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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第六章 三人の皇子と後継者争い

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九、前世で伝えたかった答え

劉翔宇(リウシャンユー)は机の上に持ってきた物を並べていた。

「これは桂花糕(グイファガオ)で、こっちは緑豆糕(ルゥードウガオ)。これは玲莉(リンリー)に似合うと思って買ってきた簪だ」

劉翔宇は玲莉の髪に簪を挿して、満足げに玲莉を見ていた。

玲莉が喜ぶと思っていたが、なぜか不満な顔をしていた。

「玲莉、気に入らなかったかい?」

「そうじゃなくて、私、聞いてないよ。二日後に、翔宇の兄上や妃に会うことになるなんて」

(あっ・・・すっかり忘れていた。玲莉が怒っていたから、機嫌を直すことしか考えていなかった)

劉翔宇は苦い表情をしており、明らかに玲莉に伝えるのを忘れているようだった。

劉翔宇は潔く玲莉に謝った。

「ごめん・・・玲莉があの事で怒っていたし、丞相府の件もあったから、言い忘れていた。まさかこんなことで・・・婚姻の話を取り消すとか言わないよな?」

玲莉はこれから起こるであろう後継者争いに関わりたくはなかったが、今、楚を出ると聖女の秘義を知ることができなくなる。

「・・・それは・・・今はないから安心して」

「・・・今は?」

劉翔宇は疑うように目を細めながら、一歩ずつ玲莉に近づいていった。

「ちょっと、翔宇。何しようとしているの・・・」

翔宇が近づくたびに玲莉も一歩ずつ後退りしていた。

玲莉は寝台のところまで来てしまい、そのまま倒れた。

春静(チュンジン)秋菊(チウジュ)は心配するどころか、にやついている口元を手で隠し、晩夏(ワンシャー)は玲莉を助けたかったが、劉翔宇を恐れるあまり助けられずにいた。

(私は侍女の選択を間違ったかしら・・・三人とも後で覚えていなさいよ)

劉翔宇は勢いよく玲莉の頭の両側に手をついた。

「これは身をもって玲莉に知ってもらう必要がありますね」

「ははは・・・何を?」

「それはもちろん私がどれほど玲莉を大切に想い、愛しているのかということをですよ」

「大切に想っているなら、こういうことはしないのでは?」

「・・・孟景天(マンジンティエン)と寝てないよな?」

「なっ、何で今、孟景天の名前が出てくるのよ」

「いいから正直に答えて」

(一度お酒に酔った勢いで、そうなりそうな時はあったけど、結局何もなかったし・・・あれは、ノーカウントよね)

「なぜすぐ答えない」

「・・・まだそこまでいってないわよ」

「その言い方だとその一歩手前まではいったということかな?」

玲莉は顔を赤く染めながら、劉翔宇から目を逸らした。

劉翔宇は無理やり玲莉の顎を押さえ、自分の方を向かせた。

玲莉の頬に一滴の雫が落ちてきた。

「翔宇・・・なぜ、泣いているの?」

劉翔宇は玲莉の顎から手を放し、必死に涙を堪えているようだった。

玲莉は劉翔宇の頬を伝う涙を優しく手で拭った。

劉翔宇はその手を取り、自分の頬に押し付けた。

「悔しかった・・・俺はとっくに君が秀英(シューイン)だということに気づいていたのに、秀英は俺を見ても他人を見るような目をしていた。おまけに孟景天とのキスまで見せつけられた。俺は・・・秀英に・・・もう一度秀英に会って、見守っていただけだった自分を奮い立たせ、劉翔宇として秀英を幸せにしたかったんだ。なのに・・・秀英は俺のことを思い出しても違う男のことを見ている。わかっている。秀英の心には孟景天しかいないことを。でも、嫌われたとしても秀英のそばにいたかった。この婚姻も何か考えがあって承諾したのだろう。でも、覚えておけ!俺はどんな手を使ってでも、次は絶対に離さない!だから・・・もう二度と・・・お願いだから・・・俺の前からいなくならないでくれ」

劉翔宇からの口づけは涙の味がした。

玲莉は心が押しつぶされ、劉翔宇を拒むことができなかった。

春静、秋菊、晩夏は空気を呼んで、部屋の外へ静かに出て行った。


劉翔宇が唇を離すと玲莉は起き上がり、劉翔宇を抱きしめた。

「ごめん・・・翔宇。ごめんなさい・・・」

心を打たれた玲莉ではあったが、やはり心の中には孟景天しかいなかった。

しかし、同時に劉翔宇に対し、罪悪感を抱いていた。

(あの時・・・前世で翔宇がプロポーズした時にはっきりと伝えておけばよかった。翔宇のことは兄のような存在でしかなかったと。いなくなって寂しいと思ったのは本当だけど・・・恋愛的な意味は全くなかったと・・・私は翔宇に対してどう償っていけばいいの・・・)

劉翔宇は玲莉が何に対して謝っているのかがわからなかった。

(秀英は他の男を好きになったことを謝っているのだろうか・・・それとも・・・)

劉翔宇は深く考えないようにした。

今、玲莉の目の前にいるのは、孟景天ではなく自分である。

このまま時を共に過ごせば、必ず自分を心から愛してくれると信じていた。

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