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転生聖女ー運命に抗う姫と三人の皇子ー  作者: 日昇
第四章 三人の皇子と後宮動乱

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十一、建明の逆襲

玲莉(リンリー)李義(リーイー)が戻ると、その場の空気は殺伐としており、一歩間違えれば、今すぐにでも殺し合いでも始まりそうな雰囲気だった。

玲莉は雰囲気にのまれないように、深呼吸をしつつ、劉翔宇(リウシャンユー)に駆け寄っていった。

「少し遅かったね」

「いやっ、そのっ、どこに置いたのか忘れていまして、探していていましたので・・・」

「玲莉、どうした?急に敬語になって」

「いえ、特に、その・・・えぇと・・・今の翔宇は威厳を感じたから」

玲莉は苦し紛れの言い訳をしつつ、玲莉は李義を見た。

李義は玲莉と目が合うと、すぐに反らし、気まずい空気を醸し出していた。

劉翔宇は二人の様子を見て、なんとなく何をしていたのか理解できた。

「まぁ、いいよ。あとでゆっくり聞かせてもらうから」

玲莉は苦笑いをしながら、聖女伝を劉翔宇に渡した。

劉翔宇は怖ろしいほど笑顔で玲莉から聖女伝を受け取っていた。

玲莉は劉翔宇の笑顔に恐怖を感じ、李義の後ろに隠れながら様子を見ていた。


「さて、劉若㬢(リウルオシー)。これをどうぞ受け取ってください。誤解しないでください。私はあなたの甥になります。貶めたいとかそういうわけではありません。ただ、知りたいのです。なぜ、自分の息子でない景天(ジンティエン)に聖女伝を託したのか。この聖女伝にはどんな秘密が隠されているのか」

劉若㬢は劉翔宇を殺しそうなほどの目つきで睨みながら、ゆっくりと立ち上がった。

「翔宇殿下・・・あなたは玲莉のことが好きなのですよね?」

「はい、もちろんです。この中の誰よりもずっと前から愛しています」

堂々と玲莉を見ながら、劉翔宇は一寸の曇りもない目で言い切っていた。

李義は鼻で笑いながら、後ろに隠れている玲莉をあえて抱き寄せていた。

「それならば、この聖女伝を受け取ることはできません。この場で受け取ると、翔宇殿下は後悔しますよ。それに、私は息子と息子が愛している娘を・・・失いたくありません」

「それはどういう意味ですか?」

劉翔宇は予想していた答えと違い、聖女伝と玲莉を交互に見ながら、混乱していた。

「それは聖女である玲莉にしか言うことはできません。私が皇后の息子に聖女伝を託したのは、この聖女伝、私、義、玲莉、そして水晶玉を結びつけないようにするためでした。でもまさか、二十年の時を経て、全てが揃うとは・・・私の考えが甘かったですね。三年前から嫌な予感はしていたのです」




李義が玲莉と初めて会った三年前、李義は珍しく上機嫌で母のもとを訪ねていた。

「義、どうしたの?あなたが笑みをこぼすなんて。何があったの?」

李義は母に言われ、いつもの冷酷な顔に戻しつつ、興味を持った少女について話した。

(ワン)丞相の娘ね。王丞相は陛下の側近で優秀な方よ。義が興味を持つくらいだから、素敵な子なのでしょうね」

(義が女子に興味を持つなんて・・・王玲莉・・・まさかね・・・)

劉若㬢は妙な胸騒ぎがしていた。




「翔宇殿下、玲莉を守りたいならば、その聖女伝を捨ててください。聖女なんてもう生まれない方がいいのです」

劉翔宇は聖女伝を捨てるべきかどうか迷っていた。劉若㬢の話を全て信じるとすると、玲莉は命を落とす可能性があることを理解していた。しかし、劉若㬢の話を全て信じることもできなかった。

沈黙の中、それをかき消すかのように荒々しい足音が聞こえてきた。


「玲莉は私のものだ!誰にも渡さない!」

そこに現れたのは冷離宮に連れて行かれたはずの建明(ジェンミン)だった。その手には水晶玉を持っていた。

「建明、何をしているのですか!」

李義は玲莉を守るように立ち、剣を抜いていた。

(まずいわ。ここに水晶玉がそろうと・・・)

劉若㬢は血相を変え、建明から水晶玉を奪おうとしていた。

建明は劉若㬢を振り払い、剣を抜いて脅した。

「この水晶玉は重要なんだろう?父上が言っていた。この水晶玉は玲莉とつながっているから、これを持っていれば大丈夫だと・・・あれ?父上と兄上は?」

建明は周りを見渡して、父と兄がいないことに気づいた。床の無数のおびただしい血の痕でようやく状況を理解した。

「なぜ、陛下に剣が向けられているのですか?陛下、父上と兄上は・・・もしかして殺されたのですか・・・?」

皇帝は建明を使って劉翔宇を貶めようと考え、急に被害者のような口ぶりで建明に訴えた。

「建明、劉翔宇は皆をだまして魏を乗っ取ろうとしている。今、劉翔宇を倒さないと玲莉が取られてしまうぞ。もし、劉翔宇を叩きのめしたら、玲莉とお前との婚姻を認めてやる。建明、義も劉翔宇の仲間だ。殺せ!」

袁馨(ユエンシン)はこれ以上皇帝が話さないよう、剣で脅した。

劉翔宇は声を出して笑いはじめた。

「建明、私は楚で剣王と言われているのですよ。私に勝てると思っているのですか?それに李義殿下も私に負けず劣らず強いはずです。あなた一人でどう勝つというのですか?」

建明は無言で下を向いていたため、諦めたかと思っていたが、建明の肩が激しく揺れていた。

急に笑い出し、建明の声が部屋中に響いていた。

「翔宇殿下は何もわかっていないですね。この水晶玉は玲莉とつながっているのです。玲莉を傷つけたくなかったら、玲莉を私に渡してください」

玲莉を渡そうとしない劉翔宇と李義に建明は苛ついていた。

「仕方がない。翔宇殿下もこれを見ていただければ、渡してくれますかね!」

そう言うと建明は水晶玉を思い切り床に叩きつけるのだった。

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