一、謀反
玲莉は朝餉を食べ、紅玉宮で蘭玲への文の返事を書いていた。
(何て返事書こうかな・・・父上にはまだ会っていないから、例の人の骨の話はできないし・・・そうだ、紅玉宮の侍女たちや護衛の袁馨さんのこととか姉上に教えないと)
玲莉は蘭玲の文を読む姿を想像しながら、鼻歌を歌いつつ、文を綴っていた。
春静が慌てた様子で、玲莉のもとに走ってきた。
玲莉は咄嗟に文を寝台の枕の下に隠し、平然を装いつつ、どうしてそんなに慌てているのか尋ねた。
「玲莉お嬢様、陛下がお呼びです」
「陛下が?」
春静は急いで衣を用意し、淑惠と共に、玲莉を着飾っていった。
「皇太子妃は本当にお綺麗ですね。皇太子妃を巡る争いが起こるのも無理がありません」
「いえ、淑惠さんと春静のおかげですよ。ありがとうございます」
玲莉の美しさは傾国の美少女と言っても過言ではなかった。
玲莉が袁馨を連れて皇帝のもとに向かっていると、李義に出くわした。
李義も正装をしており、皇帝に会いに行く様子だった。
「義、どうしました?そんなに私を見て」
「いや・・・」
李義は玲莉の美しさに見惚れて言葉を失っていた。
「玲莉も父上に呼ばれていたのですか?ということは・・・」
李義は何か思い当たる節があるようで、笑みをこぼしていた。
「義、なぜ私たちが呼ばれたのか心当たりがあるのですか?」
「んー、そうですね・・・。それは父上から直接聞いた方がよいでしょう。では、一緒にいきましょうか」
李義はそう言って、玲莉の手を取り、二人は見つめ合って微笑みながら歩いていった。
(本当にあの皇太子殿下なのか?別人みたいだ)
改めてみる李義の変化に、袁馨は首をかしげながら、二人の後についていった。
李義と玲莉は二人そろって皇帝に挨拶をしていた。
「しかし、玲莉。本当に美しい娘だな。聖女に選ばれただけはある。義が玲莉にしか心が動かなかった理由がわかる気がする」
玲莉は照れながら李義を見つめていた。義も笑みを浮かべながら玲莉を見つめていた。
「陛下、今日私が皇太子殿下と呼ばれた理由は何でしょうか?」
皇帝は直筆の巻物を玲莉の手に渡した。
玲莉は不思議な顔をしつつ、その巻物に書かれている内容を黙読した。
(何、何?婚姻の年齢を十六からに定める。来年から適用する・・・。へぇー、十六から結婚できるようになるのね・・・)
「えっ!?十六から!」
玲莉はこの巻物を渡された理由を悟った。
「そうだ。つまり、来年には義と玲莉は正式に夫婦になることができる」
義は玲莉の手を取り、うれしそうな表情をしていた。
玲莉も喜びたがったが、もうすぐ翔宇と楚に行くことを考えると、素直に喜ぶことができなかった。
「陛下、もしかして私のために法を変えたのでしょうか?」
皇帝は穏やかな顔で否定していた。
「そもそもこの法は朕の時代にはそぐわない。今やこの国の後継者は義だけだ。早めに婚姻し、跡継ぎを残してもらわないと、この国も滅びてしまう。義は玲莉に一途だから、側室も妾も持たないだろう。それならば、玲莉に頑張ってもらわないといけないからな」
玲莉は恥ずかしくて、二人と目をあわせることができなかった。
玲莉が目を逸らした先に、いるはずのない黄飛の姿が見えた。
(なぜここに黄飛さんが?)
玲莉は皇帝と李義に気づかれないように、黄飛を見ていた。
黄飛の慌てた表情と身振りでこれから何が起こるか悟った。
(・・・李誠明が来る)
玲莉がそう確信した時、外から騒がしい声が聞こえてきた。
入口の前で護衛していた者たちが吹き飛ばされていた。
危険を察知した袁馨がいつの間にか玲莉の前に立っていた。
「袁馨、何があったのですか?」
「陛下、皇太子殿下。李誠明が配下の者を大勢連れて、後宮にやっいてきました」
玲莉たちの前にゆっくりした足取りで現れたのは、李誠明だった。
その隣には白庭、そして、配下の者たちに埋もれるようにいたのは景天だった。
「お久しぶりです、兄上。申し訳ありません。長らくお待たせしましたね。私が何しに来たのかもご存じですよね?」
「お前はこの皇帝の座がほしいのか!」
「兄上、それは違いますよ。私ではありません。その座が欲しいのは・・・」
「私ですよ」
李誠明の後ろから現れたのは、全てを裏で牛耳っていた人物だった。




