地球が終わった、その後で
とても深い、深い眠りだった――という余韻を感じながら、私は目を覚ました。
けれど、視界に映った光景は、目を閉じる前と変わらなくて。
「……地球って、消滅したんじゃなかったっけ。夢だったオチ?」
「残念ながら夢オチじゃあないな。お前の生きてた地球はキレーさっぱり無くなりました」
眠りに落ちる前と同じ位置、同じ姿勢で私を見ていたヤツ――今となっては笠木ミツギという名前がヤツを表すのに適しているかどうかも怪しい――は、なんてことないように私の故郷の滅亡を伝えてきた。
それに思うところがないわけではないけれど、事ここに至っては今更だ。私は問いを重ねた。
「にしては、見慣れすぎた私の部屋でしかない空間なんだけど、なんで?」
「お前の記憶を元に、お前が違和感なく過ごせる空間を作り上げたからだな。褒めてくれていいぜ!」
「はあ。つまりここは、地球ではないどこかってこと?」
褒めを期待するキラキラとした瞳を無視して訊ねると、ヤツは見るからに拗ねた表情になった。「俺、頑張ったのに……。スゲー頑張ったのに……」とか呟いている。子どもか。
……そういやこいつの本来の年齢ってやつも不明なのか。地球人換算で何歳なんだろう。
ともあれ、今自分がいるのがどこなのか――何なのかくらいは知っておきたい。
じっと見つめると、ヤツは両手を降参とばかりにあげて、答えた。
「地球でもなく、お前の知ってる宇宙でもない。俺の生まれ故郷の中に作った――お前にわかる表現で言うなら、シミュレーション空間みたいなもんかな」
「シミュレーション空間……」
「そ。お前の記憶を元に、お前の知覚する範囲を演算し続けるシミュレーション空間。……要は、お前が生きてた世界の再現空間だな」
……なるほど。だから、今私の視界に映っているのは、どこまでも『知った』自分の部屋なのか。
「これ、外に出たらどうなるの?」
「外ももちろん演算されて、違和感ない『ご近所』を歩けるぜ。知らない土地にだって行ける。そこは元の地球のデータ組み込んどいたから」
「ふうん。……あんたの故郷の地を踏めるとかはないんだ?」
そう言うと、ヤツは虚を突かれた顔をした。……うーん、流石にこの見目は自前のものであってほしい。いかにも宇宙人的人外の姿が本性だったら、ちょっといろいろと……。
「……俺の故郷の地、踏みたいの?」
「正直、興味はある」
「それは、その――俺のこと知りたい、と同義と思っても?」
今度の期待に満ちた目を、裏切る理由はなかった。
「まあ、大体そういう感じ」
自分の住んでいた地球を――世界を『処分』するような立場にあるくせに、私なんてちっぽけな人間を好きになっちゃったらしい男(……でいいんだろうか、さすがに性別の概念まで崩されると困る、いろいろと)に対して、興味は尽きない。
私の『知っている』こいつのほとんどが偽りだろう今は、特に。
だから、私としてはごく真っ当な興味であるつもりだったのだけど――ヤツにとってはちょっと違ったらしい。
「ちょ、不意打ち……」と頬を赤くして、乙女のごとく顔を両手で覆ってしまったヤツから、まずは名前の件から問いただそう。合ってるんだか合ってないんだかな状態じゃ、呼びかけることだってできやしないのだから。
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