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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第五章 三人の皇子と楚に嫁ぐ姫

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二十四、皇太子と宮女の密会

劉翔宇(リウシャンユー)玲莉(リンリー)が丞相府に行った時から、ずっと落ち着かない様子だった。

「兄上、たった三日ですよ。今朝出発したばかりなのに、もう耐えられないのですか?」

「そうだ」

劉長寧(リウチャンニン)は劉翔宇の玲莉への執着の強さに少し引いていた。

(玲莉・・・兄上と婚姻したら苦労しそうだわ)

「兄上、あまり玲莉を束縛すると嫌われますよ。兄上が玲莉のことを大事に思っていることは玲莉にも伝わっているはずです。今の兄上、私が玲莉に抱きついても怒り狂いそうな顔していますよ」

「当たり前だ、玲莉に触れていいのは私だけだ」

「はぁ・・・父上に叱られるので、私は部屋に戻りますね」

劉長寧は劉翔宇に呆れながら、自分の部屋に戻っていった。

(父上に三日後、迎えに行くまで丞相府には行ってはいけないと言われているんだよな・・・玲莉は大丈夫だろうか・・・心配で玲莉以外何も考えられない)

劉翔宇は自分を落ち着かせるため、意味もなく皇宮内を歩き回っていた。劉翔宇が皇宮内を歩いているのは珍しく、宮女たちは劉翔宇に挨拶をし、微笑みかけていたが、一応返事をしていた劉翔宇だったが、宮女に一切目を合わせることなく、心ここにあらずだった。


一人の宮女がたくさんの衣服を抱えながら、歩いていた。劉翔宇はそれに気づかず、その宮女にぶつかってしまった。

「すまない、考え事をしていて」

劉翔宇は手を差し伸べ、宮女を立ち上がらせようとしたが、その顔を見て驚いた。

春静(チュンジン)!?」

「翔宇殿下!」

春静が周りを見渡すと、幸い誰にも見られていなかった。

春静は咄嗟に、劉翔宇の手を引っ張り、物陰に隠れた。


「春静、なぜ君がここにいる?」

「もちろん、玲莉お嬢様のそばにいるためです」

孟景天(マンジンティエン)の指示で送られてきたのではないのだろうか・・・)

劉翔宇は疑いの目で春静を見ていた。

「私はただ、玲莉お嬢様のそばにいたいだけなのです。私はこの顔の傷に誓いました。命を懸けて玲莉お嬢様をお守りすると。その誓いを破りたくないのです」

春静の目は一寸の曇りもなく、言っている言葉の全てが真実であることがわかった。

「翔宇殿下、今、お嬢様はどこにいるのですか?」

「今は丞相府にいる。玲莉がここに来たのも急だったから、今急いで玲莉の宮を用意している。三日間だけ丞相府で過ごすことになっている」

「そうですか・・・今、お嬢様は皇宮にいないのですか・・・」

春静は悲しい顔をし、ため息をついていた。

「玲莉が戻ってきたら、春静を玲莉の侍女にするよう、私が父上にお願いする。玲莉も春静がそばにいれば安心するだろう。言っておくが、春静のことを信じたわけではない・・・玲莉のためだ。春静、今、どこで働いている?」

「女官や宦官の衣服の洗濯係です。百何(バイホー)という女官が私の主です」

「百何?あぁ、あの女か。春静、魏の者だと知られたら、命はないぞ。私も玲莉のためにできることはするが、命までは保障できない。気をつけろ」

「お心遣いに感謝します。この命、玲莉お嬢様のためにささげています。お嬢様の以外の者のために死ぬつもりはありません」

劉翔宇は微笑みながら、頷いた。

「早くあの洗濯ものを洗わないと本当に殺されるぞ」

「あっ、失礼します」

春静は急いで落とした洗濯物を拾い、走っていった。


「何であの女が皇太子殿下と親しげなの?下賤な女め。思い知らせてやる」

春静と劉翔宇が内密な話をしているところを、百何に見られているとは二人は全く気付いていなかった。




小春(シャオチュン)、最近、あの女に何かしたの?小春ばかりいびられている気がするのだけれど」

「何もしていないはずです。あの人とまともに会話したこともないですよ」

(今日、玲莉お嬢様が戻ってくるはず。あと少し、このおばさんのいびりに耐えれば、お嬢様に会えるはず)

春静は百何のいびりに抵抗することもなく、押し付けられた洗濯物をひたすら洗っていた。

秋菊(チウジュ)姐さんは帰ってください。姐さんまで目を付けられますよ」

「小春、私はあなたの姉なのよ。困っている妹を助けない姉がどこにいるの」

「ありがとうございます。姐さん」

その様子を見ていた百何の怒りは頂点に達していた。

百何は秋菊の頬を思い切り叩いた。

「何をするのですか!」

「そんなにこの女と罰を受けたいなら、望みどおりにしてあげるわよ。小春、私が知らないとでも思ったの?あなたが皇太子殿下を誘惑しているところをこの目で見たのよ。あなたごときの女が皇太子殿下に近づけると思っているの?」

(あの場面を見られていたとは・・・)

「本当なの?小春」

春静は必死に否定した。

「私は皇太子殿下を誘惑などしていません。私は・・・」

(だめだ。お嬢様にお会いするまでお嬢様の侍女だとは言えない・・・)

「ほら、やましいことがあるから弁解できないのでしょう。誰か、この女を打ち殺して」

秋菊は春静の前に出て、春静を庇った。

「あなたに何の権限があるのですか?それこそ、もし無辜の者の命を奪ったら、あなたが罰せられますよ」

「私はあなたたちを管理する立場なの。それに私は本来は妃になるはずだったの。陛下は私のことを罰しないはずよ」

「そうだったのですか。ではなぜ今は洗濯係の女官なのですか?夜のおつとめが下手だったのですか?」

「誰か!この二人を打ち殺しなさい!」

「秋菊姐さんは関係ないです」

「打ち殺してみなさいよ!」

春静と秋菊は無理やり地面に跪かされ、棒で叩かれはじめた。

「秋菊姐さん・・・なぜ・・・」

「言った・・・でしょう・・・小春は・・・もう・・・私の・・・妹だって」

(玲莉お嬢様、ごめんなさい。約束、守れなさそうです)


春静と秋菊は限界に近づいていた。


「お前たち、何をしている!」

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