九、皇帝王浩の誕生
「はっ・・・王浩、お前が匿っていたのか。藩弘と鐘峰峻の話は嘘ではなかったということか」
「その通りです」
「ふんっ、いくらお前たちが強くても朕の暗軍に勝てると思っているのか?誰か!!」
皇帝李叡の呼びかけに誰一人答えることはなかった。
「おいっ、誰か!!・・・なぜ誰も来ないのだ!」
孟景天は滑稽な皇帝な姿に大笑いしていた。
「まだ気づかないのですか?あなたの味方は誰一人いないということに」
「貴様ら・・・朕の暗軍も・・・」
「えぇ、とっくに王丞相の軍になっていますよ。そうでした。藩弘と鐘峰峻だけは責めないであげてくださいね。最後まであなたの味方をしていたのはこの二人だけでしたので」
「若様!」
羅洋と譚子安が藩弘と鐘峰峻を引きずりながら現れた。
羅洋と譚子安は二人を孟景天の目の前に投げ飛ばした。
「孟景天?やはり王丞相が匿っていたのですね」
藩弘と鐘峰峻は王浩を責めようとして、立ち上がろうとしたが、羅洋と譚子安に足を蹴られ、そのまま跪くように倒れた。
「孟景天・・・貴様は朕を殺しに来たのか?」
皇帝李叡は半ばあきらめたような口調で孟景天に尋ねた。
「いいえ・・・本当は私の手で殺したいですよ。あなたは私の父を殺し、母を辱めた男ですから」
「では朕をどうするのだ?」
「んー、皇太子殿下、まだでしょうか?」
「もう少しだと思います」
「何の話をしている?」
皇帝李叡は段々と身体の感覚が失われていくのを感じた。
(何だ・・・身体の自由がきかなくなっている)
皇帝李叡は座ることも困難になり、そのまま寝台に倒れた。
「孟景天、朕に何をした・・・」
「安心してください。死ぬことはありませんので。あなたを殺したがっている人がもう一人いましてね。あなたを殺めるのはその方が適任でしょう」
皇帝李叡は自分を恨んでいるのが誰であるのか悟った。
「劉・・・若・・・㬢」
皇帝李叡はそのまま意識を失った。
「史宦官!」
孟景天の呼びかけで、史宦官は玉璽を持って現れた。史宦官はその玉璽を王浩へ渡した。
「皇帝陛下、万歳、万歳」
孟景天は王浩に向かって跪き、大声で叫んだ。孟景天に続き、その場にいた者が皆、王浩に向かって声を上げた。
長年、李一族によって乗っ取られていた皇帝の座に、王の名の者が再び名を連ねることとなった。
王浩が皇帝となり、魏の国の高官たちはふるいにかけられた。
藩弘と鐘峰峻は牢獄に入れられ、藩一族と鐘一族は共に流刑となった。二人に追随していた者たちも同じ刑が処された。
周思敏は皇后、勇毅は皇太子、逸翰は第二皇子、蘭玲は第一公主、玲莉が第二公主となった。
孟景天は丞相、王吉祥は将軍、李義は後宮の薬師となった。
「ところで景天、李叡はどうするのだ?」
「はい、陛下。母へのお土産にします」
(土産ね・・・恐ろしい男だ・・・敵にしたら終わりだな)
王浩は苦笑しながら、孟景天の意向を認めた。
「しかし、正体を明かしてよかったのか?」
「問題ありません。李叡がいない今、隠れる必要がありません。それに、私のことを皆知っています。殺しにかかっても相打ちされるくらいわかるでしょう」
「それもそうだな」
「それより、陛下。陛下はまずこの国の財政を見直す必要があります。その点は逸翰・・・いえ、逸翰殿下と考慮するのが賢明でしょう。玲莉奪還については私に任せてください」
「そうだな。よろしく頼む」
「御意」
皇帝になることへの不安を感じていた王浩だったが、心強い聡明な若者たちがいて、何とかやっていけそうな気がしていた。
「陛下ー!」
史宦官が息を切らしながら、慌ててやってきた。
「どうした?」
「陛下・・・また蘭玲公主が・・・」
「またか」
「弱すぎます。それでも父上の暗軍なのですか?」
蘭玲は自分より弱い暗軍を鍛えるため、王浩には内緒で暗軍を鍛えていた。
「蘭玲!」
蘭玲は咄嗟に逃げようとしたが、王浩に首根っこをつかまれた。
「何度言えばわかる。お前はもうこの国の公主なのだぞ」
「父上、私は父上のためを思って・・・」
「朕のことを思うなら、もう少し自重しろ」
「はい・・・父上」
残念そうな顔をしている蘭玲に、子供に甘い王浩はある条件を出した。
「わかった。暗軍を指導してよい。ただし、蘭玲は実戦は禁止だ。少しでも怪我をしたらやめさせるからな」
「ありがとうございます。父上」
娘の甘い自分に情けなく思いながらも、生き生きした表情をしている蘭玲の姿を見て、笑みがこぼれていた。




