった。
「ねぇ、ねぇ。私、良樹くんに相談事があるんだけど相談しても良い?聞いてくれる?」
「いいけど。何で俺に?」
「転校生でこの学校の事情をよく知らないから!何でも言えるじゃん?ただ誰かに聞いてもらえるだけで楽になるんだよね~。」
「ふーん。誰でもどんなことでも俺でよかったら相談のるけど。俺口硬いし。」
「そうなの!?うっわ!格好いいね。良樹くんイイね!」
「別に格好良くない。普通。」
こんな会話が繰り広げられてた。他にも色々香は質問していたが他は全然耳に入ってこなかった。
みーちゃんは香頑張ってるなーとしか思わなかったし、たーくんは口数少ない人なんだなとしか思っていなかった。
でも二人ともその会話だけは耳に残っていた。
「何か誰かに話したい悩み事があったような……一応メルアド聞いておくか」
みたいな気持ちだった。
転校生のメルアドは容易く手に入った。なんと言っても転校生が帰ってから香がみんなに教えまくっていたからだ。なので今はクラス全員転校生のメルアドを知っている。ちなみにここは田舎だけど以上に携帯所持率が高い。この学校の生徒みんな持っている。彼はそんなこと考えてもいなかっただろうに……。なんでも転校初日だから早退したんだとか。メルアドは香が言うには「相談事直接言うのは恥ずかしいからメールでしたい」って言ったら簡単に教えてもらえた。らしい。個人情報大ジョブかあいつ。今頃イタズラメールとか来てんじゃないのか?
不安になったみーちゃんはメールを送ってみることにした。
《イタズラメールは来ていませんか?大丈夫ですか。》
たーくんは無理矢理渡されたメルアドの取り扱いに困っていた。メールいきなりしたら失礼だよね。でも何か送った方がイイのかな?たーくんは意を決して自己紹介を送ることにした。
《こんばんは。いきなりのメールすいません。僕はあなたの席の前のたかしと言います。たーくんって呼ばれています。これからよろしくお願いします。》
みーちゃんの電話にメールが来た。さっきの返事だ。
《こんばんは。イタズラメールは来ていません。心配有難うございます。大丈夫です。あなたは誰ですか?》
転校の挨拶の時も思ったがこの転校生はかなりお堅い話し方をする。でも丁寧な文に自分への感謝が伝わって嬉しくなった。すぐに返信を打つ。
《良かったです。名乗りもせずにごめんなさい。私みよと言います。みーちゃんって呼んで下さい。ついでにその敬語っぽい話し方じゃなくタメで話しませんか?》
たーくんの電話が鳴った。メールの着信音だ。
たーくんは緊張の面持ちでメールを開く。
《分かり易い自己紹介有難うございます。こちらこそよろしくお願いします。たかしさんは優しい方なんですね。あ、僕もたーくんとお呼びした方がよろしいでしょうか?返事お待ちしています。》
これは嫌みが混じっているのか?まぁいいか。それにしてもこいつは丁寧に話すね。付き合ってるとこっちが疲れそう。でもいい奴だな。そう思い返信。
《嫌みですか?(笑)優しくないよ。どっちでも良いけど慣れてるからたーくんがイイかな?いきなりタメ口でゴメン。良樹も話しやすい話し方で良いぜ。》
みーちゃんの電話が鳴る。返信が来た!
《いえ、謝らないで。みーちゃんだな?覚えた。でも顔覚えてないから明日教えてもらえると嬉しいんだけど。※いきなりタメはやはり失礼でしょうか?》
見たとたんなんだか嬉しくなった。いきなり距離が近づいた気がした。やっぱいい奴だった。と思いながら返信をする。
《タメの方が嬉しいよ!勿論明日教えるよ。仲良くしよう、ヨシキ!》
たーくんの電話が鳴る。返信だ。
《嫌みのつもりはなかったんだけど。そう感じたなら謝るよ。優しいよ。俺がそう感じるんだ(笑)たーくんな、よろしく。実は俺もタメ口の方が話しやすいんだ。敬語変だっただろ?》
なんだ。結構ノリいい奴なのか。敬語だからお堅い奴なのかと思ったぜ。こいつとメールしてると楽しいな。思い切ってメールして良かったぜ。
《それならいいんだ。気にしないでくれ。そう感じるのか。なら俺って優しい奴なのかもな。(笑)変じゃなかったぞ?むしろ使い慣れてる感じだった。俺良樹のことなんて呼べばいい?返信宜しく。》
みーちゃんの電話が鳴る。
あれ、返信来るような文だったっけ?取りあえずメールを見る。
《そうか、それなら良かった。こっちの方が実は話しやすいんだ。忘れないでくれよ?こちらこそヨロシク。ところでさ、なんでみよさん(?)は俺にメールくれたんだ?》
「あっ。」そこでみーちゃんは思い出す。何となくでメール送ったこともそうだが同時に告白のことも。そしてみーちゃんはドキドキしながら返信する。
《忘れないよ。あとみよさんじゃなくてみーちゃんでイイから。ところで休み時間に話してた‘何でも相談して良い’っていうのはホント?私もヨシキに相談して良いの?》
たーくんの電話が鳴る。
「来た来た。」たーくんは自分がにやけていることを知らない。
《じゃあ気にしないわ(笑)かもじゃなくてそうなんだって。そうか?俺的にはかなりぎこちない感じだったけど。何とでも呼んで良いよ。普通に今のまんま良樹で良いし。ところでさ、たーくんはなんで俺にメールくれたんだ?唐突に。自己紹介だけどな(笑)返信ヨロ。》
「あ・・・ヤベッ」そこでたーくんは思い出した。今自分は幼なじみに告白することで悩んでいて、今日もそれが実行出来なかったことに。
《じゃ、よっちゃんだな(笑)それでよっちゃんにメールを送った理由なんだが、ヒミツにしてくれるか?相談事があるんだ。出来れば聞いて欲しい。》
みーちゃんの電話が鳴る。
《じゃあみーちゃん。ホントだよ。みーちゃんからなら大歓迎。俺で良いならな。何でも言えよ。相談事って何?》
あ、何か今グッと来た。良いのかな。恋愛の相談なんて・・・ええい、ままよ!
《うん。今私好きな人が居てね。幼なじみなんだけどこの学校廃校になるじゃん。それで学区が幼なじみと別れるの。来年は受験生だし会う時間無くなってこのまま……と思うとダメだ!って思うんだけど自分の思いをなかなか伝えられなくて。どうしたらいいと思う?ヨシキの意見を聞かせて欲しいの》
たーくんの電話が鳴る。
《よっちゃんかよ。女みてぇー。相談?いいよ。勿論ヒミツにしてやるよ。男同士の約束だ。話してみろよ。》
意外と男気がある奴。たーくんは自分の中でよっちゃんのイメージがどんどん変わっていくのを感じていた。
《ホントは男友達にするような相談じゃないんだけどよ。今俺、好きな奴がいてな。幼なじみなんだけどよ。この学校廃校になるだろ?それで幼なじみと学区が別れるんだよ。来年は受験生だしよ。会う時間無くなってこのまま離れていって果てに……考えただけで恐ろしいんだがその、あれだよ。告白って奴をなかなか出来ねぇんだ。こういうのってどうしたら良いんだ?よっちゃんはどう思うよ?》
良樹の携帯が鳴る。
今日ほどメールしてる日は無いな。と思いながらメールをみる。同時に2通。見た瞬間良樹は……
「プハッ。なんだこいつ等。ぜってー両思いだろ!ウケるな。さて。かき回してやろうか……」
俺はSかも知れないと思いながらもにやけずにはいられない良樹だった。そして返信は。
《そんなに告白苦手ならしなきゃ良いじゃん。そもそも嫌いになっちまえばいいんだよ。嫌な所思い出せよ。あるだろ?嫌いになるのは好きになるより簡単な事だからな。》
二人が一斉受信。
「「なぁっっ!」」
離れた所で同時に声が上がる。
みーちゃん宅では。
母「いきなり大きい声出して何してるの!もう遅いんだから寝なさい!」
み「ごめんなさーい!……ったっく。それが出来たら苦労しないっつの。ヨシキのバカ。」
《そんなこと出来ないよ。それに何回もしようとしたもん。ダメだったから相談してるンじゃん。ヨシキの馬鹿。》
たーくん宅では。
母「うるさいわよ!たかし!もう寝なさい!」
た「わぁーったよ。うるせぇーな……それにしてもよっちゃんのやつ。マジで言ってんのかな。試してないとでも思ったのか…………。」
「んなこと出来ねぇよ。てか何度もやったしな。それでも無理だから相談したんだろ?よっちゃん馬鹿だな。》
《やっぱりな。いや、俺は馬鹿で良いが理由は違うぞ。お前がその程度の気持ちなら諦めた方が得作だと思ったんだよ。諦められないんだったら、そうだな。今電話して「明日の昼休み話したいことがある」とか言えば良いんじゃないか?そしたらタイミングがつかめなくても時間は確保されるだろ?まずやってみろ。》
みーちゃんは悩んでいた。
電話をかけようかかけまいか。そしてみーちゃんが下した決断は、
たーくんは悩んでいた。
電話をかけようかかけまいか。そしてたーくんが下した決断は、
《電話中でダメだった。どうしよう。》
「なんでやねん!」
関西出身でもない良樹が関西弁で突っ込んでしまうほどその内容は面白かった。どうせ同時に電話したんだろうと思わせる内容だったから。
《じゃあメールにしろ。相手のメルアドくらい知ってるだろ?》
み&た「その手があったか!」
母さん「寝なさい!」
二度あることは三度ある。皆さん気をつけましょう。
み《たーくん?明日の昼休み話したいことがあるんだけど暇?》
た《みーちゃん?明日の昼休み話したいことがあるんだけど空いてる?》
み《もちろんだよ!てか話したいことって何?》
た《全然良いよ。でも話したい事って何?》
み《さっきからみたような言葉言ってるね私達。でも話したいことは言えない。明日まで待って。》
た《今は言えない。待って。てか俺達似たことばっか言ってるな。考えてること同じだったりして(笑)というかメールが混み合って何言ってるか分かんなくなるから俺いったん止まるな。》
み《待てないよ。隠し事は無しって誓ったのに!考えてること同じって…ないわ(笑)》
た《待てよ。待てなかったら明後日にするぞ!みーちゃんの方こそ言えよ。確かにないな(笑)》
み《じゃあ私も明後日にするよ!教えてくれないなら最後の日にしちゃうもんね!》
た《じゃあ俺も最後の日にするよ。どうしても教えられないからな。》
み《たーくんのケチ!》
た《どっちが。》
《……ということで明後日になってしまいました。ケンカしてこれから過ごすのは嫌だな》
《仲良すぎるのも考えもんだな。まぁケンカするほど仲が良いとも言うし。とりあえず自分から真摯に謝ることだな。電話の方が良いぞ。女子の場合は固定電話、男子の場合は携帯電話に電話した方が仲直り出来るとは言われてるな。んじゃ頑張れよ。意外に仲直りって難しい所あるから……まぁお前なら大丈夫だろうけど。じゃあな。結果は明日聞かせてくれ。俺は寝るぞ。結果はメールでも良いぞまぁせいぜい努力せい。それもまた青春じゃからな。ふぉっふぉっふぉ。さらばじゃ。(爆笑)》
二人の家。
「「ふざけやがって良樹!!」」
「寝なさいって言ってるでしょ!何時だと思ってるの!?」
二度あることは三度ありますね。気をつけましょう。
それにしても電話か。
さっきダメだったけど、やってみるかな。
「もしもし?」
「みよちゃんからでんわよ~」
「たーくんから電話だ!」
「あら、切れちゃったわ。」
み「たーくん?こんな時間にどうしたの。」
た「さっきまでメールしてたじゃないか。」
み「そのことなんだけど……」「「ごめん!」」
み「私が悪かったの。聞くなって言われたのに聞いちゃって。」
た「いや、俺も悪いんだ。意地になった。済まん。でも言えないんだ。分かってくれ。」
み「うん。わかった。だから私も言えないの分かって。」
た「わかったよ。じゃあまた明日な!」
み「また明日!」
《良樹!君のおかげで仲直り出来た。最後の日が待ち遠しいよ!有難う、良樹。》23:00受信。
「ったく。それなら最後の日から明日に戻せば良かっただろ?まったく。恋心って奴は全く理解出来ねぇな。」
こうして閉校(廃校って呼ばれてるだけで閉校だからね!校長より)一週間前のには終えた。残り4日。
みよとたかしはいつも通りの3日間を過ごした。変わったことと言えばいつも仲悪い奴らがよけい仲悪くなってたり、委員長が最後の日何かするらしかったり転校生良樹が転校二日目にして何故かみんなと仲良しになっていたりと不思議なことはあるものの普段通り。普段通りの日常だった。まるでこの学校が閉校になることなんか忘れているように。閉校することを忘れようとしているように普段通りだった。
最後の日の前日。全校生徒に質問した。
《俺はどうやってこの学校生活を終わらせたらいいのかな?》
みんな「楽しめ!」とか「悔いをな残さないように!」とかの返事をくれた。
良樹からメールが来た。
3日間良樹とメールしていなかったから少し驚いてメールを開く。
このメールをみて、俺の告白しよう。という気持ちはより強くなった。心強い味方だ。
私にメールが来た。
そのメールをみて、恥ずかしいから告白辞めよっかなと思っていたのを飛ばされた。味方って、いいな。と思わされた。
最後の日。
委員長の提案でみんなでキャンプファイヤーをすることにした。この学校への未練を最後火と一緒に消して思い出だけを残すんだとか。お堅い委員長にしてはいいこと言うな。と思った。
このキャンプファイヤーは小さいがステージが用意されてて誰がなにしても良いルールになっている。
そこで俺は考えた。
ステージで告白しようと。
そこで私は思いつく。
ステージで告白しよう!と。
二人してステージに昇ろうとする。
お互いに気づいて譲るが結局一緒に昇った。
お互いお互いに言いたいことをここで言う予定だったみたいなのでここで二人して同時に言うことになった。
司会(良樹)の声「ステージに初めに昇ったのはみーちゃんとたーくんのコンビです。二人は何をしてくれるのでしょうか。みなさんステージ上のお二人にご注目下さい。」
二人は同時に声を出す。マイクを無視した大音量。
「「私(俺)はここにいるたーくん(みーちゃん)のことが大好きです。付き合って下さい!」」
顔を真っ赤に染めてお互いに頭を下げる二人。
相手の言った言葉を聞いて顔を見合わせる二人。
観客の皆さんからはあっはっはという笑い声とパチパチパチという拍手の嵐。
「「ありがとうございました」」
といって恥ずかしそうに二人はステージをおりた。
「続いてステージに昇ったのは……」
二人はそのまま観客に紛れキャンプファイヤーを楽しむ。
手を繋いで。顔を真っ赤にしながら。
後日談だがこの二人はこの日恋人同士になり同じ高校に進んだらしい。高校に行った時中学校3年の話をして盛り上がったそうだ。
めでたしめでたし。