二十九、劉翔宇VS唐景天
「で、私に聞きたい話しとは何でしょうか?」
劉翔宇は余裕のある顔で景天に尋ねた。
「翔宇殿下は俺が楚の公主だった劉若㬢の子であることはすでに知っていますよね?」
劉翔宇は当然でしょうと言っているかのように頷いていた。
「翔宇殿下に初めて会った時から俺について何か知っていると確信していました。玲莉のところに行けば翔宇殿下にも会えると思い王家に来たのですが、まさか王夫人から母についての話が聞けるとは思ってもいませんでした。俺が知っているのは、俺の母は楚の元公主で行方不明、父は将軍孟子謙であり、すでに亡くなっていること。父の家の者が皆何者かによって殺され、未だに誰に孟家が滅ぼされたのかわかっていないことぐらいです」
「言い忘れていますよ。あなたの母が聖女の子孫であることもですね」
「やはりそのことも・・・」
景天は父や母に関して、劉翔宇が他にも何か知っているはずだと確信していた。
「翔宇殿下は父や母について他にも何か知っているのではないですか?」
劉翔宇は景天を見つめながら、何か考えているようだった。
「いいえ、景天さんが述べたこと以外は知りませんよ」
(今はあのことについては話さないほうがよいだろう。李叡を脅す材料は最後まで手元に残しておかないと)
劉翔宇は他にも景天に関係する秘密を握っていたが今は明かすべきではないと思い話さなかった。
「では、聖女伝によれば聖女の子孫の男と聖女が婚姻を結ぶということも当然知っていたのですね?」
「・・・えっ?」
劉翔宇は聖女伝に何が書かれているのかまでは知らなかったため、まさかそういう記述があるとは想像もしていなかった。
「玲莉に確認してもらっても構いませんよ。翔宇殿下も玲莉のことを慕っているのでしょう。しかし、残念です。俺がただの集落の薬草売りであっても、玲莉と婚姻することになるのです」
景天は勝ち誇ったかのように劉翔宇を見ていたが、劉翔宇の様子がおかしかった。玲莉が景天と婚姻するということではなく、他のことを思い巡らしている様子だった。
(今言うべきなのだろうか・・・知らぬまま玲莉と婚姻されても困るしな・・・)
景天は劉翔宇に呼びかけていたが、真剣な顔をしたまま一点を見つめたまま、景天の声に全く反応しなかった。
「・・・殿下!翔宇殿下!」
「あっ、申し訳ないです。少し考えることがありまして・・・」
景天は自分に関係あることあることなのか尋ねたが、劉翔宇は否定した。
(今、真実を告げたところで今度はあいつが調子に乗るだけだ。とりあえず今は、後宮に顔を出しつつ様子を見よう。いざとなったら皆の前で公表すればいいか・・・)
「しかし、あと三年は待たないといけませんね」
「俺が楚に帰れば来年には婚姻できるのでしょう?」
「・・・景天さんが楚の帰ることはできませんよ」
「なぜ?」
劉翔宇は笑顔で話しをはぐらかした。景天は食いつこうとしたが、黄飛が劉翔宇を呼びに来たので結局聞き出せなかった。
(絶対に何か隠している。俺はてっきり玲莉との婚姻を止めにくると思っていたが、何か違うことを考えているようだった。そもそも聖女の母をなぜ魏に嫁がせたのだ?当時の楚の皇帝も母が聖女の子孫であることを知っていたはずだ。魏に嫁がせたのは何か目的があるはずだ。翔宇殿下はそれも知っているのか?・・・ちょっと待てよ・・・現皇帝が母の兄だとすると、俺は翔宇殿下と従兄弟ということか?)
年齢的には景天が年上のはずなのだが、会うたびに自分の方が年下のような感じがし、次会う時は殿下とか身分関係なく年上として振舞おうと考える景天であった。
「陛下、晨西王が陛下への謁見を申し出ておられます。李誠明、李建明のことについて謝罪したいとのことです」
「そうか。晨明は朕の遣いから話を聞くまでは、父と弟がこういうことになっているとは思いもしなかっただろう。・・・久しぶりに顔を見たいな。晨明には、謝罪は必要ない、朕が歓迎していると伝えろ」
(晨明が誠明と接触していることはないとはまだ言い切れない。ここは会って様子を見て確認してみよう)
宦官はすぐさま晨西王李晨明に皇帝が会いたい旨を文に書き、届けさせるのであった。




