2.ラベンダー(7)
それから数日後、ディアンはアトリエに王をお招きし、完成した作品を見せようとした。
「申し訳ございません、このような汚い部屋で」
「構わないよ、君の努力が感じられるからね」
王は笑っていたが、本当に笑えないほど散らかった部屋だ。ディアンは王をその部屋に入れた。
「こちらが、今回完成させたペルカの王にお渡しする作品。『ラベンダー畑』でございます」
「これは素晴らしい!思っていた以上のものだ」
国王はディアンをいつも以上に褒め、頭を撫でた。
ディアンの描く風景画にしては上出来だ。一面に広がっている色鮮やかなラベンダーの周りに、ペルカとの国境に当たるような北側の山脈が大きく描かれている。
そして何よりも特別なのは、真っ直ぐに太陽の白い光がラベンダー畑にさしている様子だ。これで、ラベンダーの色がより鮮やかに映えている。
「これは、君にしか描けない様子だな。ここにいた人しか見ることの出来ない、貴重な瞬間を絵にしてくれて、本当にありがとう。さすが私の宮廷画家だ」
「そう言っていただけて、本当に光栄です」
ディアンは心底安堵していた。正直、太陽が描かれるまではどこにでもある普通の絵だったので、太陽一つで、ここまで美しいものになったのは、ディアンも予想外のことだ。
「この額縁も本当に素晴らしい。これは誰が作ったのかな?」
「私の友人です。額縁を作るのが趣味みたいで、今回は制作を依頼しました」
「今度から私の部屋の絵は彼の額縁に飾ってくれ」
「もちろん、承知いたしました」
ここでラッセルの仕事もひとつ増え、店も繁盛するだろうとディアンは思った。
「それでは、この絵を当日、お渡しします」
「よろしく頼むよ」
ディアンは絵を片付け、退出の準備をした。
「そうだ、ディアン君」
「どうかいたしましたか?」
「君も晩餐会に参加しないか?ちょうど席が一つ余っていて、誰を座らせようか考えていたんだ」
「えっ……だめですよ、こんな私が行く場所ではありません」
ディアンの衝撃が大きいのも当然だ。会談での晩餐会は、各国の王宮の要人が集まる空間だ。芸術家は普通なら入ることは出来ない。
「いや、君が参加しなさい。良い経験になると思う」
「では……よろしくお願いします」
それから数週間後。城の門に大きな馬の軍隊がやってきた。その中には、ペルカの王を乗せた馬車もある。ディアンはその様子を自身の部屋の窓から眺めていた。
(ついに、始まる……)
その王は馬車を降りて、パウロの王の前に立った。
「ボナルト・ストラウス国王陛下、久しぶりでございます。お招きいただき、ありがとうございます」
ボナルトは笑顔で会釈した。
黒い服に身を包んだ大柄の男。ジャバリ・グランドゥラス三世の入城だ。




