十六、襲撃事件の真相
建明の衝撃的な告白に王浩は再び沸き起こる怒りを抑えながら、建明を震え上がらせるような目付きで見ていた。
建明は頭を床に擦りつけたまま、話しを続けた。
「私は玲莉が襲われるところを助けて、玲莉を守れるのは自分だけだということを示そうと考えたのです。私は焦っていました。今まで、私しか見ていなかった玲莉の前に皇太子殿下と翔宇殿下が現れたので。その上、婚姻したいとまで。玲莉は私のことを好きだと言ってくれていましたが、お二人はどちらも皇太子殿下です。不安になったのです。しかし、冷静になって考え直しました。もし玲莉に気づかれてしまったら、あの優しい玲莉でさえ、私から離れていくでしょう。私には耐えられません。ですので・・・私は計画を実行するのをやめました」
王浩、勇毅、逸翰は建明を信じていないような目で睨みつけていた。
李義は王家襲撃の時のことを思い出していた。
「建明、しかし、あの時、北誠王が送った刺客と他に私たちを殺す気のない者たちがいました。建明が密かに雇った者たちだったのではないですか?勇毅、そうですよね?」
「はい、皇太子殿下。明らかに敵意の感じない者たちが紛れ込んでいました」
建明は顔を上げ、涙を流しながら、首を横に振った。
「私ではありません・・・私もあの時は本当に驚きました。私の計画が誰かによって実行されていましたので。まさか父上が私の計画をそのまま実行していたなんて、その時は何も知りませんでした・・・なぜか父上は私の計画を全て知っていました。私が計画を実行しないことにしたことも。それで、父上は私の計画を実行したのです。ですので、王家襲撃の時の刺客と翔宇殿下と玲莉を襲った刺客は全て父と・・・あるの者が手を組んで送り込んだのです」
「なるほど。建明殿下は北誠王に弱みを握られたから、反抗しなかった・・・いや、できなかったのですね?」
建明は劉翔宇の問いかけに、黙って頷いた。
「それで、ある者とは誰のことですか?」
建明は首を横に振りながら答えた。
「私も誰なのかわかりません。父上は協力者がいるとだけは教えてくれましたが・・・男なのか女なのかさえわかりません」
劉翔宇は眉をひそめながら、ため息をついた。
「どうやら、北誠王を手のひらで転がしているのは協力者のほうですね。協力者はおそらく、私と李義殿下を本気で殺そうとしていますね。その理由が、玲莉を手に入れるためなのか、ただ単に、私たちが目障りなのかはわかりませんが。わざわざ、建明殿下の計画を実行したのは建明殿下を駒として利用するためでしょう」
「その通りです。私の弱みを握り父上に逆らえないようにし、父上の駒として使うためです。父上はこうも言っていました。何としてでも玲莉を手に入れて・・・謀反を起こすと」
「謀反だと!」
王浩は思わず声を荒げてしまった。
李義はある程度予想をしていたのか、冷静な表情で頷きがら、何か考えているようだった。
劉翔宇も目をつむったまま、黙って聞いていた。
勇毅と逸翰は建明をまだ疑いながらも、謀反という言葉に胸騒ぎがしていた。
「悪い芽は早めに摘まなければなりませんね」
李義は何か思いついたのか、鼻で笑いながら、口角が少し上がり笑みをこぼしていた。
「善は急げです。今から、皆で北誠王府に乗り込みましょうか?」
「えっ・・・?今からですか?」
建明は驚いた顔で、戸惑っていた。
劉翔宇は大笑いしながら、李義の意見に同意していた。
「そうですね。早く手を打たないと、私と李義殿下はずっと命を狙われることになりますので」
李義は真剣な表情になり、建明にこれから起こる最悪の結末について話した。
「建明、もし北誠王が抵抗して、私たちに斬りかかってきた場合、私はあなたの父を殺すことになります。父上にも今まで話したこと全てを話さなければなりません。少なからず何かしらの罰があるはずです。玲莉との婚姻も解消になるでしょう。私たちに話した時点である程度覚悟はしていたとは思いますが」
建明は拳を強く握り締めながら、皆に向かって涙を堪えながら、優しく微笑んだ。
「はい、覚悟はしております。玲莉とのことも・・・私は一度は悪い考えを持ってしまいました。玲莉を悲しませるようなことを行おうとしたことは事実です。どんな罰でも受け入れます。しかし、それよりもまずは父上を止めてください。私は自分の過ちが知られるのを恐れるあまり父上を止めることができませんでした」
建明は膝の前に両手をつき、深々と頭を下げ、
「皇太子殿下、翔宇殿下、王丞相、勇毅、逸翰。どうか父を捕らえてください」
そう懇願した。
皆は顔を見合わせながら、頷いていた。
「では、皆さん。今から北誠王府に向かいましょう」
李義の掛け声と同時に皆立ち上がり、李義を先頭に部屋を出て行った。
「・・・どうしますか?」
「はぁ・・・建明は全部話したのか。思ったより早かったな。北誠王にはすぐに屋敷を出て身を隠すよう伝えろ」
「御意」
李義たちは気づいていなかった。全ての行動が筒抜けだったことを。




