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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第二章 三人の皇子との同居生活

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十、建明の苦悩と親娘の再会

玲莉(リンリー)(タン)家を出るとすぐに笠を被せられた。笠の周りにはレースのような布が覆っており、顔が見えないようになっていた。

「外出するときは必ずこれを被れ」

玲莉はお礼を言って、劉翔宇(リウシャンユー)の顔を見上げると、笑顔で玲莉を見ていた。しかし、その笑顔は明らかに優しい微笑みではなく、浮気した配偶者を問い詰める時のような恐怖の笑顔だった。

(絶対この後、景天(ジンティエン)さんと何があったのか聞かれる。正直に話せばいいのよ、玲莉。本当に何もなかったのだから。何でそんなに焦っているの。翔宇殿下は許嫁でも恋人でも何でもないのよ)

(ワン)丞相と李義(リーイー)殿下も玲莉を捜している。王丞相が連れてきた者に玲莉が無事だったことを二人に伝えるよう言ってある。合流場所の馬車に行くぞ」

「あの建明(ジェンミン)殿下は?」

「さぁ、わからない。後宮へ戻ると言っていたが、なぜ後宮に戻ると言ったのか・・・。あの隠れ家を出て行った以来、会っていないからな」

「そうですか・・・」

玲莉はたしかに劉翔宇の言う通りだと思った。

(たしかに後宮に何しに行こうとしていたのだろう。翔宇殿下が建明殿下に気をつけろって言ったのは建明殿下の行動に疑問に思ったからなの?だめよ、玲莉。建明殿下は私の許嫁なのよ。何か理由があったにちがいない)

玲莉は劉翔宇に手を引っ張られながら、建明のことを信じようと決意していた。




「なぜ、お前は黙っていた!知っていたのだろう!」

黒風(ヘイフォン)は建明に殴られながら、謝っていた。

「申し訳ございません。殿下、あの日私は・・・」

建明は黒風から衝撃の事実を聞かされ、黒風を地面に投げつけ、呆然と立ち尽くしていた。

「私はずっと玲莉の事だけを想っていた。私は玲莉を愛している。玲莉のためなら何でもする。玲莉はただ私のそばにいてくれればそれだけで幸せなんだ。なのに・・・これでは、父上の操り人形ではないか!ただ、純粋に玲莉を愛したいだけなのに・・・」

建明は地面に膝をつき、何度も地面を殴った。建明は地面に血がつくほどの出血をしていたが、痛みさえ感じないほど、怒りがこみ上げていた。

(全て私が悪いのだ。私にできることは父上から玲莉を守ることだけだ)

建明は何かを決意したように立ち上がった。

「黒風、玲莉の居場所を調べろ。翔宇殿下と皇太子殿下が玲莉を見つけていたら、また別の隠れ家に移動するはずだ。絶対に父上には悟られるな」

黒風は痛々しい建明の姿に涙を浮かべながら、建明のもとを離れた。

(父上の思い通りには絶対にさせない・・・)

建明の力強く握りしめた右手の拳からは血がしたたり落ちていた。




「もう笠を被らなくても大丈夫だ・・・で、玲莉お嬢様。唐景天と何があったのか詳しく聞かせてもらえますか?」

馬車に乗り込んだ玲莉は景天とのことで劉翔宇から問い詰められていた。

「だから、本当に何もなかったです。私が床に頭を打ちそうになったところを助けてもらったところを唐環(タンファン)さんに見られたのです。むしろ、景天さんには感謝しないといけないくらいですよ」

(多少事実は違うけど嘘はついていない。しかし、甘い顔の笑顔で問い詰められるのが一番怖い)

劉翔宇は一応納得はしているようだったが、まだすっきりしていない様子だった。

「で、どれくらい接近したんだ?」

劉翔宇は玲莉との距離を詰めながら、これぐらいか?と問いかけていた。

玲莉は両手で劉翔宇が接近しないように止めようとしたが、両手をつかまれ、抵抗できなかった。

劉翔宇はもう少しで唇が触れそうな距離まで顔を近づけていた。

「唐景天はよく我慢したな。男なら誰でも玲莉の美しく愛らしい顔が目の前にあったら、我慢できなくなるはずだがな」

劉翔宇がそう言って、玲莉の唇を奪おうとした時だった。

「玲莉!」

息を切らしながら現れたのは、李義だった。

李義は劉翔宇が玲莉に何をしようとしているのか瞬時に悟り、玲莉の腰に手を回し、自分に引き寄せた。

劉翔宇は舌打ちをしながらも、笑顔で李義を出迎えた。

「油断も隙もありませんね。しかし、玲莉が見つかったことを報告してくれたことには感謝します」

「事が済んでから報告すればよかったです。私としたことが」

二人とも笑顔で話していたが、玲莉から見ると恐ろしい笑顔だった。

「玲莉、よかった。無事だったか」

馬から降りて馬車に駆け寄ってきたのは、父王浩(ワンハオ)だった。

「父上ー」

玲莉は李義から離れ、王浩に飛びついた。

王浩は少し涙を浮かべながら、うれしそうに玲莉を抱きしめていた。

劉翔宇と李義は、王浩に会うことができ無邪気に笑う玲莉を見て、この笑顔を守りたいと同じことを考えていた。

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