表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第一章 三人の皇子との出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/153

二十四、声の正体

劉翔宇(リウシャンユー)は目が覚めると、そばには寝台に寄りかかって寝ている玲莉(リンリー)の姿があった。

(馬車に乗ったところまでは覚えているが、それ以降のこと覚えていないな)

「殿下、目が覚めましたか。心配しましたよ。いきなり馬車の中で気を失ったのですよ」

黄飛(ホアンフェイ)が劉翔宇を見てほっとした様子で近づいてきた。

黄飛の話では馬車に乗ってすぐ気を失ったという。玲莉に押し倒すように意識を失っていたため、黄飛が玲莉から引き離し、寝かせ、馬車からも二人で協力しながら、寝かせたという。

「玲莉お嬢様にも寝るよう促したのですが、殿下のそばにいると言われましたので。殿下、良かったですね」

劉翔宇は照れながら、黄飛に下がるよう命じた。

黄飛はにやにやしながら部屋を出て行った。

(どうやら玲莉は元の姿に戻ったようだな。しかし、あの力は一体何だ。傷もなくなっている。襲ってきた男たちも急に眠っていた)

元の黒髪姿に戻った玲莉の寝顔を見て、目の前にいる玲莉が、必死に捜してきた秀英(シューイン)なのだろうかと考えながら、頭を優しくなでていた。




秀英は夢を見ていた。

秀英が目を開けると、何もない一面真っ白な世界が広がっていた。

「ここはどこ?」

秀英が辺りを見渡しながら、一歩ずつ歩いていた。

すると、少女の声が聞こえてきた。

楊秀英(ヤンシューイン)、ごめんね)

「誰?」

(私は王玲莉(ワンリンリー)。本当の私よ。ここはあなたと私の心の中。私はあなたの中で眠っているの)

秀英が自分の胸に手を当てると温かさを感じた。

秀英は今しかないと思い、疑問に思っていることを尋ねた。

「なぜ、私はあなたの体に転生したの?」

(私にもわからない。私は聖女という立場から逃れたかったの。私はずっとそう願っていた。ある時、私はあなたの魂を感じたの。私にそこまでの力があるのかわからなかったけど、試してみたわ。あなたの魂を私の体に押し込んだわ。気づいたら私はあなたの心の中に楊秀英は王玲莉になっていたわ。あなたの意志を確認しないで、あなたに聖女を押し付けて申し訳なく思っているわ。その代わり、助けが必要な時は私が助けになるわ)

秀英は王玲莉に文句でも言おうとしたが、王玲莉は秀英に最後に一言だけ告げ消えていった。

(劉翔宇は私があなたのために今の世界に連れてきたの。劉翔宇はあなたのことを愛しているわ。その気持ちに応えてあげて。本当の名は高翔宇(ガオシャンユー)よ)

本物の王玲莉の声は遠ざかっていった。

「高・・・翔宇?」




「高・・・翔宇」

玲莉が前の世界での自分の名前を呼んだため、劉翔宇は驚いていた。

玲莉が目を覚ますと目の前には驚いた表情の劉翔宇がいた。

「おはようございます。翔宇殿下。その・・・昨日は驚かせてしまいました。私が翔宇殿下に何をしたのか覚えておられますよね・・・」

玲莉は劉翔宇に問いかけたが、聞いていないようだった。

「どうしたのですか?そんな驚いた顔をして」

劉翔宇は玲莉の両肩に手を置き、真剣な表情で尋ねた。

「高翔宇という名前を知っているのか?」

玲莉は思わず肯定しそうになったが、そうすると夢の話をしないといけなくなるし、きっと信じてもらえないだろうと考え、知りませんと答えてしまった。

(それに気持ちに応えてあげてって、つまり、翔宇殿下を好きになってということだよね。そこまではまだちょっと・・・)

心の中の王玲莉に言われた言葉が頭から離れず、少しだけ劉翔宇のことを意識する秀英だった。




王家では玲莉がさらわれたと大事件になっていた。

王浩(ワンハオ)も娘の一大事のため、王家で指揮をとっていた。

李義(リーイー)建明(ジェンミン)も玲莉のことを聞きつけ、王家を訪ねていた。

「王丞相、玲莉がさらわれたとは本当ですか?」

「皇太子殿下、建明殿下、わざわざ足を運んでいただきありがとうございます。はい、その通りです。昨日、皇太子殿下に送ってもらって帰って来たあと、玲莉は疲れたと言って早く床に就いたそうです。そして、今朝、春静(チュンジン)が玲莉を起こしにいくと、姿を消していたそうです」

建明はくそっと言いながら、苛ついている様子だった。

(たしか昨日、玲莉が劉翔宇に明日会うと思わず言ってしまったと言っていたな)

李義は昨日の出来事を冷静に思い起こしていた。

「王丞相、玲莉は劉翔宇と一緒にいるかもしれません」

「劉翔宇?」


そこへ一人の護衛が王浩のもとへ走ってきた。

「旦那様、報告です。玲莉お嬢様を捜索していたところ、ある場所で二十人を超える男たちが倒れていました。どうやら皆眠らされていたようで、事情を聞いたのですが、何も覚えていないと。ただ、劉翔宇と玲莉お嬢様に会ったことだけは覚えていました。玲莉お嬢様は楚の皇太子劉翔宇と一緒にいるようです」

「劉翔宇、娘に何かしたら、たとえ楚の皇太子だろうが許さないぞ」

王浩は怒りに燃えていた。

(劉翔宇が玲莉になぜ固執するのだ。玲莉が聖女であることも知らないはずだ。そういえば、あの時、劉翔宇は玲莉のことを秀英と呼んでいたな。玲莉もその名前に反応していた。劉翔宇と玲莉には私の知らない接点があるはずだ。もしかしたら、それによって玲莉が劉翔宇に取られてしまうかもしれない)

「王丞相、秀英という名に心当たりはありませんか?」

王浩は建明の問いかけに、全く聞いたことがないと首を横に振った。

「王丞相、玲莉が劉翔宇と一緒にいるならば、劉翔宇は隠れ家を用意しているはずです。まずは、その場所を捜しましょう。あと・・・」

李義は小声で早く玲莉を見つけないと玲莉が聖女であることを気づかれてしまう可能性が高まることを伝えた。

王浩は李義の意見を聞き入れ、早速隠れ家になりそうな場所を捜すことにした。

(もし劉翔宇が玲莉に何かしたら、二度とこの国に来れないようにしてやる)

李義は劉翔宇に対し、嫉妬の炎を燃やしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ