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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
紫陽花編
5/10

1.紫陽花(5)

          ♢♢♢♢


 初めて芸術学校で作った作品は、薔薇のデッサンだった。


「今回の薔薇の作品で金賞をとったのは、ディアン・ストローサーだ」


 芸術学校では、完成した作品が画家の教員の目によって評価され、毎回、金・銀・銅の3つの賞の受賞者が発表される。


「すげえな、ディアン。マジで尊敬するよ」

「いやあ、それほどでもないよ。ラッセルも上手だったよ」


 けれども、ディアンの受賞はこれ以来無かった。

 

 ラッセルは金賞7回、銀賞5回、銅賞12回で、次席で卒業した。ディアンは下から3番目の成績で卒業した。


「ラッセル、また賞を貰ったんだね」

「うん、まあフィルラウス先生からすごく褒められたからね。また金賞を獲れるように頑張るよ」


 ディアンは下を向きたい気持ちを抑え、自身の作品を作っていった。


         ♢♢♢♢


 下塗りした絵もおおよそ乾き、ディアンはいよいよ本塗りに入ろうとした。

 

(これが終われば完成も見えてくるかな)


 あんまりダラダラやっていると紫陽花は枯れてしまう。ディアンはキャンバスを紫陽花の前に立てて、パレットを準備した。

(影を意識して、濃淡をつける……)


 紫陽花の青い部分、紫、桃など、様々な色を組み合わせて、微妙な色の変化を作り出した。この技術は芸術学校の下から3番目とはいえ、一般人には出来ない流石の技術である。


「お疲れ様です、ディアン様」

 

アーネがお昼にサンドウィッチを持ってきた。

 

「あっ、ありがとうございます。ちょうどお腹が空いていたんですよ」

「絵もかなり出来上がってきましたね」

「いえ、まだまだです。もっと立体感を出さないといけません」

「国王を満足させるのは、大変ですからね。では、頑張ってください」


 ディアンはお昼を食べると、すぐに再開した。黒の絵の具で立体感をつけて、紫陽花を本物に近づけていく。

ディアンはこれまた無口で日が暮れるまで作業をしていた。


 日が沈んで、夜になるとディアンは立ち上がって、城の中にいるアーネを呼んだ。


「片付けをお願いしてもよろしいですか?」

「構いませんよ。本日はおしまいですか?」

「そうですね、しばらく続きますが」


 絵の具がすぐには乾かないので、重ね塗りなどがしやすいのが油絵の特徴だ。ディアンはニ週間ほどかけて、紫陽花を完成させるつもりでいる。しかし、アーネはそれに難色を示した。


「しかし、少し急いだ方がいいかもしれません」

「どうしてです?」

「先ほど庭師に聞いたのですが、そろそろ庭の花を入れ替えるそうです。夏の花とかに」

「そうですか、じゃあ早めに仕上げますね」


 庭師も庭師で忙しい。そんな人に「ちょっと待ってください」とは言えない。


「そうですか。では少し急ぎで仕上げますね」

「急ぐのは構いませんが、良い作品を作ってくださいね」

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