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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
向日葵編
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6.向日葵(5)

「久しぶりにお前と創作ができて楽しかったよ。これがしばらく続くから本当に嬉しい」

「ありがとう。すごく助かるよ」


 ディアンと父親は画材を片付けながら作業を振り返っていた。


「ディアンはこれまで何枚花の絵を描いてきたんだ?」

「ここじゃあもう数えきれないよ」

「一番の傑作は何だ?」

「どれだろうね。ペルカの王に渡したラベンダーも結構よく描けた気がする」


 ディアンは何も考えずにその答えを言った。すると、カイルは珍しく難しい顔をした。


「グランドゥラスに花の絵をやったのか?」

「そうだけど……」

「分かった」


 ディアンは結局何が言いたいのかを理解できなかった。


 翌日も、翌々日も、その先の日も、2人は毎日民衆の丘に出て、向日葵を描いていた。


 ある日、絵を描いていると、城の中から音楽隊の練習が聞こえてきた。マルクの音楽隊も夏聖祭に向けて練習をしている。


「そういえば、マルクはまだ元気にやっとるか?」

「やってるよ」

「そうかそうか。あいつには仕えてるときには世話になった。性格は良くないけど、情熱だけは人一倍あったからな」

「あれ?あの人とあんまり仲良くないんじゃないの?」


 ディアンはマルクと会った時は父親ディスりを毎回聞かされている。それだけ彼はカイルのことが嫌いなのだと思っていた。


「そんなわけない。あいつは私が早くクビになったことを悔やんでくれた。いつも喋っていたしね」

「そうなんだ」

「ちょっとだけ芸術の方向性が違ったりして、揉めたりしたけどね」


 笑いながら答えるので、それならまた今度マルクのところに連れて行ってあげようと、ディアンは思った。


 ディアンは作業を続けた。向日葵の畑は奥行きを持たせて描いている。すると、父親が口を挟んだ。


「そこはもっと色を薄くして描いたほうが綺麗だ」

「本当だ」

「大きな作品は時間が経つほど雑になって、初めは気にしていたことも、後になって気にならなくなる」

「それ小さい頃に教えてくれたやつだ」

「そうだっけな」


 カイルは黄色の絵の具に刷毛をつけて言った。


「今日の夜は街に降りてご飯にしようか」


 その夜、ディアンとカイルは並んで民衆の丘を降りた。城の下には評判の高い料理店がたくさん並んでいて賑わっている。そのうちの一軒である、ローストビーフの店に入った。


「お父さんと2人で食事なんて何年ぶりだろうね」

「学校に入る前に一回行ったきりかもな」


 ローストビーフは近隣の国から入ってきて、パウロでも人気が出ている。


「城ではローストビーフなんて出ないだろ?」

「出ないね。パウロの料理がほとんど」

「私の時もそうだった」


 カイルは肉をナイフで切りながら言った。ディアンにとっては突然のことだった。


「どうして、この国では人物画ばかり流行っていると思う?」

「えっ……昔の戦争に勝ったからじゃないの?」


 カイルはローストビーフの一片を頬張りながら、静かに言った。


「そうだと言えるし、そうでないとも言える」

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