マリア・バディラの独白
オランダ・南ホラント州――七つの大罪を象徴するよう設計された七人のホムンクルス少女たちと、彼女たちの“完璧な prototype” として生み出された長姉マリア。
多様な不妊夫婦七組の遺伝子から創造された彼女たちは、姉妹として育てられ、それぞれが「傲慢」「憤怒」「色欲」「怠惰」「強欲」「嫉妬」「暴食」を体現していた。
しかし、七組すべての遺伝子を統合して造られたマリアだけは、どの罪も宿さない“理想体”とされた存在だった。
……だが、その“無垢さ”こそが最大の過ちだった。
十四人の親にも七人の妹にも拒絶され、やがてマリアの内に眠っていた七つの罪が覚醒する。
悲しみと絶望に満ちた心は復讐へと変貌し、マリアは自分の存在意義を問い続ける──「私はただの試作品だったのか？」
暴走したマリアは通う学校から“感染”をばらまき、人々を吸血鬼のような怪物へと変える終末を引き起こす。崩壊していく世界の中で、彼女の孤独と狂気は人類すら脅かす最悪の脅威となっていく。
マリアと七人の姉妹を救おうと立ち向かうのは、憤怒の化身ベネシャの弟サンスラ・バディラと、謎多き遺伝子改良少女ハンナ・カッツ。
二人は“罪に囚われた姉妹たち”を更生させ、マリアの心を取り戻せるのか――
それとも、マリアの深い闇がすべてを呑み込むのか。
マリア・バディラの独白
私と七人の姉妹は、普通の方法で生まれたわけではない――私たちをこの世界に送り出す母はいなかった。私たちは人間ではない。私たちはホムンクルス、最先端の遺伝子工学によって実験室で作られた存在だ。
しかし、何かが狂った。私の七人の姉妹それぞれには、七つの大罪の一つが決定的な特徴として宿せられた。しかし私には、そんな欠点は与えられなかった――少なくとも、そう思っていた。
私の存在は呪いとなった。十四人の両親も姉妹たちも私を拒絶し、家族の絆をすべて断ち切った。彼らの見捨てた行為は、私の内に潜んでいた暗黒を目覚めさせた――七つの大罪のすべての種子が凝縮され、抗しがたい力となったのだ。私はこの力を用いて、捨てられた痛みへの復讐を誓った。
問いが絶えなかった。なぜ私は創られたのか？ 私の存在意義は、姉妹たちの創造を成功させるためだけだったのか？ もしそうなら、私はすでに役目を終えたのだろうか？ ただ消え去り、存在する権利を放棄すべきなのか？
それでも、存在の危機に揺れる中で、私は人生を味わいたいと願った。私に与えられなかった世界の美しさを知りたかった。屈することは拒んだ。代わりに、姉妹たちと両親に、決して忘れられない教訓を与えることを決意した。
彼らには、私の内に宿る空虚と、見捨てられた絶望を味わわせるのだ。そのために、私は世界を混沌に陥れた。
すべては私たちの学園から始まった。私はウイルスによる黙示録を解き放ち、数え切れない人々を血に飢えた吸血鬼のような化け物に変えた。この感染は世界中で多くの命を奪い、破滅をもたらした。
こうして、世界は崩れ始めた――私の心がずっと前に崩れたように。
