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花しか描けない宮廷画家  作者: Kaspar.
向日葵編
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6.向日葵(2)

 ディアンはケレルが部屋から出たあと、恐る恐る部屋に入った。ドアノブに触れる手が震えた。


「失礼致します、城壁画のプランが完成しました。確認していただけますか?」


 少し暗い顔をしていた王は顔をフッとあげて頷いた。向日葵の絵を舐めるようにザッと見回した。


「素晴らしい。よく出来ている」

「このプランで進めさせていただきますね」

「それで頼む。もし人手が必要なら自分で呼んでもらっても構わないし、私に言ってくれても構わない。頑張って当日までに間に合わせてくれ」

「分かりました」


 部屋から出るとアーネが後ろに控えていた。あまりこの場所で会うことが無いので、ディアンは不思議そうな顔をして聞いた。


「僕に用ですか?」

「いえ、陛下に用があって」


 アーネは4回ノックして扉を開いた。扉が閉まる音がやけに重々しく聞こえた。


 嫌な予感はしていたが、外の空気を吸おうと外に出た。


 ディアンは城壁を見てイメージをしていく。全長は5キロほどあるが、『民衆の丘』と呼ばれる街と城が1番近くなる場所に絵を描くことになっている。『民衆の丘』を下った広場の中心に聖火台が置かれる。ディアンの目の前には美しい下り坂が見えていた。


「だいたい横300メートルくらいか……1人でするのは難しいな」


 当日までに一ヶ月と少ししか時間がない。ちょっとずつ下書きと色塗りを済ませていっても1人では終わらないだろう。


 ディアンはアトリエに戻って筆やチョークの数を数えていく。黒チョークで下書きをして、消えないうちに色を塗ってと、細かいステップを踏んで作ろう。


 ディアンは呼べそうな人を思い浮かべたが、明らかに1人しかいないように感じた。あの親友だ。


「ラッセル、ちょっといい?」


 店の前でラッセルを呼ぶ。彼も店を2日に一回しか開けなくなった。


「どうかしたの?何か用?」

「ちょっと夏聖祭の手伝いをして欲しくて」


 するとディアンの予想に反してラッセルは顔をしかめる。


「嫌?」

「嫌じゃないよ。ただまた作品の制作を再開してるから中々時間が取れないかも」

「そっか、そうだよね。じゃあ頑張って」

「ありがとう」


 ラッセルは再び画家になることを決めた。その挑戦を妨げてはいけないとディアンは思った。


(どうしようか。確実に呼べる人がいなくなった)


 そう悩みながら城に帰ると、玄関でデビンが仁王立ちしていた。ディアンは焦った。完全に行くのを忘れていた。しかし皇太子は何も言わずに手招きした。


「どうかなさいましたか?」

「とりあえず、部屋で」


 2人は足早に廊下を抜けてデビンの部屋に向かう。表情は真剣だ。


 部屋に入るとソファにデビンは座り、ディアンは木の椅子に座った。おもむろにデビンが口を開いた。


「ペルカが、アーネを本格的に動かし始めた」

「どういうことですか?」

「聖火をアーネが点けることになった」


 ディアンはまだ事の重大さを理解していないようだった。そこで皇太子は付け加えた。


「アーネが国のトップに上るということだ」

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