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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
紫陽花編
4/10

1.紫陽花(4)


         ♢♢♢♢


 ディアンの父親、カイル・ストローサーも画家として世に名を馳せていた。

 

「もっと、対象物を深く捉えるんだ」

「父さん、どういうこと?」

「花の咲くまでの過程を考えろ、種から頑張って葉を出し、背を伸ばし、やったの思いで咲かせた花だ」

「花は頑張ってきたんだ。僕が美しく描いてあげるからね」

「そうだ」

 

 父はディアンが花ばかり描くことには大して何も思っていなかった。むしろいいと思っていたし、表現する作品が全てだと考えていた。


 宮廷画家をクビになるまでは。


「人の良さが全く現れていないぞ、ディアン。もっとゆっくりと捉えなさい」

「父さん、もう僕は人は描けないって分かってるんだ。好きな絵を描かせてください」

「だめだ、人の絵を極めなさい」


 父は3ヶ月で宮廷画家をクビになった。その日から、息子を宮廷画家に育て上げようと、貴族にウケやすい人の絵をたくさん描かせようとした。ディアンはそれが苦痛でたまらなく、ほとんど技術は向上しなかった。


「僕は、僕が描きたい絵を描いて生きたいんだ」

「ディアン、それでは君は食べていけない。君の将来を思って、人物画を描かせているんだ」


(父さんは何も考えていないじゃないか。創作は自由だって誰が言ったんだ)


         ♢♢♢♢


 翌日、ディアンは下塗りの作業を始めようとした。

 

「おはようございます、ディアン様。今日はとてもご機嫌がよろしいようで」

「そうですか?顔に出てます?」

「ええ。今日は楽しい作業なのですか?」

「そうなんですよ。下塗りはキャンバスに初めて色が乗るのでとってもワクワクするんですよね」

 

 ディアンは出来るだけ早く作業を始めようと、朝食をすぐに平らげて、庭に出た。

 

(さて、早速始めようか)


 下塗りは絵の着色の方向性が決まる大事な作業だ。以降の重ね塗りなどがしやすくなるので、ディアンは欠かさずに行っている。


(薄めに塗ってあとで調整だな)


 ディアンは絵の具をパレットに出してペインティングオイルで溶いた。

 

(花の色はそれぞれ違うからそこも平均をとってしまおう)

(葉っぱは黄色ぐらいの方が後から整えやすいな)


 ディアンはそこから2時間ほどかけて丁寧に作業を進めていった。その間、ほとんど無口だった。


「アーネさん、そろそろ終わりにします」

「了解致しました。片付けはさせていただきます」

「筆だけはしっかり洗ってください」

「ええ、分かっております」


 アーネは芸術学校の出身ではないので、片付けの方法はディアンが教えた。物覚えのいいアーネはすぐにそれに慣れた。


(それと、絵はアトリエで乾燥させるか)


 下塗りが終わるとディアンは乾燥を待つ間はしばらくお休みだ。


(事務作業とかやってしまうか……)


 ディアンは束の間の休みに入った。

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