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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第二章 三人の皇子との同居生活

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十八、内通者

北誠(ベイチェン)王府の近くで様子を見ながら、建明(ジェンミン)は違和感を感じていた。

「何か妙です。門番が明らかにいつもとは違う人です。私も初めて見ます。それに、父上があんな細身で力のなさそうな人を門番にするはずがありません。とりあえず、作戦通り様子を見に行きます」

「建明殿下、危険だと感じたらすぐに合図を」

「わかりました」

逸翰(イーハン)は物陰に隠れ、建明の様子をうかがっていた。




北誠王府に着く少し前、男たちは作戦会議をしていた。

建明の説明によれば、北誠王府の護衛は正門に二人、裏門に二人、いずれも軍部の者に引けを取らないほど強いという。屋敷内にもある程度の間隔で配置させれおり、侵入は困難と思える。

「建明殿下、塀から屋根に飛び移ることは可能ですか?」

「できなくはないと思いますが、気づかれると思います。常に空から地面までくまなく監視していますので」

逸翰は何か思いついたような顔をしていた。

「なるほど。それなら、一瞬でも気を引くことができれば、兄上なら侵入できます」

勇毅(ヨンイー)は一気に注目を浴びていた。

「うちの白庭(バイティン)も足音を立てずに侵入するのは得意ですよ」

珍しく白庭は少し照れていた。




「では、この作戦でいきましょう。何としてでも父上を捕らえてください。もしもの場合は殺しても構いません」

建明は口ではそう言いながらも、どこか悲しく、悔しいような表情をしていた。

「建明、お前が玲莉(リンリー)のために頑張ったことは必ず玲莉に伝えます。玲莉が幻滅することもないでしょう」

建明たちが北誠王李誠明(リーチェンミン)を捕らえた後、建明は皇帝により、何らかの形で罰せられることになる。玲莉とは二度と会うことができなくなるだろう。

建明は一時的に悪の感情を抱いた自分を責めていた。他の皇子に玲莉を取られまいと思い、実行しようとしたことがこのような結果を招くとは思いもしていなかった。後悔ばかりが心の中を埋め尽くしていた。

建明が目をつむると浮かんでくるのは玲莉の笑顔だった。

(できることならもう一度抱きしめたかった。私はなんて愚かなことを考えたのだ)

建明は上を向き、流れ出そうな涙を堪え、大きく深呼吸をした。

「では、行きましょう」




建明は北誠王にいつものように帰っているふりをしていた。

門番は建明を見るなり、建明に敵意を見せた。

「貴様は何者だ!」

自分の家に入ろうとしているのに、初めて見る門番に敵意を見せられ、内心苛ついていた。

「私のことも知らないで門番をやっているのか。私は北誠王李誠明の息子李建明だ。家に帰って来たのだ。早く通せ」

門番はじっと睨みつけるように建明を見つめ、懐から文を取り出し、建明に渡した。

「北誠王からです。建明殿下が帰ってきたら渡すよう言伝を頼まれました」

建明は北誠王の息子だと知っても相変わらず敵意を向ける、門番を睨みながら、文に目を通した。

建明は文を読み終わると、その文を握りつぶした。

(父上はここまで腐った人間だったのか!くそっ!作戦は中止だ!)

建明は急いで逸翰のところへ駆けて行った。




再び男たちは集まり建明になぜ作戦中止したのか問い詰めてた。

建明は一枚の文を皆の前に広げた。ぐしゃぐしゃになっていた文には建明の怒りがあらわれていた。

男たちは文の内容に衝撃を受けていた。

文には、すでに北誠王府から逃げ出していること、建明の母が李誠明に皇帝に全てを話し、謝罪すよう説得したため殺めたこと、玲莉を必ず手に入れることなどが綴られていた。

「母上・・・」

建明は声を押し殺すように泣いていた。

「まずいですね。建明殿下、北誠王が行きそうなところに心当たりはありませんか?」

劉翔宇(リウシャンユー)の問いかけに建明は無言で首を振っていた。

逸翰はあることに気づいた。

(いくら何でも北誠王が危険を察知して逃げるのが早すぎる。・・・この中に内通者がいるな。殿下たちは違うだろうし、兄上も違う。ということは・・・)

逸翰は白庭か黒風(ヘイフォン)のどちらかが内通者だとにらんでいた。




王家では相変わらず女子会が続いていた。

蘭玲(ランリン)(ジャオ)は玲莉の髪を結ったり、簪をさしたりしながら遊んでいた。

「姉上たち、私で遊ばないでくださいよ」

玲莉は不満を漏らしながらも、可愛がられているのがわかっていたため、内心は喜んでいた。

思敏(スーミン)は娘たちを優しく見守っていた。

その時、激しい足音がこちらに向かっていた。

戸の前で侍女が思敏と玲莉に声をかけた。

「奥様、玲莉お嬢様。唐景天(タンジンティエン)という方が玲莉お嬢様にお会いしたいと門の前に来ています」

玲莉は喜んでいたが、思敏は驚きを隠せなかった。

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