6.向日葵(6)
「いい機会だ。詳しいことを全部話してやろう」
そう言って、カイルは水を一杯飲んだ。
♢♢♢♢
カイルが宮廷に入った頃、ボルナト国王が即位して、国は大いに揺れていた。『芸術の国』として国を育てていく使命は、息子に受け継がれた。
「君が『芸術の国』の初代画家だ。よろしく頼むよ」
しかし、初めの挨拶でそう言ったきり、なかなか目にかけてくれなかった。どうしてだろうかと、執務室に向かってみると、大勢の有名画家が出てきた。
「フィルラウス、アンドレア、シュチュアース……どうしてこんなにも……?」
すると、その瞬間執務室から王が手招きした。
「君も絵を描いてくれ、薔薇の絵を頼むよ」
「了解致しました」
何週間かすると、その大勢の有名画家が作品をいくつも発表した。どれも人物画で美術館に出展されるとすぐに売れてしまった。彼らは絶えず作品を発表し続け、国中で人物画が莫大なヒットを生み出した。
その流れの中でカイルも国王に絵を提出した。
「薔薇の絵が完成いたしました」
「ありがとう。次はコスモスも頼む。たくさんの花の絵を作ってこの部屋を花畑にして欲しい」
「それは面白い。分かりました。頑張ります」
カイルはネタを引っ張ってきては、いくつも描いた。この間で彼の技術は大きく向上した。
しかし、作っても作っても執務室は花畑にならなかった。カイルは理由を考えたが、作品数が足りないだけだと割り切っていた。
ある日、国の外交としてペルカの王が城に入った。最後にボルナト国王がペルカの王に土産を渡した。
「これは国家の友好の象徴となる絵です。ぜひ受け取って欲しい」
「ありがとう。私の部屋に飾っておくよ。ペルカではみんなが花の絵を好むからね」
カイルは目を見開いていた。衝撃だった。絵を覆っている布をめくると、彼が描いていた薔薇の絵だったのだ。
(まさか……僕の絵が切り札になっているなんて……)
外交においてさまざまなカイルの絵が他の国の王やペルカの有力者の元に手渡された。コスモスの絵はペルカの皇太子へ。紫陽花の絵はペルカの貴族へ。
♢♢♢♢
「芸術が政治に使われるのを、私は嫌った。だからお前には人物画を教えたんだ」
「売れるためじゃ無くて……」
「芸術を守るためだ」
ディアンの目から涙が溢れた。父は芸術に厳しかった。花の絵を最後は描かせてくれず、嫌に思ったこともあった。
「ごめんなさい。まだ人物画は描けなくて」
「いいんだよ。今となっては子供の頃に芸術性を否定しすぎた。私もすまない」
ローストビーフは一際美味しく感じた。
城では、アーネが部屋にこもっていた。紙とペンを持って、文字を書いていた。
「パウロの永遠の発展と……」
するとドアがノックされて、扉が開いた。ボルナト国王だ。
「陛下、どうなさいましたか?」
「進捗を確認しにきただけだ。だが、まさか本当にお前だとはな」
「……」
アーネは黙っていた。ボルナトはペルカのとの親睦、いや服従のために動いていた。




