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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第三章 三人の皇子と後宮生活

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二、揺れる心

秀英(シューイン)は夢の中で王玲莉(ワンリンリー)と会っていた。

「どうして急にあなたが出てきたの?」

(この後宮にはあなたとつながっている水晶玉があるの。その影響で私が呼び出されたの)

「水晶玉?」

(そう。水晶玉はあなたの瞳とつながっているわ)

「私の瞳とつながっている?」

秀英は自分の入浴時や着替えの時も映っているのではないかと思い、思わず両手で自分の体の大事な部分を隠すようにおさえた。

(安心して。あなたを守る水晶玉だから。そういう時は映らないのよ)

秀英はそんなものなのかと疑いながらも、今は王玲莉の言葉を信じるしかなかった。

(本当は後宮に入ってほしくなかったわ。後宮に一度入ったら二度と出ることはできないのよ)

「そう言われても、いろいろありすぎて私にはどうしようもできなかったのよ」

(わかってる。だって私はあなたの心の中にいるの。あなたの全ての行動、感情を理解しているわ)

知っているならどうにかしてよと思いながらも、王玲莉が秀英の行動に干渉できないこともわかっていた。

「そういえば、あなたは翔宇(シャンユー)殿下と一緒になってほしいみたいなことを言っていたけど、翔宇殿下は前の世界では私の何だったの?」

(・・・それはあなたが自分で確かめて。いや、思い出して)

「思い出せないから聞いているのよ。翔宇殿下に一度聞いたけど、前世では妻だったとか言っていたかな?私は違うと思うんだけどな」

(なぜそう思うの?)

「翔宇殿下と会うといつも懐かしい気持ちになるの。秀英と呼ばれた時も前に呼ばれていた気がするの。その感じが夫婦というよりは親友というか戦友というかそれに近い感覚なの。でも、それと翔宇殿下を好きになるとは別問題だから。あなたは何でそこまで翔宇殿下を薦めるの?」

(それは私があなたのために連れてきたからよ)

「私のためねぇ・・・」

(玲莉、気を付けてね。あなたを狙っている者はまだいるのよ。後宮にいるから大丈夫と安心したらだめよ。敵はどこにいるのかわからないのだから)

「ご忠告どうも」

(それと、水晶玉にはまだ近づいたらだめよ。今のあなたの力では暴走しちゃうから。私が許可するまでは絶対に行かないで)

「ねぇ、暴走するとどうなっちゃうの?」

(・・・この国を滅ぼしたいの?)

「滅ぼす・・・わかりました。近づきません」

(ではまたね)

秀英は自分に国を滅ぼすほどの力があるということを理解するのと同時に、この世界にとって自分がとんでもない存在であること理解した。




玲莉が目を覚ますとそこには玲莉の手を握り締め、祈るように険しい顔をしている李義(リーイー)の姿があった。

「皇太子・・・殿下・・・?」

「よかった・・・目が覚めましたか。痛いところはないですか?」

玲莉は無言で首を横に振った。

「急に倒れたから驚きましたよ。太医の話では身体に異常はないそうです。しかし・・・」

歯切れの悪い李義にどうしたのか尋ねると思いもよらない答えが返ってきた。

「その・・・寝言で翔宇殿下の名をずっと呼んでいましたので・・・」

玲莉は思わず起き上がってなぜか李義に言い訳していた。

(なぜ私は皇太子殿下に言い訳しているのだろう。皇太子殿下は今は私の許嫁だけど、本当に好きなわけじゃないはずなのに・・・)

李義は言い訳している玲莉の両手をつかみ、自分の側に玲莉の体を引き寄せ、玲莉の口を塞いだ。

玲莉はどうしたらいいのかわからず、大きく目を見開いたまま、固まっていた。

李義は玲莉の口から唇を離すと、いつもの冷酷な顔をしながら言った。

「次寝言で私以外の名を口にしたら、私がどうするかわかりますか?」

玲莉は尋常ではない速さで首を縦に振っていた。

「冗談ですよ。この件は許しましょう。ただし、玲莉から・・・」

李義は玲莉の人差し指を自分の唇に当てて、いたずらに笑った。

(私からキスしろってこと?無理無理無理)

玲莉は顔を真っ赤にしながら下を向いていると、李義から顎クイされ、口づけの催促をされた。

(これは私がキスしないと終わらないやつだ)

玲莉は覚悟を決め、目をつむりながら、李義に優しくキスした。

「やればできるではないですか」

李義は玲莉を抱きしめ、

「言ったでしょう。私からは離れられませんと。私は玲莉に会うまで、全てがどうでもよく思っていました。しかし、今は違います。あなたが欲しいです。玲莉からは初めての感情をいつももらっています。嫉妬という感情も玲莉に出会ってから学びました。今は毎日が楽しいのです。もう私は玲莉なしでは生きていけません」

玲莉は鼻で笑いながら、大げさですよと言ったが、李義は否定した。

「もしこの国か玲莉を選べと言われたら、迷わず玲莉を選びます。玲莉を失うくらいならこの国などいりません」

「皇太子殿下、そんなこと言わないでください。殿下は次の皇帝なのですよ」

玲莉はそう言いながらもうれしく感じていた。

(私はこの人を支えないといけない運命なのかしら。王玲莉、私はどうしたらいいのかしら)

李義の言葉に玲莉の心は揺さぶられていた。


二人の抱き合う様子を戸のそばからそっと眺めている者がいた。

(玲莉は私と一生一緒にいるはずだったのに・・・なんてことを自分はしてしまったのだ・・・くそっ・・・私でさえまだ玲莉と口づけしたことなかったのに。なぜこうも簡単に玲莉の唇を奪うんだ)

建明(ジェンミン)は己のしたことへの後悔と玲莉を手に入れた李義への恨みが募りつつあった。

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