二十五、同棲?生活
玲莉は劉翔宇の目の前で聖女の力を使ったため、王家襲撃の出来事、自分がどんな力を使うことができるか話すしかなかった。しかしなぜか、劉翔宇にだったら話しても大丈夫だという安心感があった。
「私の力は増しているようです。今までは誰かの傷を癒すことだけしかできませんでした。しかし、今回、翔宇殿下が殺されると思った時、心の奥底から力が湧いてきました。でも、たとえ敵とはいえ、殺したくはなかったので、私たちに対して抱いていた敵愾心を記憶から消し、眠ってもらいました。おそらく、起きた時には私たちに会ったことしか覚えていないと思います。この力は私が思う通りに使えるようです。私は・・・聖女なのです」
(あの夢の王玲莉は本当に私の心の中にいたのね。あの時も、王玲莉が助けてくれた。)
玲莉の目の前では劉翔宇が剣で一突きされ、血飛沫が舞っていた。
なぜか劉翔宇と二度と会えなくなることが玲莉には耐えられなかった。
劉翔宇を助けたいと思った時、心の中で王玲莉の声が聞こえた。
(大丈夫。あなたは劉翔宇を助けることができるわ)
秀英が心の中の王玲莉の声を聞くと、体の奥底に不思議な力を感じた。
(翔宇殿下を助けるのと同時に、私の力を見た記憶も消さないと)
目の前で刺されそうな劉翔宇を見て、思わず叫んだ。
「翔宇ー!」
玲莉の目の前には自分の思い描いていた結末が広がっていた。
劉翔宇はただ黙って玲莉の話を最後まで聞いていた。
(魏の皇帝も玲莉が聖女であることは知っているはずだ。となると玲莉と俺の婚姻を邪魔してくるだろう。まさか、今回の差し金は皇帝か?いや、玲莉が聖女となると他の者も狙っているはず。秀英が俺を思いだしてくれれば、すぐにでも楚の連れて行けるのだが、この様子では時間がかかりそうだな・・・)
劉翔宇は玲莉を見ながら、いろいろ考えていたが、ふと、あることに気づいた。
「玲莉、瞳の色が・・・」
玲莉は劉翔宇から鏡を借りて、自分の姿を見た。
「瞳が赤色・・・」
玲莉の瞳は血のように真っ赤になったままだった。
(今までは聖女の力を使う時だけだったのに。もしかして、力が使えるようになったからなの?この時代にカラコンなんてないし、隠せないじゃない)
玲莉はこの瞳をどう隠すべきか必死に考えていた。
「玲莉、そこまで悩む必要はないよ。このままここに私と一緒に住めばいい」
「えっ?」
玲莉は急に何を言っているんだこの人はと思いながら、眉間にしわを寄せ、劉翔宇を見ていた。
しかし、劉翔宇は本気で言っているようだった。
「婚姻をしていない男女が共に住むのはいけませんよ。父上が許すはずがないです」
「私はこのまま黙っていようと思ってるが」
「翔宇殿下、私は何も言わずに家を出てきたのですよ。今頃は大騒ぎになっていますよ。早く帰らないと父上と母上が心配しています」
玲莉が部屋から出ようとして、戸を開けると、そこにはいかにも強うそうな護衛たちが玲莉の行先を塞いでいた。
玲莉が劉翔宇を見ると、満面の笑みで玲莉を見ていた。
「玲莉、君は私から離れられませんよ。一年間、私の全てを知ってもらうためには同居が一番です。それに、その瞳を人前にさらすわけにはいけない。ということで、玲莉にはここに住んでもらう」
(マジか・・・まさかこの人最初からこうするつもりだったのか。さすが、腹黒皇子)
「殿下、上手くいきましたか?」
劉翔宇は黄飛を睨みつけ、余計なことを話すなと言いながら、追い出していた。
(今頃、父上、母上は心配しているだろうな。どうか見つけてください)
玲莉は祈るポーズをして、天を仰いでいた。
劉翔宇と一緒に住みだして三日経ったが、いまだに二人の居場所は知られていないようだった。
玲莉は毎朝鏡を見ていたが、瞳の色が元に戻ることはなかった。
(春静もいないし、なぜか翔宇殿下の身の回りのお世話をさせられるし。寝室が別なのだけは幸いだ。さすがに翔宇殿下も私に手を出してこないから、そこはよかったな。でも私、一年間本当にここでずっと暮らさないといけないの?)
玲莉は大きなため息をついた。
いきなり戸が開いたかと思ったら、劉翔宇の手には、様々な種類の菓子を持っていた。
それを玲莉の目の前に置き、椅子に座った。
「玲莉が好きなものを買ってきた。一緒に食べよう」
(どれもこれも私の好きなものばかりだ。そういえば、翔宇殿下に聞かないといけないことがあった)
玲莉は菓子を食べる前にあることを尋ねた。
「翔宇殿下はなぜ私のことを秀英と呼んだのですか?」
劉翔宇は口に入れようとしていた菓子を机に置き、しばらく何か考えていた。
翔宇は前の世界での高翔宇と楊秀英としての関係を全て話そうと思ったが、秀英が翔宇のことを覚えていない今、話したところで、秀英の態度は変わらないだろうと結論付けた。
「私には前世の記憶はあるのだ。前世では君とそっくりな秀英という子がいたんだ。だから、思わず君のことを秀英と呼んでしまった」
「その秀英という子とはどんな関係ですか?」
「秀英とは夫婦だったんだ。子供は三人いて、毎日幸せだったよ」
(私ではないよね。絶対私ではないはず。子供どころかそういう関係になった人はいなかったはずだから)
劉翔宇は前の世界で描いていた妄想を話して、恥ずかしくなった。
(俺は何妄想話をしているんだ。今話しているのは俺の願望ではないか)
劉翔宇は恥ずかしさを紛らわすため、自分が食べようとしていた菓子を取り、玲莉の口に近づけた。
「あーん」
玲莉は思わず、あーんと口を開けてしまった。
その時だった。
外から騒がしい声が聞こえてきた。
「玲莉ー!玲莉ー!」
明らかに聞き覚えのある声だった。
「もうここが気づかれてしまったか。せっかく、これから玲莉との甘い同棲生活を送ろうとしていたのに」
「え゛っ?」
玲莉は冷めた視線で劉翔宇を見ていた。




