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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第三章 三人の皇子と後宮生活

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二十三、最後の挨拶

蘭玲(ランリン)は冷離宮へ、玲莉(リンリー)は新しく用意された宮へ行く日となった。

二人を迎えに馬車が王家の目の前に止まっていた。


王浩(ワンハオ)は蘭玲、玲莉と抱擁を交わしていた。

玲莉は後宮に戻っても、皇帝に許可を得れば会うことは可能だが、蘭玲とは今のところ二度と会うことができない。冷離宮に入った者は二度と出ることはできないのである。

蘭玲は腹をくくったかのように、晴れやかな笑顔で家族に最後の挨拶をしていた。

「私は優しい父上と母上、いつも気にかけてくれる兄上、そっけない弟、そして可愛い妹と過ごすことが出き、幸せでした。父上と母上には私の婚姻のことでずっと迷惑をかけてきました。最後まで迷惑をかけてしまい申し訳ありません。会うことができなくても、私はいつでも家族の平穏無事を祈ってます。父上、母上、どうか長生きしてください。もしかしたら、生きているうちに会えるかもしれません。兄上、義姉上を大切にしてください。将来の丞相が、兄上なら問題ありません。この国も安泰でしょう。義姉上は本当の姉のように私と玲莉を可愛がってくれました。一生懸命に教えてくれた刺繍ですが、最後まで上手くなりませんでした。冷離宮でも練習しますね。逸翰(イーハン)、まずは科挙合格頑張ってね。あとは、すぐ感情的になるからそれだけは注意して。今は兄上が止めてくれるけど、逸翰ももう婚姻できる年齢だから。少しは大人にならないと。誰も嫁いでくれないわよ。あと・・・」

「姉上、私にだけ言うこと多すぎです」

蘭玲と逸翰は通じ合う何かがあったのだろう。何も言わずに目を合わせて笑っていた。

蘭玲は玲莉の番になると、包み込むように優しく抱きしめた。

「玲莉、必ず文を書くから。玲莉が大人になっていく姿が見れないのが心残りだわ」

蘭玲は玲莉の耳元で誰にも聞こえないような声で話した。

その声はいつもの蘭玲らしくない、か細い声だった。

「姉上、必ず文を書きます。もし、遠くに行ったとしても・・・」

「遠くに・・・?」

玲莉は、何でもありませんと言って、もう一度蘭玲を抱きしめた。


蘭玲は門の前で振り返り、跪き、三度礼をした。それから立ち上がり、家族の顔を一人一人しっかりと見ながら、目に焼き付けているようだった。

(絶対に忘れない。私の大切な家族の笑顔。最期の時に思い出すのはこの光景にしよう)

今まで見せたことのない笑顔を見せ、その後は振り返ることもなく、馬車に乗って王家を去って行った。


玲莉も皆に見送られながら、馬車に乗ろうとしていた。すると、玲莉の乗るはずの馬車の中からある人物が出てきた。

「皇太子殿下!」

王家は皆驚きながら、李義(リーイー)に挨拶をしていた。

「皇太子殿下、なぜ馬車の中に?」

「玲莉に一刻も早く会いたかったので。実は黙って来てしまいました」

「黙ってって・・・」

(次期皇帝の皇太子が黙って後宮を抜け出したら、後宮では大騒ぎになっているのではないだろうか。もし、私のせいだと言われたら・・・殺されたりしないよね?)

玲莉は不安になりながらも、李義から差し伸べられた手をつかんだ。

李義はそのまま玲莉を引き寄せ、肩を抱いた。

「王丞相、安心して玲莉のことは私に任せてください。必ずこの国一番の最も尊く、美しい皇后にしますから」

積極的な李義に多少引きながらも王浩は、娘をよろしくお願いしますと深々と頭を下げていた。

玲莉が去ろうとした時、逸翰が玲莉の手を握った。

「逸翰兄上・・・どうしたのですか?」

逸翰は無意識に玲莉の手を握ってしまっていた。

「いや・・その・・・」

勇毅(ヨンイー)が逸翰の隣に来て肩を叩いていた。

「玲莉、逸翰は寂しいのだよ。会えなくなるのが」

逸翰は涙をぐっとこらえているようだった。

玲莉は逸翰の手を握り、満面の笑みで、

「逸翰兄上、いつも私を守ってくれてありがとうございました。私は逸翰兄上が大好きです」

逸翰一気に耳まで真っ赤になり、恥ずかしくなり玲莉を李義に渡した。

(私が楚に行ってしまったら、また誘拐されたと勘違いして、心配するだろうな・・・)

李義に笠を被せられ、手を引かれながら、王家を去って行った。




玲莉が王家を出て行った後、劉翔宇(リウシャンユー)が王家に来ていた。

「翔宇殿下、玲莉はつい先ほど、出て行ったばかりですよ」

「いえ、今日お伺いしたのは王夫人に聞きたいことがありまして」

「妻に?」

王浩は何があったのだろうと戸惑いながら、劉翔宇を客間に案内し、従者に思敏(スーミン)を呼ぶよう伝えた。




「翔宇殿下、私に聞きたいこととは何ですか?」

思敏は冷静を装いながらも、少し警戒していた。なぜ、自分を訪ねてきたのか見当がつかなかった。

劉翔宇は神妙な面持ちで、あることについて尋ねた。


「おっしゃる通りです。似ているなと。しかし、私の勘違いと思い、本人には話しませんでしたが・・・」

「やはり、そうでしたか」

思敏も劉翔宇が何を考えているのかようやく理解でした。

「まさか・・・」

「王夫人、今も気づきましたか。しかし、このことは誰にも言わないでください。私が解決しますので」

思敏は劉翔宇が何をしようとしているのか気になって尋ねようとしたが、思いとどまった。

劉翔宇はしばらく考え込んでいたが、思敏に笑顔でお礼を言って、足早に去って行った。


(まさか・・・後宮にいたなんて・・・)

思敏は震えている手を落ち着かせていた。

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