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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第三章 三人の皇子と後宮生活

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四、断ち切れない想い

李義(リーイー)玲莉(リンリー)が宴の催される部屋に着くと、そこには(ワン)家の思敏(スーミン)(ジャオ)以外が勢ぞろいしていた。

「父上、兄上、姉上!」

玲莉が王家を出てまだ数日しか経っていないのだが、玲莉からすると長らく会っていなかったような気がするほど、会えなくて寂しい思いをしていた。

まだ家を出てそんなに経っていないだろう言いながらも、抱きついて甘えてくる玲莉に王浩(ワンハオ)の頬は緩んでいた。

「姉上と兄上たちも陛下に招待されたのですか?」

「陛下の気遣いだ。玲莉が寂しくないように、勇毅(ヨンイー)たちも呼ぶよう声をかけてくださったのだ。玲莉、話しは後だ。もうすぐ陛下が来られる。皇太子殿下もお前を待っているぞ」

玲莉はもう少し話したかったのにと思いながらも王浩の言葉に従った。

李義は玲莉の手を取り、共に席に着いた。

王浩たちは意外と仲よさそうに見える李義と玲莉に少し驚いていた。


「王丞相、私のためにわざわざありがとうございます」

そう言って現れたのは、晨西(チェンシー)李晨明(リーチェンミン)だった。後ろからは、途中で合流した建明(ジェンミン)もついてきていた。

建明と玲莉は自然と目が合ってしまった。

建明は玲莉に向かって少し微笑み、しばらく視線を外さなかった。

玲莉も建明からなぜか目が離せなかった。

(しばらく会っていなかったけど・・・少しやつれている?・・・皇太子殿下の従者と聞いたけど皇太子殿下が私に会いに来るときはいつも違う従者が来ているような・・・)

李義は玲莉が建明を見つめていることに気づき、手を強く握りしめた。

「痛たたたた」

玲莉が李義を見ると明らかに機嫌の悪そうな顔をしていた。

玲莉は苦笑いしながら、誤魔化していた。

「これはこれは蘭玲(ランリン)ではないか。美しく育ちましたね。たしかもう十八でしたね。もし婚姻相手がいないなら・・・」

そう言いかけた時、建明が晨明の袖を引っ張り止めた。

「兄上、早く席に着きましょう。陛下が来られますよ」

晨明は蘭玲に話の続きはまた後でと言いながら、建明と共に席に着いた。

蘭玲は晨明と余計な話をせずに済んだので内心ほっとしていた。


皇帝も席に着き、宴がはじまったが玲莉はまだ十五である自分を恨んでいた。

(まさか、私だけお酒が飲めないなんて・・・久しぶりに飲めると思ったのに・・・この時代って若い時から飲んでると思っていたのに・・・まさか成人するまで飲めないなんて)

玲莉はお酒が飲めないことにがっかりしながらも雰囲気だけでも楽しもうと気持ちを切り替えていた。

李義は冷徹皇子と思えないくらいに、玲莉の世話を焼いていた。

その様子に晨明も表情には出さなかったが驚いていた。

(まさかあの李義がこれほど女に尽くすとはな。こういうことはやはり見ないとわからないものだな・・・しかし、王玲莉・・・やはり欲しいな・・・)

晨明は立ち上がり、玲莉の目の前に座った。

「晨西王・・・どうしたのですか?」

玲莉は晨明の行動の意味が分からなかったが、李義には晨明が玲莉に目をつけていることがわかっていた。

「本当に綺麗な瞳だ。私の妻たちも皆美しいが、玲莉ほど美しい女はいない」

晨明は玲莉の白髪の部分の髪に触れようとした時だった。

二本の手が晨明の手を止めていた。

李義の手と建明の手だった。

「ほぉ、建明。まさか、建明までが私の手を止めるとは・・・」

「兄上、この宴は陛下が兄上のために設けてくださっています。陛下の前では謹んでください」

「建明・・・それだけか?まだ玲莉に未練があるのだろう?」

玲莉と目が合った建明は咄嗟に目を逸らした。

「・・・違います」

その場が一瞬静まりかえった。


皇帝は咳払いをして、皆の注意を引いた。

「晨明、お前のために用意した宴とはいえ、少し度が過ぎるぞ」

「陛下、申し訳ございません。皇太子殿下の許嫁の玲莉があまりに美しかったものでつい羨ましく思い、声をかけてしまいました」

「晨明、お前の気持ちはわからなくもない。たしかに玲莉は美しい。私も若かったら妃に召し上げたいくらいだ」

皇帝は酒に酔っているのか、大笑いしていた。

晨明も皇帝にあわせて笑っていた。

「朕は先に席を外させてもらおう。王浩、あとはお前に任せるぞ」

皆は立ち上がり、皇帝を見送った。


李義は晨明を睨みながら、玲莉を自分の背中に隠していた。

晨明は不気味な笑みを浮かべながら、

「玲莉、また会いに来るよ」

そう言って、王浩に挨拶し、部屋を出て行った。

「建明、わかっていますね?」

李義の言葉に、黙って礼をし、晨明の後を追った。

蘭玲は建明の後ろ姿を目で追いながら、心に痛みを感じていた。


「王丞相、私と玲莉は少し席を外します。玲莉は兄上、姉上と話したと思いますので、また戻ってきます。ご安心を」

李義は無理やり玲莉の手を引っ張り、部屋の外へ出て行った。


「父上、皇太子殿下はどうしたのでしょう」

「さぁ、わからないな。とりあえず、皇太子殿下と玲莉が戻って来るまでは待つとしよう。お前たちも玲莉と話したいだろう」

王浩たちは李義と玲莉が戻って来るまで、玲莉の昔話をしながら待っていた。

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