3.柊(1)
「やっぱり今回の外交は難しいものだったと思いますねー」
ディアンにそう話すのは、この城の庭師であるフラウ・アンフォニーだ。時々庭でディアンと話し込んで、政治に疎いディアンに政治を教えている。
「フラウさん、僕気になったんですけど……」
「何だい?」
「ジャバリ様が帰国される時に、『会談で話したことは……』とかなんとか言ってましたけど、あれは何だろうなと思って」
フラウは庭の木を剪定しながら話す。
「うーん、それはあんまり分からないね。僕らみたいな身分の人が知るようなことではないし、僕もいい家の生まれではないから、そんなコネとかも無いからね」
「じゃあ分からないか……」
「でも、政策に反映された時には分かると思うから、あんまり考えすぎなくてもいいと思うよ」
「そうですよね……」
「そんなに気になる理由でもあるのかい?」
「初めて自分が政治に関わった瞬間でもあったので、なんとなく衝撃的な体験だったので……」
「なるほどね」
ディアンはあの会談からしばらくは仕事が少なく、冬が始まろうとしているので、ディアンもますます暇になるばかりである。しかし、その時フラウが言った。
「あれ?なんか馬車の集団がこっちに来てるんだけど」
「何か今日はあるのですか?」
「何にもないと思うんだけどなー」
ディアンとフラウは城の庭でその馬車の集団を待っていた。しばらくすると、王宮の門が開いた。フラウは驚きの表情だった。
「デビン・ストラウス王子……お戻りになられましたか!」
フラウは急いで城の中に駆け込み、衛兵や使用人に王子が戻ってこられたことを伝えて回った。
「おおよそ一年ぶりといったところか……変わらないな……」
その後の城内はお祭り騒ぎだった。しかし、ディアンだけはその喜びについていくことが出来なかった。
「アーネさん。この騒ぎは一体なんでしょうか?」
「あぁ、ディアン様はご存じなかったですか。ボルナト国王の息子であるデビン王子が、東洋への船旅からお戻りになられたのですよ」
ディアンが城に入ってすぐにデビンは東洋へと出ていったので、ディアンは彼の存在などは知らなかった。
「ボルナト国王の息子ということは、皇太子ということですよね」
「そうです」
しかしながら、デビン王子はかなりお疲れのご様子で、帰国による催しも延期になってしまった。彼は帰ってきてそのまま、いつも使っていたベッドで眠ってしまった。
「デビン、大丈夫か」
父が扉越しに息子に声をかけている。
「ええ……大丈夫です、お父様」
「今はしっかりと休みなさい。公務の方は君が行っていた間のように、私たちがやっておくから」
「ありがとうございます」
「ところで、その部屋は少し殺風景ではないか?」
「……どういうことですか?」
「殺風景なら、それを飾るのに素晴らしい人物がいるんだ」




