十四、昨夜酔った勢いで
(さすが皇太子の部屋。置いているものが全て金で作られたものばかり。売ったら一体いくらになるのかな)
玲莉はそんなことを考えながら李義の部屋を見ていた。
寝台は明らかに夫婦で寝るためのような大人の雰囲気が醸し出されていた。
李義は玲莉が寝台に興味を持っていることに気づいた。
「これは玲莉が来たときのために新しくしたのです。子を作るには雰囲気も大事だと思いましてね」
「皇太子殿下、まだ早いのではありませんか?私が十八になるまで」
李義は悪い顔をしながら、玲莉の手を取った。
「玲莉が十八になるまで待てないかもしれません」
玲莉は顔を赤らめながら、まだだめですと首を横に振っていた。
「安心してください。今日はそのために呼んだのではありません」
李義が急に真剣な表情になったので、玲莉も真剣な顔で李義を見ていた。
「ある者たちが怪しい行動をしていましたので、もしかしたら玲莉に何かあるのではないかと思い、居ても立っても居られず、玲莉の部屋まで来たのです。私は心配なのです」
不安そうな表情をしている李義を玲莉は愛おしく感じた。
玲莉は笑みをこぼし、李義の頬に軽く唇で触れた。
李義は右頬に玲莉の唇に感触を感じた。
李義はうれしくて、そのまま抱き寄せ玲莉と口づけを交わそうとしていた。
「あの・・・皇太子殿下、玲莉お嬢様・・・私の存在を忘れておられませんか?」
玲莉は恥ずかしくなり、李義から離れようとしたが、李義は春静が見ていようとお構いなしだった。
李義は春静に見せつけるように玲莉に甘い口づけをした。
玲莉は春静に見られるのが恥ずかしく、抵抗していたが、無駄だった。
春静は見ないようにと思いながらも目の前で繰り広げられる甘い場面に、顔を隠した手の指の隙間から二人をじっくり見ていた。
「私はお邪魔なようなので・・・」
「◎△$♪✕〇&%#?!」
玲莉は李義と二人だと何をされるかわからないので、必死に呼び止めていたが、李義に唇を塞がれたままで、言葉にならない声しか出せなかった。
春静が部屋から出ていくと、李義はやっと唇を離した。
李義は玲莉を抱きしめたまま、
「やっと二人きりになれましたね」
とうれしそうに言ったが、
「そうですね」
と玲莉の口調は怒っていた。
「安心してください。これ以上は何もしませんから。ただ、玲莉と一緒にいたかったのです」
むすっとしていた玲莉の顔も少しだけゆるいだ。
「機嫌を直してください。今日は玲莉と一緒に食事をしようと思いまして用意してもらっているのですよ」
李義はそう言いながら、玲莉を椅子に座らせた。
(何この椅子?座り心地がいい。私の部屋の椅子と全く違うわ。明らかに高価そう・・・なんか変に緊張しちゃう)
玲莉は座った椅子の座り心地に感動しながら、蘭玲のことが気になっていた。
「皇太子殿下、姉上が私の部屋に一人でいます。姉上を呼んではいけませんか?」
「玲莉は優しいのですね。蘭玲にも食事を届けています。今頃は春静と食べている頃でしょう」
玲莉は春静が一緒なら問題ないかと思い、李義と二人で食事をとることにした。
「玲莉、それは私の・・・」
玲莉が口にしたのは李義が飲んでいた果実酒だった。玲莉は誤ってお酒を飲んでしまった。
前の世界での秀英はお酒は強い方ではなかった。秀英は知らなかった。玲莉が下戸であり、人格が変わることを。
玲莉の目は虚ろになり、顔は一瞬で真っ赤になっていた。
(玲莉はお酒が苦手だったのか・・・)
玲莉はにやにやしながら、李義に抱きつき、
「皇太子殿下は本当にイケメンですね。殿下は目も鼻も唇も全てが完璧です」
(イケメンって何だろう。玲莉は私を誉めてくれているのか?)
いつも攻めている李義は、反対に玲莉に攻められると、どう対応すればいいのかわからなかった。
玲莉は李義の方を向いて膝の上に座って、首に両手を回した。
呂律が回らなくなっており、玲莉が何を言っているのか李義には聞き取れなかった。しかし、李義は初めて見せる玲莉の姿に内心喜んでいた。
「玲莉、このままだと私は我慢ができなくなりそうです」
李義は玲莉に手を出さないよう必死に堪えていた。
「皇太子殿下の好きにしていいですよ」
「玲莉、後悔しませんか?」
「しません!」
李義は抑えきれなくなり、玲莉の腰に回していた手を頭に回し、自分の唇に押さえつけるように頭を引き寄せた。
玲莉もお酒のせいか積極的に李義の唇を求めていた。
李義はそのまま玲莉を抱きかかえ、寝台まで激しくお互いを求め合いながら、玲莉を寝台に寝かせた。
李義は衣服を脱ぎ始め、玲莉の胸を触ろうとした時だった。
「すーすー」
玲莉が寝息を立てながら、眠っていた。
「・・・えっ?玲莉、玲莉」
李義は玲莉を起こしていたが、玲莉はそのまま抱き枕のように李義を抱きしめ、気持ちよさそうに眠っていた。
李義は玲莉の寝顔を見ながら、微笑んだ。
(あんなに盛り上がっていたのにまさか寝るなんて。さすが玲莉だな)
李義は玲莉を愛おしそうに眺めながら、そのまま眠ってしまった。
その頃、蘭玲は寂しいからと言って春静と共に李義が用意してくれた食事を食べていた。
「蘭玲お嬢様の分も用意してくださるなんて、皇太子殿下はお優しいですね」
「春静、それは違うわよ。玲莉のことだから私と食事をしたいと言ったはずよ。でも、皇太子殿下は玲莉と二人だけで食事をしたいから、私の分も用意したから問題ないとでも言ったのでしょう。春静の前で玲莉と口づけしたのもきっと春静を追い出すためよ」
春静は蘭玲の推察に感心していた。
「この時間に部屋に帰って来ないということは玲莉は皇太子殿下の部屋で寝ているのかしら」
「もしかしたら皇太子殿下がお嬢様に・・・」
「それは大丈夫だと思うわ。玲莉は婚姻するまで共寝はしないと言っているわ。皇太子殿下は玲莉を大事にしておられるからそこまではしないはずよ。私は玲莉の部屋で寝るから、春静も食事が終わったら下がっていいわよ」
この後蘭玲は建明に襲われることとなった。




