十一、誤算
早朝、少女は何かに対して怒りながら、自分の部屋に向かっていた。
「お嬢様、悪気はなかったのですから、許してあげたらどうですか?お嬢様と一緒にいたかったのですよ」
「でも一歩間違えれば・・・」
「一歩間違えれば、何が起きたのですか?」
少女の後ろからは慌てたように青年が追いかけて来ていた。
「何もありません」
そう言って、少女は自分の部屋まで来たが、いつも見張りをしてくれている宦官たちが部屋の前で倒れていた。
「皇太子殿下・・・何があったのでしょうか?」
「何が起きたのでしょう・・・わかりませんね」
玲莉、春静、李義は顔を見合わせながら、李義は眠っている宦官たちを起こし、玲莉は部屋の戸を開けた。
玲莉と春静が部屋の中に入ると寝台に男女が気持ちよさそうに眠っていた。
玲莉がその二人の顔を覗くと意外な二人に驚いて、後ずさりした。
「お嬢様、どうされましたか?」
春静の声に反応した李義が玲莉に駆け寄った。
「玲莉、どうしましたか?」
春静と李義が様子のおかしい玲莉に声をかけたが、玲莉はその場で固まっていた。
李義が玲莉の視線を追うとそこにはとんでもない光景が広がっていた。
「建明?と蘭玲?なぜ・・・」
蘭玲が目を覚まし、目線の先には玲莉がいたので、おはようと言いながら、起きようとしたが、隣に誰かいることに気づいた。
男の顔を見るとそこに寝ていたのは建明だった。
「どういうこと?何で私は建明と寝ているの?」
衝撃を受けて何も話せない玲莉の代わりに李義が蘭玲に事情を聞き始めた。
「蘭玲、何があったのか覚えていますか?」
「玲莉が部屋を出ていって待っていたことまでは覚えています。それから急に眠くなったので、玲莉の寝台を借りていたのです。それで・・・目が覚めたら朝になっていて、隣に建明がいて・・・」
「どうやら建明に事情を聞かないといけませんね」
李義は思い切り建明に頬をひっぱたいた。
蘭玲と春静は李義の行動に思わず目を閉じた。
建明は頬を叩かれた衝撃で飛び起きた。
「皇太子殿下・・・」
建明は李義の表情で何もかもが露呈したことを悟った。
まさかこんなにも早く李義に発覚するとは思っていなかったため、建明は混乱していた。
建明は上半身裸のまま、その場で土下座をし、李義に謝っていた。
「申し訳ございません。皇太子殿下。罰は何でも受けます。しかし、玲莉は何も悪くありません。私が・・・」
そう言って、顔を上げた時、玲莉が目の前に立っていることに気づいた。
(えっ?私は玲莉と寝たはず。隣にいるのは・・・)
建明は驚きを隠せない表情のままゆっくりと後ろを振り返った。
「蘭・・・玲・・・なぜ・・・」
李義は建明が玲莉を襲おうとして、間違って蘭玲を襲ってしまったことを建明の様子で感じ取った。
「建明、どういうことか説明してもらえますか?」
建明は一緒に寝たのが玲莉ではなく蘭玲だったため、さらに混乱し、錯乱状態になっていた。
建明は蘭玲の腕をつかみ、ものすごい形相で激しく詰め寄っていた。
「なぜ蘭玲がここにいるのだ!私は玲莉と寝るはずだった!なぜ!」
李義は建明を蘭玲から引き離し、床に押さえつけた。
「蘭玲、一旦建明を外に出すから着替えてください。春静、蘭玲に着替えを」
「皇太子殿下・・・私も姉上の着替えを手伝います」
暗い表情の玲莉が心配になりながらも、李義は建明を引きずって部屋の外に出た。
「玲莉、ごめんなさい。でも、私は何も覚えていないの」
玲莉は泣きながら、蘭玲に抱きつき、謝った。
「姉上、謝らないといけないのは私の方です。ごめんなさい。私が皇太子殿下の部屋でうたた寝して、そのまま寝てしまったから。私が姉上といれば姉上がこんな目に遭わなかったはずなの。本当にごめんなさい」
蘭玲は玲莉の頭をなでながら、心の中で責任を感じている玲莉に罪悪感を感じていた。
(玲莉、私は建明に抱かれてそれほど動揺してないのよ。むしろうれしく感じているわ。私は玲莉が思っているほど、いい姉ではないのよ。だって本当は・・・)
春静は玲莉が泣き止むのを待って、外で待っている李義に声をかけた。




