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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
彼岸花編
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7.彼岸花(5)

 彼岸花の咲く川のそばの草むらに座って、キャンバスを組んだ足の上に置く。


 ディアンが持っている中で1番細い筆を用いた。一本一本、細いが堂々と開いているのがわかる。水に筆を浸して、黙々と作業を始めた。


(どうして東洋の花がここにあるんだろうか?)


 ずっとディアンはそのことについて考えていた。東洋にもこんな風に絵を描いている人はいるんだろうか、どうしてこの川のほとりに咲いているんだろうか。


「あっ」


 ディアンは思わず声に出た。いるじゃないか。東洋に行った人物が。


 急いで城に戻って、その人物のもとに向かった。


「デビン王子。ちょっとお時間ありますか」

「どうした?」


 ディアンはそのままデビンを彼岸花のところに連れて行った。


「陛下、東洋からこちらのお花の種をお持ち帰りになられたのでは?」


 デビンは開いた口が塞がらなかった。そこまで驚くことがあるのかと思ったがその後の言動を見守ることにした。


「ああ。確かにそうだ。東洋の国からこの花の種と桜の木を持って帰ってきた」

「やっぱり」

「だが桜の木を植えた後、彼岸花だけは行方不明になってたんだ。使用人を何人か出して、私も探し回ったけど見つからなかった」


 この花にそこまでの物語があるとはディアンは思いもしなかった。


「それで、今見つかったと」

「そうだ。8つもらってきたから、ちょうど8輪咲いているだろう?確かにここに植えられたんだ」


 デビンはゆっくりとそばに腰掛けて、声をかけた。


「良かった。綺麗に咲いてくれて」


 ゆっくりと彼岸花に触れた。その様子をディアンは静かに見ていた。


 何分かふけった後、デビンは言った。


「仕事中だろう?悪かったな」

「いえいえ、構いませんよ。あと、一つ聞いておきたいのですが」

「何だ」

「国王陛下に、『遠出するな』と言われたのですが」

「そりゃあそうだろう。付き添いの使用人がいないんだから仕方ない」


 ディアンは去ろうとするデビンを引き留めた。


「それって、アーネさんを僕の元に引き戻さないってことですか?」


 デビンはすぐには口を開いてくれなかった。少しの沈黙を置いたあと、言葉を放った。


「分からない。父上が何を考えているのか、まだ知らないし、分からない」

「そんな……」

「だから、機会が来るまで待て。そう急いでもお前の求める結果にはならないかもしれない」


 デビンはそう言い残して、城へと帰っていった。ディアンは再び筆を取って、ゆっくりとキャンバスの上を滑らせ始めた。


 デビンは城に戻ると、国王の執務室に直行した。


「父上。彼岸花は綺麗に咲いておりました」

「何の話だ?」

「私の東洋からの土産物を、あなたはディアンを遠出させないための手段として、利用したのでは?」


 ボルナト国王は言葉を返そうとしなかった。そんな父親に呆れて、デビンは言った。

 

「いつまでペルカに縋りますか?」

「黙れ」

「強いパウロを作ると言ったのはあなた自身ですよね?あなたの責任を、弱い使用人1人に押し付ける愚行をいつまでなされるおつもりで?」


 デビンは怒涛の勢いで国王に詰め寄った。ただ国王はこう吐き捨てただけだった。


「さっさと部屋から出て行け」

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