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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
シクラメン編
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8.シクラメン(3)

 画材をいくつか持って、入った時に来たシクラメンの花壇にやってきた。ディアンはまっすぐシクラメンを見つめて、どんなデッサンにするか考えていた。


「お前がそんなワクワクした目で対象を見ているのを見るのは久しぶりだ」


 ディアンはそう言われて恥ずかしくなってしまった。だがそうこう話している内に、フィルラウスはもうおおよその構成は決めてしまったようだ。


「先生もお早いですね」

「俺はあんまり時間をかけて絵を描くタイプじゃないからね。さっさと決めて、新鮮なうちに描くのが好きだ」

「確かにそのスタイルも面白そうだ」


 確かに、ディアンが学生の頃、フィルラウスは生徒に締め切りの期間を長く与えなかった。一週間あるかないかくらいで、ディアンのゆっくり描くスタイルとはあまり合わなかった。


 さっさと描き上げようとペンを進めるフィルラウスを横目に、ディアンはようやく構成を決めた。デッサンだから色は関わらないが、純白のシクラメンを真ん中に据えた。


「宮廷画家でも花の絵をいっぱい描いてるのか?」

「そうですね。国王が花の絵をたくさん要求されるので、それにお応えしています」

「そうか。私は宮廷画家では無かったが、城に招集されたとき、人物画を要求された記憶があるんだが……」


 花の絵は政治利用されると、ディアンの父に教わったのだ。だからなんと言えばいいのか、ディアンは思いつかなかった。


「まあお前の得意分野が活きているならそれに越したことはない。楽しくやればいい」

「そうですね」


 ディアンとフィルラウスの間に沈黙が流れた。決してネガティブなものではない。ただ集中が行きすぎているだけだ。その静寂をフィルラウスはなんとか埋めた。


「そういえば今日、ディアンは何しに来たんだ?単なる挨拶でここには来ないだろう?」

「ああ、それは……」


 もう話さざるを得ない。ディアンは今困っていることを洗いざらい話した。次の延長にサインするかどうか。そしてアーネをどうしたら救えるのか。そう言うと、フィルラウスは呆れたように話し始めた。


「お前は本当に、人が良いな。そんなやつこの国じゃレアだよ」


          ♢♢♢♢


 フィルラウスはとにかく芸術にまっすぐだった。誰にどう見られようと関係ない。ただ自分の好きなこと、美しいもの、格好いいものを追求することが芸術だと考えていた。


 多くの芸術家と城に呼ばれた時に、彼は国王から聞いた。


「君たちには国民に絵画の普及のために尽力していただきたい。君たちの絵には人を震わすような力がある」


 若かりし頃のフィルラウスは、その「力」を信じて創作に励んでいた。

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