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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第二章 三人の皇子との同居生活

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八、思わぬ急接近

「俺がこの聖女伝を持っているということは、俺の実の親は聖女に関係する人物だと思っている。だから、玲莉(リンリー)が聖女だとしたら何か知っているのかもしれないと思い、聖女なのかと尋ねたんだ。何か心当たりはないのか?」

王家には聖女ゆかりの品は何もなかった。父の王浩(ワンハオ)も聖女の存在すら知らなかったほどだ。おそらく、王家の者で聖女につながる者はいないだろうと玲莉は考えていた。

玲莉は申し訳なさそうに首を横に振った。

「聖女は百年に一度、現れるそうなので、私の前の聖女様は百年前に生まれた方です。その方の子孫がいるとして考えられるのは聖女様の玄孫が景天(ジンティエン)さんの両親ぐらいの年齢になるかと。私の周りには心当たりのあるその年齢の方はいません」

「そうか・・・」

景天は肩を落としながら、聖女伝を見つめていた。

「景天さんは両親に会いたいのですか?」

景天は鼻で笑いながら、首を振って否定した。

「どんな事情があるかは知らないが、俺を捨てたことには間違いない。俺の親は母さんだけで十分だ。気にするな。気まぐれで聞いただけだ」

そうは言っていたが、景天はどこか寂しげな顔をしていた。

(口では気にしていないって言っているけど、本当はものすごく気になっているんでしょうね。素直じゃないな。といっても私も過去の聖女に関しては何も知らないし・・・陛下なら知っているのかな。皇太子殿下に会ったら聞いてみよう。そういえば、殿下たちは今何をしているのだろう。私を捜してくれているのかな)

玲莉がそんなことを考えていたら、玲莉の手には聖女伝が置かれていた。

玲莉は思わず受け取ってしまったが、驚いた顔で景天を見た。

「俺が持っているより、玲莉が持っていたほうがいいだろう」

「でも景天さんの両親を捜す手がかりなのでは・・・」

「いいんだ。玲莉は聖女なんだから。お前が持っているほうががふさわしいだろ」

景天はそういうと玲莉に向かって微笑んだ。

玲莉はお礼を言って受け取った。

(もしかしたら他にも使える力があるかもしれない。過去の聖女様たちから学ぼう。もしかしたら私がこの世界に転生した理由もわかるかも)

玲莉は早速聖女伝を開き、黙読していた。

視線を感じ、書物から目線を上にあげると景天と目があった。

目があってからも景天は視線を逸らすことなく、玲莉をじっと見つめていた。

「何か私の顔についていますか・・・?」

玲莉が尋ねると、少し頬を赤く染めながら景天が答えた。

「いや、本当に綺麗な瞳だなと思って。吸い込まれるように思わず見てしまうんだよ。もう少し近くで見ていいか?」

玲莉は少し戸惑ったが、いいですよと言って頷いた。

景天の顔が一気に近づき、玲莉も緊張した。

あまりにも近いので景天から顔を離そうとした瞬間、バランスを崩してしまった。

床に頭を打ち付けそうになり、思わず目をつむった。

(あれ?痛くない)

玲莉がゆっくり目を開けると、景天が右手で玲莉の頭を支え、左手は床についていた。

少しでも動くと唇が触れそうな距離だった。

景天はゆっくりと玲莉の頭を床に下ろした。

玲莉は視線を逸らしながらお礼を言ったが、景天は右手も床につき、起き上がろうとしなかった。

(えっ?今どういう状況なの?なぜ、床ドンされてるの?)

「玲莉、年はいくつだ」

玲莉はなぜそんな質問を?と思いながらも、

「十五です・・」

と答えた。

「まだ、十五なのか・・・」

その時だった。

「景天、今日は卵と野菜たっぷり麵だよ。そちらのお嬢さんも一緒に・・・」

唐環(タンファン)から見ると、景天が玲莉を押し倒しているようにしか見えなかった。

「あら、邪魔したわね、景天。ここに置いておくから、後から食べなさい。ではごゆっくり」

「違うんだ!母さ・・・」

唐環は景天の言葉は全く聞こえなかったようで、鼻歌を歌いながら、去って行った。

景天と玲莉の間に気まずい雰囲気が流れていた。

玲莉は景天の差し伸べた手を取り、起き上がった。

「その・・・すまなかった。母さんには後で誤解だと説明するから」

玲莉は恥ずかしさで景天と目を合わせることができず、目線を下に落としながら、頷いた。

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