十五、楽しくなるはずだった女子会
男たちが円卓会議をしている頃、女たちも集まり、玲莉を中心に盛り上がっていた。
(まるで女子会だな・・・)
玲莉はそう思いながら、楽しく会話していた。
「玲莉、建明殿下、皇太子殿下、翔宇殿下。三人と一緒に住んでいたのでしょう?何か進展はなかったの?」
嬌は玲莉と三人の皇子たちの関係を面白がっているようだった。
「義姉上、それどころじゃありませんでしたよ。さらわれるし、崖から落ちるし、目を覚ましたら、知らない集落にいましたし・・・それに・・・春静の顔に傷ができてしまいました」
嬌は春静に気まずそうに謝っていた。
「でも玲莉ならこれくらいの傷治せるのでしょう?なぜ、春静の顔に傷跡が残ったままなの?」
玲莉は蘭玲の問いかけに頷きながら、蘭玲と嬌に訴えるように言った。
「姉上たち、私は顔の傷を治すと言ったのです。それなのに、春静は拒否するのですよ。『お嬢様を危険にさせた戒めです』とか言って。私は無事だったからいいじゃないと言っても、頑なに拒否するのです」
春静はふんと鼻息を荒げ、拒否する姿勢を見せていた。
「あーなるほど」
蘭玲と嬌は顔を見合わせ納得していた。春静の性格からして、説得は無理だろうと二人は思っていた。
春静は玲莉に対する忠誠心が強く、こうと決めたら曲げない性格だ。
春静は自分が人質になったため、玲莉を危険な目に合わせたと思っている。
絶対に顔の傷を治そうとはしないだろう。
「玲莉、春静はあなたに顔の傷で誓いを立てているのよ。二度とあなたを危険な目に合わせないって。春静の好きにしてあげなさい」
「でも・・・」
玲莉は納得できなかったが、しぶしぶ嬌の言葉に同意した。
その様子を優しく見守っていた思敏は玲莉が胸元に何か隠しているのが見えた。
「玲莉、その書物は何?」
玲莉は思い出したかのように、胸元に隠してあった書物を皆に見せた。
「聖女伝?玲莉、その書物をどうして持っているの?」
「母上、これはいただいた物なのですよ」
玲莉は思敏に聖女伝を渡した。長い年月が経っているようだが、大事にされてきたのだろう。文字の一つ一つははっきり読むことができる。
蘭玲と嬌も思敏の横から覗いて見ていた。
「私を助けてくれた人が持っていました。その人の目の前で無意識に力を使ってしまいまして・・・でも、その人は聖女の存在を知っていたのです。聖女の私が持っていたほうかいいと言ってくれたのです。名前は唐景天さんという方です」
「景・・・天・・・?」
思敏はその名を聞いたことがあるような気がした。遠い目をしながら、必死に記憶を呼び起こしているようだった。
「玲莉、その人の年齢はわかるかしら?」
「たしか・・・二十ぐらいだったと思います」
思敏は再び遠くを見つめていた。
「母上、景天さんをご存じなのですか?」
「昔に聞いたことがある気がしてね。思い出そうとしているのだけど・・・」
思敏は突然目を見開き、動揺しはじめた。
蘭玲、嬌も明らかに動揺しはじめた思敏を心配した。
「母上、どうしたのですか?何か思い出したのですか?」
「ごめんなさい。何でもないわ。聖女伝に出てくる聖女様がすごく立派な方が多くて、感動しただけだから」
玲莉は母の様子がおかしいなと思いつつも、思敏が開いたページの聖女様の話を読んでいた。
蘭玲と嬌はお互いに目を合わせながら、思敏が何か隠していることを悟った。しかし、隠すには理由があると考え、それ以上二人とも思敏を問い詰めることはなかった。
(景天は若㬢の子の名と同じだわ・・・若㬢は未だに行方不明のはず・・・もしかして生きているの?)
「玲莉、景天に母親はいたのかしら?」
「はい、いましたよ」
思敏は先程までの思い悩んでいる表情から晴れやかになっていた。
「でも、実の母親ではないそうです」
「あぁ・・・そうなの・・・」
思敏の表情は再び曇っていた。




