十三、円卓会議
食事を済ました後、男たちは王家の客間に集まり、玲莉について話しあっていた。皆の顔が見えるよう、円になり、胡坐をかいて座っていた。
「私としては王家にとどまるほうが危険だと考えています。実は私の隠れ家に人との関りが全くない場所があります。周りには敵が隠れる隙さえありません。その場所は私と黄飛以外は知りません。もちろん、魏の国にあります」
「翔宇殿下、一体あなたはこの国に何カ所隠れ家を用意しているのですか?この国を乗っ取る気ですか?」
李義は本当にこの国を攻めとるのではないかと疑っていた。
「いえ、これには理由がありまして・・・」
劉翔宇は一斉に疑念の視線を集めていた。
劉翔宇は大きなため息をつき、観念して正直に話しはじめた。
「私は父上から魏の令嬢と婚姻するよう命じられて、魏に来ました。しかし、私は想い人がいまして、婚姻する気など毛頭ありませんでした。ですので、いざとなったら、父上から隠れられるよう、事前に魏の各所に隠れ家を用意していました。ただ、それだけです」
まさかの理由に皆笑ってしまいそうになっていた。
「しかし、想い人がいるのになぜ玲莉と婚姻すると言い出したのですか?」
「その、詳しくは話せませんが、想い人が玲莉なのです」
王浩は不思議そうな顔をしながら、考えていた。
勇毅と逸翰も玲莉と劉翔宇との間に何か接点があったか記憶をたどっていた。
三人とも劉翔宇と玲莉との関係が結びつかなかった。
(そういえば、初めて玲莉と会った時も初対面ではないような感じがしたな。玲莉は覚えてないと言ってはいたが・・・秀英?だったか。なぜ玲莉に向かって言ったのだ?なぜ玲莉はその名に反応したのだ?もしかして過去に秀英という人物が玲莉と何か関係があるのか?)
(この前、劉翔宇がつぶやいていた秀英という人物が本当の想い人なのだろう。しかし、玲莉と一体何の関係があるのだ?)
建明と李義はそれぞれ劉翔宇が口にした”秀英”という名の人物が引っかかっていた。
「父上、私は反対です。婚姻前の玲莉を男のいる家に住ませるなど、何をされるかわかりません。もし、玲莉が翔宇殿下のところに行くならば私も行きます」
逸翰は劉翔宇を威嚇するように睨みつけていた。
勇毅は逸翰が暴走しないように落ち着けと声をかけていた。
王浩が科挙はどうするのだと逸翰に問いかけると、玲莉のためなら先延ばしにすると答えた。
「逸翰さん、気持ちはわかりますが、玲莉は聖女なのです。今は玲莉が聖女ということは知られていませんが、万が一周りの国に知られた場合、玲莉はどの国にとっても喉から手が出るほど手に入れたい存在なのです。王家に玲莉がいると、玲莉だけでなく、周りの人にも危害が及びます。敵はどんな手を使ってでも玲莉を奪いにきます。これからいう言葉に気を悪くされないでくださいね。つまり、玲莉さえ手に入れさえすれば、他が生きてようが死んでようが構わないのです」
案の定、逸翰が感情的になりそうだったが、勇毅が窘めた。
「玲莉を王家にとどまらせるのが危険だと言っているのはそのためです。玲莉にこのことを話すとおそらく、私についていくでしょう。玲莉は家族を大事に思っています。もし、王家にとどまって、敵の襲来を受け、自分のせいで皆の命が危険にさらされたことを知ると玲莉は居た堪れないでしょう。正直なところ、玲莉と一緒にいたいという気持ちもありますが、玲莉を守るのと同じくらいに玲莉が大事にしている家族の皆様を守ることも大事だと思っています」
まさか、楚の皇太子が玲莉のためとはいえ、魏の丞相の家族の命まで心配しているとは思ってもいなかったので、王家の者は感銘を受けていた。
静まり返った中、王浩が劉翔宇に頭を下げ告げた。
「翔宇殿下、玲莉をよろしくお願いいたします」
「おまかせください」
劉翔宇は笑みを浮かべながら、王浩に頭を下げた。
李義と建明も劉翔宇はいいことは言っていたが、さすがに一人だと何するかわからないと思い同行することを伝えた。
「李義殿下はついてきて構いませんが・・・建明殿下。あなたは王家の皆様に話すべきことがあるのではないのでしょうか?」
劉翔宇は微笑みながら、建明を見ていた。
建明が見た劉翔宇の笑顔は非常に恐ろしく感じた。動揺をしていることが知られないよう必死に抑えていた。
「な・・・何のことでしょうか?翔宇殿下」
劉翔宇は全てを見抜いているかのように自信に満ちた顔で建明を見ていた。




