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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第三章 三人の皇子と後宮生活

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二十九、胸騒ぎ

紅玉(ホンユー)宮での生活も慣れ、特に大きな出来事もなく、玲莉(リンリー)は穏やかに過ごしていた。

唯一気になることがあるとしたら、後宮内の玲莉に関する噂だ。

「皇太子殿下の許嫁の王玲莉(ワンリンリー)は人前に顔が晒せないほど醜いらしいよ」

「私は顔に火傷を負っていて見せられないと聞いたけど」

玲莉の容姿は限られた人しか見ることができず、噂に尾ひれがつき、とんでもないことになっていた。

「でも、あの冷徹皇子を落とした女でしょう。顔が醜女なら、さぞかし心が美しい方なのでしょうね」

玲莉と春静(チュンジン)が歩いているのを知っているのか知らぬのか、宮女たちはその話で盛り上がっていた。


「こんなに美して可愛いお嬢様になんてことを」

春静は言い返してやりたい気持ちでいっぱいだったが、余計にこじれてしまう恐れがあるため、耐えていた。

「春静、気にしないで。所詮、噂は噂よ。どうせ私の噂なんてすぐになくなるわよ」

玲莉自身は気にも留めていなかった。




玲莉は聖女伝を読み続けていたが、目新しい情報は何も書いていなかった。

(この聖女伝、肝心なことは書かれていないし、何のためにこの聖女伝があるのかいまいちつかめない。謎の空白のページもあるし。もしかして、この聖女伝で重要なのは内容ではなくて、この聖女伝自体に何か秘密があるのかしら)

「玲莉お嬢様、茶菓子を持ってきますね」

春静が部屋から出て、玲莉は難しい顔をして悩んでいた。すると、玲莉の目の前に人が降ってきた。

玲莉は思わず大声で叫びそうになったが、口を手で塞がれた。目の前にいたのは宦官の恰好をした見覚えのある人物だった。

玲莉はその人物の目を見て頷き、誰であるか気づいたことを示した。玲莉の口を塞いでいた手は離れた。

冬陽(ドンヤン)さんですよね」

「突然の無礼をお許しください、玲莉お嬢様。蘭玲(ランリン)お嬢様から文を預かりましたので、お届けに参りました」

「姉上か・・・」

玲莉はもう一度大声を出しそうになり、冬陽に手で口を押さえられた。

「すいません。ありがとうございます。冬陽さん。本当に宦官として潜入していたのですね。よく後宮に入れましたね」

「後宮の中に入ることなど容易いです。もし、一緒にいるところを見られてもこの格好なら問題ありません。旦那様がとても心配しておられます。何か問題はありませんか?」

「はい、私は大丈夫です。それより、姉上のことが心配です。姉上は元気ですか?」

冬陽は微妙な表情をしながら、真実を言うべきかどうか悩んでいた。

「そうですね・・・蘭玲お嬢様は明るく快活な方です。正直、環境はよくありませんが、あれこれ工夫して頑張っておられます」

(冬陽さんの表情からして最悪な環境なのだろうな・・・でも、建明(ジェンミン)さんもいるなら・・・)

「姉上は建明さんと仲良くやっていますか?」

「まぁ・・・そうですね。悪くはないとは思いますが・・・」

冬陽は歯切れの悪い言い方をしていた。

「玲莉お嬢様は心配されるので、言いたくはなかったのですが、建明さんは冷離宮にあまり戻られていません」

「どういうことですか?」

冬陽の話によると、最初の数日は蘭玲と建明は共に過ごしていたが、その後は冷離宮に姿を見せることが少なくなったという。建明は晨明(チェンミン)のところによく足を運んでいるそうだ。

「建明さんは皇太子殿下の従者ではなかったですか?皇太子殿下はなぜ何も言わないのですか?」

「申し訳ございません。玲莉お嬢様。私には皇太子殿下が何を考えているのかは理解できません。お嬢様にでしたら、皇太子殿下は話してくださるのではないのでしょうか?」

「それもそうですね。皇太子殿下は私以外には基本冷たい視線しか送らないし。何考えているかはわからないでしょうね」

(これは私が直接聞くしかないようね)

冬陽は三日後にまた来ますと言って、どこかに消えていった。


春静が不思議な顔をして周りを見渡しながら、部屋に入ってきた。

「春静、どうしたの?」

「いえ、人がいる気配がしたので・・・もしかして誰か来ましたか?」

玲莉は平常心を装いながら、否定した。

(何だろう・・・嫌な予感がする。今は春静がいるし、姉上の文は寝る前にでも見よう)

玲莉は春静にわからないよう素早く文を懐に隠した。

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